オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』

T-34, 112min

監督:アレクセイ・シドロフ 出演:アレクサンドル・ペトロフ、ヴィンツェンツ・キーファー

★★★★

概要

ロシア戦車vsドイツ戦車。

短評

ロシア製の戦車映画。ロシアの戦争映画で、それもニキータ・ミハルコフ製作と聞くと、やたらと壮大になりそうで身構えてしまうのだが、本作は痛快なアクション映画だった。見どころというか“ほぼ全て”である戦車戦のシーンは迫力満点で「楽しい!」の一言だし、ストーリーも必要最低限の“ちょうどよい”程度のものがキッチリと抑えてある。最近のロシア映画らしく“レベルは高いが実写とは区別のつくCG”に頼っている場面も散見されるが、様々な形で戦車の魅力を描くことに成功していたように思う。

あらすじ

1941年。ネフェドヴォ防衛戦をドイツ軍に破られ、イヴシュキン少尉率いる戦車隊に友軍の撤退援護が託される。彼らは奇襲を成功させてイェーガー大佐率いる敵戦車を次々と撃破するも、辛くも戦いには破れた。それから3年後の1944年。テューリンゲン収容所の捕虜となっていたイヴシュキンは七度の逃亡未遂の末に処刑を待つ身であったが、戦車兵の育成を任されたイェーガーが彼を発見。イェーガーは士官候補生との演習相手にイヴシュキン隊を抜擢。渋々要請を飲んだイヴシュキンだったが、彼はその機に乗じて脱走する計画を立てていた。

感想

映画冒頭、状況も掴めていないまますぐに戦車戦が始まるため、「ん?なんか知らんけど戦ってる」「ストーリーとか無視でとにかく戦車を見せたいだけの映画なのかな?」と戸惑った。敗戦の場面の雰囲気は完全に映画のラストシーンである。サービス精神旺盛なのは結構だが、「これは流石に……」と思わなくもない。そんな不安を感じさせはしたものの、収容所パートに入って話が繋がると冒頭の敗戦の位置付けも分かるようになっているし、また、“本編”が始まる前の「よっしゃ!やってやるぜ!」という男たちの熱いドラマも(テンプレ感は否めないが)格好いい。そして、演習以降の戦車戦が始まってしまえば、後はワクワクの連続である。三十郎氏が観たのは「通常版」という名の“国際短縮版”なのだが、むしろこれくらいでちょうどよかったという印象である。

本作が日本で話題となったのは、IMAXや4DXとの相性の良さ以上に、アニメ『ガルパン』が量産した“にわか戦車通”たるオタクたちが盛り上がったという要因が大きいだろう。三十郎氏も同作を見たことがあるのだが、やはり2Dアニメであるが故の“軽さ”がどうしても気になり、その戦車の挙動には『ワイルド・スピード』的な無茶苦茶感すらあった。

翻って本作は、やはり本物の戦車を使って撮影したことが奏功している。三十郎氏にとって戦車の魅力とは、“デカくてゴツい”ことに他ならない。そして、デカくてゴツいものには相応の“質量”が必要である。すなわち、重さこそが正義なのだ(『パシフィック・リム』の一作目はその点で大成功を収め、二作目は大失敗した)。この重ささえあれば、“ただ旧市街を走っている”だけの場面ですらなんだかシュールで面白いのである(あれはセットなのか。石畳が痛むと思うのだけど)。残念だったのは、その重量をフル活用した“ドイツ車を潰す”シーンがCGだったことだろうか。本物でグチャグチャにしてたら最高だったのに。

戦車戦の演出には「スローモーション」と「CG」が多用されている。従来の戦車映画が、“ドンッ”と撃った次の瞬間には着弾していたのに対し、“その間に何が起きているのか”を見せる面白い演出だったと思う。他にも「俯瞰映像」と「心の声」の組み合わせで状況説明したりしていて、戦争映画にありがちな“自称軍帥様”以外には“実は状況がよく分かっていない”という事態を回避している。そうしたCGによるスタイリッシュな演出もさることながら、最後は“クルクルを回す速さの根性勝負”のような泥臭さがある点も熱い。

見張りをサボって通訳のアーニャ(イリーナ・スタルシェンバウム)と一戦交える少尉。その直後に「ここからの戦いは危険だから君は乗せておけない。歩いて逃げろ」と言い出すのが“賢者モード”の感があった。脱走した少尉たちを追うイェーガーも「一騎打ちやろうぜ!だから五分待って」と言われれば素直に応じていたりして、割とネタ要素も多かった。少尉たちが補給のために立ち寄った町でビールが出てくる辺りも辺りも楽しい。ただし、生野菜丸かじりとの組み合わせはちょっとキツい。