オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『007 死ぬのは奴らだ』

Live And Let Die, 121min

監督:ガイ・ハミルトン 出演:ロジャー・ムーアジェーン・シーモア

★★★

概要

ヴードゥー教とケシ畑と占い師。

短評

三代目ボンドのロジャー・ムーアに代替わりしたシリーズ八作目。歴代最多となる七作品に出演する程の人気を獲得したムーアボンドではあるものの、老けて見えるショーン・コネリーよりも実は年上だったりするのでアクションはイマイチである。そのため、三十郎氏はムーアボンドのコミカル路線に対して「なんだか変な方向に行ってしまった」という苦手意識を長年抱えていた。しかし、本作が割と“まとも寄り”ということもあり、配信時代に気楽に眺める映画としては悪くないかもと思えるようになってきた気はする。

あらすじ

三人の諜報員が立て続けに殺害され、ジェームズ・ボンドロジャー・ムーア)が捜査を命じられる。ニューヨークに到着したボンドは早速命を狙われるものの、そこから手掛かりを得て、ハーレムを仕切るギャングMr.ビッグとサン・モニークの大統領カナンガが通じていることを突き止める。サン・モニークへと向かったボンドは、カナンガ専属の占い師ソリテア(ジェーン・シーモア)と知り合う。

感想

本作にはスペクターが登場せず、話の規模が丁度いい具合に収まった感がある。ヴードゥー教の儀式を隠れ蓑に利用してケシを栽培しているカナンガがギャングと通じていて……という展開は、007が担当する事件としては少しショボくはあるものの、ヴードゥー教が良い意味で“引き”の要素として機能しており、話としても上手くまとまっていたように思う。「今だけ無料」には気をつけよう。

ボンドにソリテアを寝取られてしまった感のあるカナンガ。「いずれは俺が愛を与えてやったのに……」と悔しがっていたが、そんな汚いもん要らんわい。Mr.ビッグの正体が彼であると明かされる時の特殊メイクが見事なのだが、『ミッション・インポッシブル』でお馴染みのあのマスクの初出はどの作品なのだろう。カナンガのキャラクター自体はそこまででもないが、“風船死”する死に様だけはシリーズ屈指だと思う。血肉が飛び散らないのはレーティングの関係か。

前作に引き続き、コミカル路線のキャラクター映画化の影響なのか“敵の手下”のキャラが濃くなっているように思う。鋼鉄の義手を持つティー・ヒー、ホワイト・フェイスのサメディ男爵。いずれもボスのカナンガよりも遥かに強いインパクトの持ち主だった。(偽)サメディが頭を撃ち抜かれた時に眼球が動く芸の細かさがよかった。

敵の他にも強烈なインパクトを残す男がもう一人。次回作にも登場する“準レギュラー”ペッパー保安官である。今なら差別的な白人保安官として悪役扱いされそうなところではあるものの、「ソ連の黒人が暴走してる!」には笑わずにいられない。ボートチェイスが本作の大きな見どころの一つであるはずが、ペッパー保安官ばかりが気になって仕方なかった。

本作のボンドガールは、“登場シーンのお相手”ミス・カルゾー(マリデン・スミス)、ポンコツ刺客のロージー(グロリア・ヘンドリー)、タロットカードに予言された通りにボンドと恋に落ちるソリテアの三人。ボンドはロージーが刺客だと見抜いた上で交わり、その後で証言を強要する。これに対してロージーが「ヤッた女は殺せないでしょ」と命乞いするも、「ヤッたからもう未練はない」と酷いことを言うボンドだった。なお、彼女は“カカシ”に殺されるのだが、あの技術を利用すればボンドも簡単に殺せたと思う。ソリテアも死なずに済んだということは一時的な相手でしかないため、無責任にカナンガの元から連れ出した感がある。

ボンドのファッションに多いな変化が。その次代の流行だったのか、コネリー時代とは打って変わってレジメンタルや柄物の幅太タイを着用していた。レジメンタルとPコートの組み合わせは海軍設定があるはずなのでよいとしても、柄物は現代の感覚からすると……という印象である。プライベートとデジタルの腕時計を使っていたり、エスプレッソマシンを所有しているといった描写が見られるのは楽しかった。

なお、本作にはサメもワニも登場する。なんて贅沢な!