オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』

The Little Shop of Horrors, 71min

監督:ロジャー・コーマン 出演:ジョナサン・ヘイズ、ジャッキー・ジョセフ

★★★

概要

恐怖の食人植物。

短評

1960年のオリジナル版。“B級映画の帝王”ことロジャー・コーマン監督作である。「流石帝王!」とでも言うべきか、フランク・オズによるリメイク版のオードリー2が素晴らしい操演技術で楽しませてくれたのに対し、本作のオードリーJrは口をパカパカと開くだけである。“素材感(紙)”がダイレクトに伝わってくるチャチさも含め、いかにもな低予算映画なのだが、ジャック・ニコルソン演じるマゾ患者を筆頭にヘンテコなキャラクターが揃っており、なかなかのカオス感だった。

あらすじ

ムシュニク花店で働くシーモアはとんでもないポンコツだった。度重なる失敗の末に遂に解雇されそうになった彼は、妙ちくりんな花を店に持ってくる。シーモアが思いを寄せる店員オードリーにちなんで“オードリー・ジュニア(以下OJ)”と名付けた花を展示してみたところ、それが客寄せとなって店は大繁盛。しかし、その花は夜になると「メシをくれ~」と話し出し、シーモアの“血”を要求するのだった。

感想

基本的なストーリーはリメイク版と同じなのだが、植物を“動かせない”ことが大きく影響している。血を吸ったり人間を食べたりするOJがいくらヤバいとは言え、所詮は「メシくれ~」「腹減った~」と言って口をパクパクしているヒキニートのような存在に過ぎない。したがって、罪を犯すのはひたすらシーモアである。あるいは、彼の愚鈍さである。

二本の花の軸を同じ長さに切り揃えることすらできず、前方に何かあると必ず躓くシーモア。そんなドジな彼が石を投げれば、必ずその先には人がいて、必ず頭部に命中する。ある種の才能である。鉄道職員を、歯医者を、そして街娼を、次々と“殺害”しては“餌”にしていくシーモアなのであった。これをあくまで“ドジ”という文脈で描いてはいるものの、「殺しちゃった!ヤベえ!」と“袋詰め”して花屋に持ち帰る辺りは立派なサイコパス感が漂っていた。「ちょっとだけだぞ」とか言って手足を食べさせてんじゃねえよ。

毎日誰か親戚が死んで葬式用の花を買いに来る、“忌引をフル活用する人”みたいな客のシヴァ。「カーネーションうめえw」と花を食べる客フォーチ。アッパー系のクスリでもキメているとしか思えないテンションの歯科医ファーブ。アルコール度数98%の酒を美味そうに飲み、料理の味付けに謎の薬を用い、病気にやたらと詳しいシーモアの母。そんな奇人ばかりが登場する一作ではあるのだが、やはり鮮烈な印象を残すのはジャック・ニコルソン演じるウィルバーである。

ウィルバーはシヴァから評判を聞いて歯科医ファーブを訪れる患者なのだが、そのファーブはシーモアが殺してしまっており、素人シーモアの診療を受けることになる。そこで素人に歯を削られ、「いい!凄くいい!」と喜ぶドMさんなのだった。後に偉大な俳優へと成長する彼が“特に意味のない変人”を演じているというだけでも面白いのだが、その笑い方はジョーカーを彷彿とさせるところがあり、二重の意味で楽しめる役柄となっている。

OJというよりもシーモアの餌食となる街娼なのだが、ハンカチを落として男に拾わせ、それを切っ掛けに客引きするという技術を使っていた。ちょっとした“ケチャップ強盗”みたいである。