オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『イカリエ-XB1』

Ikarie XB-1, 87min

監督:インドゥジヒ・ポラーク 出演:ズデニェク・シュチェパーネク、フランチシェク・スモリー

★★★

概要

アルファ・ケンタウリ系への生命探査の旅。

短評

1963年のチェコスロヴァキアSF映画。原作はスタニスワフ・レムである。本作が“古典”としてどの程度重要なのかという位置付けは把握できていないものの、リマスターされたという事実が価値を物語っているのだろう。細部を見れば若干のチープさがあることは否定できないが、宇宙船のセットや特撮パートは総じて上出来であり、モノクロの映像が醸し出す雰囲気と合わせて十分な水準に達していたかと思う。

あらすじ

2163年、宇宙船イカリエXB1は生命探査のためにアルファ・ケンタウリ系を目指していた。クルーは各種の娯楽を楽しみ、地球上とあまり変わらぬ生活を送っていたが、船に接近する物体の存在を告げる警報が鳴り響く。正体は難破船であり、立ち入り調査の結果、それが20世紀の地球人のものであることが明らかとなる。

感想

映画の序盤は“紹介パート”といった趣だろうか。イカリエXB1の目的や状況設定を説明しつつ、宇宙船内の生活が描写されていく。宇宙船の中はどんな様子なのか、クルーはどのように生活しているのか、クルーにはどんな人物がいるのか。言ってしまえば何気ない日常描写なのだが、船内ではトレーニングジムや出産が普通に行われており、“宇宙船内で日常生活を送る”という発想が既に存在していたことが分かる。もっとも、これ自体は本作よりも先に存在していた設定なのかもしれないが、セットのクオリティやデザインを楽しみつつ、その後の展開を待つことができる。

話が動き始めるのは難破船が登場してから。難破船に積んであった核兵器が爆発し、「20世紀はクソだ……。アウシュビッツに、ヒロシマに……」というセリフが出てくるため、人類の“進歩”の無条件肯定を批判するような話なのかと思った。実際、難破船の後には謎の放射線を放つダークスターが登場し、更にはその影響で精神に異常をきたす乗組員まで出てきて、「宇宙に飛び出してはみたものの……」という展開が続く。難破船の乗員が全員死亡しているという謎や狂う乗組員といった要素は、後に量産されることとなるSFホラーやSFスリラーの原型を感じさせた。電子音楽との組み合わせも良い。

しかし、本作には「ところが」という結末が待ち受けており、それは苦難を乗り越えた先にある進歩を讃えているかのようだった。そのオチが「実はこうだったのです!」と放り投げで終わっている辺りには不満がないでもないのだが、“人類の方が見つけられる”というファーストコンタクトの在り方を提示した点が重要なのだろう。本作は『スター・トレック』に影響を与えたということなのだが、確かに宇宙に対するポジティブな視線が同じである。

特撮について。宇宙船の動きに関しては“宙吊り”であることを隠せていなかったが、ドッキング時の“照明”の使い方が非常に上手く、宇宙という空間を感じさせるとこに成功している。繰り返しになるが、デザインや質感、そしてカメラワークが優れていることもあり、制作年代を考えれば十分なクオリティかと思う。ただし、『2001年 宇宙の旅』のように現代の作品と比較しても凄いという程ではない。

禁断の惑星』のロビーよりも後ではあるが、本作にもロボットが登場する。そのロボットが、狂って立て籠もった男がいる場所の扉を“焼いて開けよう”とするのだが、行動が『スター・ウォーズ EP1』のクワイ=ガン・ジンと同じである。“手から炎が出てくる”という仕様もR2D2みたいだったし、ルーカスは間違いなく本作を観ていると思う。他にも様々なSF映画のオマージュ元があったりするのではないか。

イカリエ-XB-1(字幕版)

イカリエ-XB-1(字幕版)

  • ズデニェク・シュチェパーネク
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