オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『THE GUILTY/ギルティ』

Den skyldige(The Guilty), 88min

監督:グスタフ・モーラー 出演:ヤコブ・セーダーグレン、イェシカ・ディナウエ

★★★

概要

緊急ダイヤルのオペレーターが誘拐の通報を受ける話。

短評

デンマーク製の“電話映画”。はっきり言って、この設定自体は斬新でも何でもないというか、三十郎氏が知っているだけでもハル・ベリー主演『ザ・コール 緊急通報指令室』が全く同じシチュエーションを扱っている。また、状況は違うが過去には『フォーン・ブース』のような作品も多数あり、電話だけでサスペンスが成立することは既知である。ただし、本作は無闇矢鱈と状況を盛り上げるような真似はせず、あくまでリアル路線を貫徹した結果として、改めて“電話”の持つ特性を示してみせた辺りが新鮮だったと言えるだろう。

あらすじ

現場で何かをやらかし、緊急ダイヤルのオペレーターに一時的に左遷されている刑事アスガー。ある日、彼はイーベンという女性からの通報を受けるのだが、どうも様子がおかしい。話をよく聞いてみると、彼女は何者かに誘拐されており、警察に通報していることを犯人に悟られたくないことが判明する。果たして、アスガーは電話だけで彼女を救うことができるのか。

感想

デンマークでは警察に通報した時点で持ち主の情報が相手に伝わるようなシステムになっているらしい。このシステムのおかげでイーベンの身元や住所、家族の情報などが次々と明らかになる。監視社会的な怖さはあるが、緊急時には便利である。分かった情報を元にイーベンの娘マチルデに電話して聞き取りしてみると、誘拐犯がイーベンの元夫であることが判明。ここまではアスガーが特別なことをしているような印象もなく、緊急ダイヤルが(越権行為を含む)どんなプロセスで誘拐事件に関わることが可能なのかを淡々と披露している。また、事件自体についても「ああ、DV夫が暴走する、よくあるやつね」と少し拍子抜けする。

ただし、色々と情報が判明し、イーベンの置かれている状況も見えてはきたものの、事件はなかなか解決する気配を見せない。アスガーと指令室、そして現場の連携が上手くいかず、彼は徐々に苛立ちを募らせていく。翌日に出廷を控えている“事件”によって左遷状態にある“刑事”のアスガーとしては「ちくしょう!俺が一番よく状況を把握してるんだから、俺の言うことを聞きやがれ!」と傲慢にもなるわけだが、彼の視点(あるいは聴点)を通して映画を観ている者もきっとその苛立ちを共有するだろう。

かくして“周囲は無能だけど孤軍奮闘するアスガー”の構図が成立するものの、これが“落とし穴”というのが本作の面白さである。三十郎氏も完全にやられてしまった。緊急ダイヤルのオペレーターは多くの情報を知ることができるが、それは決して全てではない。“分かったつもりが全く分かっていなかった”という思い込みの存在が明らかとなった瞬間には、ただただ唖然とするより他になかった。また、真相の判明後にアスガーが「どうして早く言わなかったんだ」と口にするのだが、それを言い出せない空気を作っていたのが彼自身という皮肉である。しかもその時のアスガーの感情発露に観客はフル共感しているのだから、ものの見事に制作者の術中にハマったことになる。

パッケージでは耳の部分だけを上手く切り取って隠しているが、アスガーの頭部がスカスカだったのが気になった。望まぬ仕事をし、良心の呵責に苦しみ、妻に逃げられ……、ストレスか。