オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『EXIT』

엑시트, 103min

監督:イ・サングン 出演:チョ・ジョンソク、イム・ユナ

★★★★

概要

就職から逃げたニートが毒ガスから逃げる話。

短評

韓国製のアクションコメディ。『ザ・ミスト』の“超エンタメ版”みたいな映画である。序盤に主人公が屋上までフリークライミングする場面が面白すぎて、その後は尻すぼみになるのではないかと心配だったが、最後まで緊張感と笑いがバランスよく配置されていて楽しかった。韓国映画は少しでも“大作感”があると120分超えの長尺になりがちであり、そこに少々“こなれていなさ”を感じることも多いのだが、本作は100分強であることも奏功していたように思う。“もの凄く面白いB級映画”であることを弁えている感が非常に良い。ヒロインを演じる少女時代のユナも可愛かった。

あらすじ

公園の鉄棒を独占して体を鍛える迷惑な男ヨンナム。大学時代は山岳部で活躍していたヨンナムだったが、現在は無職としてうだつの上がらない生活を送っていた。古希を迎えたヨンナムの母を祝うために親戚一同が勢揃いしたパーティーの最中、会場の付近で毒ガスを利用したテロ事件が発生。上昇してくる煙を避けるために屋上へ避難しようとするものの、鍵が掛かっていて外に出られない。そこでヨンナムは外側から扉を開けるため、ビルの外壁を登って屋上を目指すのだった。

感想

ヨンナムが屋上を目指す場面は相当に手に汗を握るし、救助のヘリがやって来た時点で一本の映画を観終わった感すらある。しかし、それだけでは短編映画になってしまうため、救助ヘリの“定員オーバー”という定番の展開を採用。ヨンナムと彼の大学の後輩であり元想い人であり祝賀会場の副店長でもあるウィジェ(ユナ)の二人がその場に残り、煙からの決死の逃亡劇が幕を上げる。割と雑な展開ではあるものの、テロの顛末からして“割り切っている感”が強く、アクションと笑いで魅せることに上手く特化していた。

防毒マスクとビニール製の即席装備で祝賀会場を脱出した二人は(やむなく手袋を外した後にダメージを追っている描写に芸の細かさを感じる)、より高い場所を求めてタワークレーンを目指すことに。“焼肉店の換気”といったご当地要素を交えつつ、最終盤はドローンでライブ中継される辺りが韓国映画らしい“詰め込み具合”だった。最もハラハラしたのが最初のフリークライミングであったことは否定できないが、ノンストップの逃走劇に退屈している暇は全くない。ウィジェが身体を持ち上げるシーンの動きに若干の“ワイヤーの存在”を感じなかったわけではないものの、許容範囲内だろう。

本作は間違いなく“手に汗を握る展開”の連続ではあるのだが、それを弛緩させる“笑い”の要素も上手くツボにはまった。主人公が甥っ子に「こんな人知らない」と避けられるようなニートの時点で面白いし、彼がウィジェに「ベンチャー企業で課長やってる」と嘘をついて後から「実は知ってた」と言われるのも最高に滑稽である。「もし助かったら……」と盛大にフラグを立てるかと思いきや、「高層ビルの上層階にある企業に願書を出す」と言い出すのも笑える。そんなダメ男が奮闘するというギャップに燃えるわけだが、自分たちよりも学習塾の子供たちを優先する場面があったりして(矢印に本人たちが加わる意味のなさ!)、余計に応援したくなる。一方のウィジェも負けておらず、しっかりしていそうなのに「うぇーん」と泣き出したり、ロープの重りを増やす場面が可愛くも可笑しかった。

韓国語の「オッパ」は「兄さん」という意味だと思っていたのだが、「先輩」を呼ぶ時にも使うらしい。それも日本語の「先輩」と同じくフェティッシュなニュアンスを持つのだとか。そう言われるとなんだか素敵な響きのような気がしてきた。きっとヒロインが美人だったからに違いない。ラストの「重すぎるから後で返して」なんてベタベタなのに、これが最高に萌えるものだから困ってしまう。不美人には決して許されない台詞である。ちなみに、ヒロインのウィジェも可愛かったが、公園系ニートの叔父を恥じる甥ジホとは対称的に「食って寝てウンコ」の生活を羨ましがる姪ヨンヘ(シン・セフィ)も可愛かった。

EXIT(字幕版)

EXIT(字幕版)

  • チョ・ジョンソク
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