オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『007 ゴールドフィンガー』

Goldfinger, 110min

監督:ガイ・ハミルトン 出演:ショーン・コネリー、オナー・ブラックマン

他:アカデミー賞音響効果賞(ノーマン・ワンストール)

★★★

概要

全身金粉殺害事件。

短評

シリーズ三作目。本作で初めてボンドカーが登場する。また、オッドジョブという存在感抜群のヴィランも揃い、シリーズの“お約束”的なものが三作目にして完成した印象である。本作にはスペクターが登場しないものの、一見小物っぽいゴールドフィンガーがリアルなのか荒唐無稽なのかよく分からない壮大な計画を繰り広げ、意図された笑いどころツッコミどころを適度に交えたストーリーが楽しかった。コネリー個人のスタントは相変わらずだが、“アクションシーン”も徐々に予算と迫力が増してきているように思う。

あらすじ

革命家の資金源となっている工場を爆破し、マイアミで休暇中のボンド(ショーン・コネリー)にゴールドフィンガー監視の指令が下る。ボンドは早速ゴールドフィンガーの補佐役ジルを寝取って彼のいかさまカード詐欺を妨害するものの、ジルが全身金粉まみれの死体となって発見される。なおもゴールドフィンガーを追うボンドは、彼が“グランドスラム計画”なるフォート・ノックス襲撃計画を企てていることを知るのだった。

感想

グランドスラム計画の内容とは、フォート・ノックスに貯蔵されている金塊を盗み出すことではなく、“放射能汚染”して金価格を上昇させること。「除染できないのか」とか「現物に触れられずとも総量が変わらなければ権利の取引は問題なくできるのではないか」と気になる部分はあるが、いかにもな“悪の組織”スペクターとは異なり、“経済犯”の一種というのが妙にリアルな気がしなくもない。「我々が世界制服するのだ!」よりは強引にでも納得させられる。

そんな綿密な計画を立てたゴールドフィンガーだが、彼は明らかに詰めが甘い。「どうぞ妨害してください」と言わんばかりに何故かボンドを現場に連れていき、何の役にも立たないのに自分も現場に出向いて軍人コスプレを披露する。彼の出資者へのプレゼンの豪華さがアメリカらしいのだが、その後で殺すのなら意味がない。金価格の上昇を狙っているのに後の作品に先行して“黄金銃”を作って無駄遣いしたりしていて、ちょっとよく分からない人である。ただし、凶悪な犯罪者なのかただの黄金好きなおっさんなのか分からないところが憎めなくもあった。

ゴールドフィンガーの杜撰さの他に、Mやフィリックスがボンドの現況を知らずして「うん、順調そうだな」と“スルー”するコミカルな描写が見られる。しかし、それら以上に笑えるのは、プッシー隊が空中からガスを散布するや否やバタバタと倒れていく人々の様子だろう。まるで吉本新喜劇のようなわざとらしさである。

ゴールドフィンガーの凡庸さを穴埋めするかのように抜群の存在感を放つオッドジョブ。シリーズ屈指の悪役だろう。打撃攻撃無効の逞しすぎる肉体、ツバに刃を仕込んだシルクハットという印象的すぎる武器、そして無言の笑顔の不気味さ。どれを取っても一級品である。恐怖のシルクハット投げだが、ボンドと本人が割と軽々かわしてしまうため、やられてしまった人が間抜けに見えた。

本作のボンドガールは、水着姿でマッサージしているだけのちょい役ディンク(マーガレット・ノーラン)、ボンドが寝取って金粉殺しの被害に遭うジル(シャーリー・イートン)、彼女の妹で狙撃が下手なティリー(タニア・マレット)、そして敵側から寝返る初のキャラらしいプッシー・ガロア(オナー・ブラックマン)の四人。全身金粉についてはボンドが「皮膚呼吸できなくて死んだ」と発言しているが、実際にはそうならないことは割とよく知られている。そうでなければ、どこに需要があって制作されているのか分からない日本のAVの撮影現場で事故が多発しているはずである。

初登場となったボンドカー。「ボンドカー」と言えばの「アストンマーティンDB5」である。歴代ボンドカーの中でも、あるいは全ての車の中でも最も格好いいと思うのだが、格好いいからボンドカーに選ばれたのか。それともボンドカーとして有名になったから格好いいと条件づけされたのか。

本作のボンドはスリーピースのカッチリしたスーツを着ている場面が多いのだが、ニットタイがハズシの要素となっていた。冒頭のシーンでは彼の女好きが災いして刺客の襲撃を受けている。あのダンサーの方がディンクよりは目立っていた思うのだが、ボンドガール扱いはされないのだろうか。