オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『007 ドクター・ノオ』

Dr. No, 109min

監督:テレンス・ヤング 出演:ショーン・コネリーウルスラ・アンドレス

★★★

概要

連絡の途絶えたジャマイカ支部の調査。

短評

記念すべきシリーズ一作目。日本での劇場公開時のタイトルは『007は殺しの番号』である。コロナ禍に振り回される映画界の象徴的存在となってしまった最新作『ノー・タイム・トゥ・ダイ』が遂に公開される(はず)なので、折角だし全作マラソンして気分を盛り上げようと思う。現代の作品と比較すれば非常に“牧歌的”な雰囲気であり、ボンドというキャラクターやショーン・コネリーの格好よさでもっている印象が強い。もっとも、シリーズの歴史を通じて見ればシリアス路線で人気となった方が珍しいのだから、この“楽しいスパイ映画”こそが007なのである。

あらすじ

MI6ジャマイカ支部との連絡が途絶え、“007”ことジェームズ・ボンドショーン・コネリー)に捜査が命じられる。早速現地へと飛んだボンドには偽送迎運転手やセクシー美女の誘惑といった罠が襲いかかるものの、彼はドラゴンがいると噂されるクラブ・キーという島に何かがあると突き止める。

感想

ボンドが「ボンド、ジェームズ・ボンド」と名乗るシリーズを象徴する登場シーン。大半の男たちはこの自己紹介の時点でハートを鷲掴みにされ、自分の名前で同じように試してみても悲しいかなリズムがイマイチだと知った経験を持つことだろう。ボンドのタキシードがショールカラーなのはアメリカのブランドであるトム・フォードを採用してからなのかと思っていたのだが、この一発目からそうだった。ステアではなくシェイクのウォッカマティーニを好むことからも分かるように、イメージされるような“男らしさ”一辺倒ではなく“柔らかさ”を併せ持つキャラクターであることが細部からも分かるようになっている。うーん、セクシー。有名なワルサーPPKについても、元々は“婦人用”のベレッタを愛用していたのが、威力重視と不発懸念の二つ理由でMから押し付けられている。

タキシードもスーツもビシッと着こなし、ポールハンガーに帽子を投げるウザいおっさんみたいな遊びに興じても許されてしまうボンド。刺客の襲撃に対しても「スミス&ウェッソンは六発だぞ」と冷静に対処する仕事のできる男である。そんな見た目も中身も最高に格好いいスパイのボンドなのだが、現代の基準だと苦笑いしてしまうような行動も見られて楽しかった。たとえば、ドクター・ノオに捕らえられてしまったボンドが、敵の歓待に気を良くしてあっさりと一服盛られる展開はかなり間抜けである。また、そうとは知らぬフリをして敵側の女に接近し、やることだけやって味方に拘束させる展開は鬼畜の感があった。

本作のボンド・ガールは、白ビキニが眩しいハニー・ライダー(ウルスラ・アンドレス)、上述のヤリ逃げされる女ミス・ターロ(ゼナ・マーシャル)、そしてパンツがギリギリ見えない格好でゴルフを練習する賭博中毒女シルヴィア・トレンチ(ユーニス・ゲイソン)の三人である。中でも正ヒロインでもありシリーズを象徴する存在ともなっているハニーの存在感が際立っているが、彼女を発見した際のボンドのウキウキな表情は必見である。とても親近感が湧く。普通のおっさんかよ。なお、ハニーは「大家にレイプされたから殺してやった。これっていけないことかしら?」と事も無げに発言しており、なかなかのツワモノであった。ドクター・ノオの施設は全体的に荒唐無稽の感が強いが、特に終盤で彼女を拘束している場所の意味のなさが好きである。

悪役ドクター・ノオについてはそれほど印象的ではなく、既にシリーズ化が予定されていたのかは知らないがスペクターの紹介役といった感じがする。「奴は四天王の中でも最弱」のポジションである。それよりもまるでドラゴンには見えないドラゴンこそがインパクト絶大なわけだが、そんな凄いのか凄くないのかよく分からない、いかにもな“悪の組織”にニヤリとさせられた。アクションもモッサリ気味だし、色々とおおらかな時代の一作だった。