オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ゾンビプーラ』

Zombiepura, 82min

監督:ジェイセン・タン 出演:アラリック、ベンジャミン・ヘン

★★

概要

予備役vsゾンビ。

短評

シンガポール製ゾンビ映画。「プーラ」というのはサンスクリット語で「町」の意味であり、「シンガポール」の国名も「シンハ(ライオン)」と「プーラ」の組み合わせに由来するのだとか。本作はジャンル的にはゾンビコメディになるのだが、狙った“笑えるグダグダ”というよりも普通にグダグダしている印象の方が強く、残念ながら退屈だった。チー牛みたいなやる気のない主人公は嫌いではなかったが、そのキャラクターを活かし切ることも、ギャップを利用したグロ描写があるわけでもなく、中途半端な一作に終わっていた印象である。

あらすじ

やる気皆無の怠惰な予備役カユ。彼が病欠の栄光を勝ち取るべく仲間のターザンと共に医務室を訪れていると、急患が運ばれてくる。その場にいた衛生兵が心肺蘇生を試みるが、暴れ出した急患に噛みつかれてしまう。ゾンビウイルスは瞬く間に基地内に広がり、カユは鬼軍曹リーと食堂のエロ熟女の娘シャオリンジョイ・ピン・ライ)と行動を共にするのだが……。

感想

国旗掲揚中にスマホゲームに勤しむカユ。大学時代の友人に似ている気がするチー牛的外見にも、「こんな小さな国、核が飛んできたら一発で終わりでしょ」と言い放つ諦念にも親近感が湧くキャラクターである。そんなダメダメな彼が頑張る展開にはシンガポールの国内事情が反映されているらしいのだが、映画的には非常に“普通”である。ゾンビ出現前のカユのサボり方は楽しかったのだが、出現後はその頼りなさを上手く笑いに繋げられていなかったように思う。

懸垂が一度もできないような予備役なので、当然に役に立たないカユ。そんなカユを「罰を与えるぞ!」と叱責するものの、実は自分も頼りないリー軍曹。この辺りの描写は、シンガポール的には“笑えないけど笑える”といったところだろうか。そんな阿呆二人に代わってシャオリンが活躍する展開にしてもよかったとは思うのだが、頼りない彼らが危機に立ち向かうことこそが映画の核らしく、控えめな活躍に終わっていた。シャオリンは可愛かったが、キャラクターの魅力が掘り下げられていないのでそこまでは萌えられなかった。

ゾンビのメイクや動きは上出来だったものの、シンガポール表現規制が厳しいらしく、グロ描写については完全に期待ハズレ。その代わりに“マッスルメモリー”というゾンビ化以前の行動を覚えているという設定で笑わせにきている。これは悪くなかったのだが、全体の印象と同じくコメディとしてもう一つ振り切れていなかったように思う。色々と惜しい。

本作には非常に重要なアイテムが登場する。エピローグで立派な兵士となった(?)カユたちがゾンビに立ち向かっていくのだが、対処法が確立されたはずなのに襲われるのは矛盾している。

三十郎氏はイマイチなゾンビ映画だと感じたものの、本作はシンガポール初のゾンビ映画ということで、その制作には様々な困難があったらしい(詳しくは下記リンク先インタビュー記事にて)。そうした苦労や物語の背景を知ると「つまらなかった」の一言で切り捨ててしまうのは大変に心苦しくなるのだが、予備知識なしの鑑賞中に退屈した事実は変わらない。是非今回の経験を活かして、より面白いゾンビ映画の制作に挑んでいただきたいものである。シンガポールの国内市場は小さいようだが、ゾンビ映画のファンは世界中にいる。