オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『最後の1本 ペニス博物館の珍コレクション』

The Final Member, 72min

監督:ジョナ・ベッカー、ザック・マス 出演:シグルズル・ヒャールタルソン、パゥットル・アラソン

★★★★

概要

おちんぽ博物館の最後の1本。

短評

一応はタブー扱いということになっているが、その話題が出ただけで何故か頬が緩んでしまう“ペニス”。男性の象徴であり、悩みの種であり、そして時に良き友でもある。そんなペニスに異常に執着して博物館まで作ってしまった男がいるというだけでも爆笑ものなのだが、世界は広い。ペニス博物館の館長を悠に上回る変人が登場し、ペニスについての葛藤が生まれ、そしてペニスが収まるべきところに収まる大団円を迎える。立派なドラマのあるドキュメンタリーだった。

あらすじ

アイスランドにはあらゆる哺乳類のペニスを収集したペニス博物館があるが、まだ一つだけ足りないものがあった。“人間のペニス”である。館長のシッギがなんとかコレクションを完成させたいと思案していたところ、著名な冒険家であるアラソン氏から寄付の申し出が。後は彼の死を待つだけかと思われたが、ミッチェルというアメリカ人から「生前にペニスを切断して寄付したい」というオファーが届く。果たして、ペニス博物館の“最後の1本”の座に収まるのは誰のペニスなのか。

感想

館長の本音としては、「よく知らないアメリカ人のペニスよりも同胞アイスランド人のペニスの方がいい」という思いがあるらしい。しかし、いくつかの面でミッチェルが「エルモ」と呼ぶ彼のペニスの方が優れている面もあり、館長はその受け入れを前向きに考える。たとえば“生前の切断”という条件は、「自分もいつまで生きていられるか分からない」と悩む館長にとってコレクションの完成を早める救いの一手である。また、アラソン氏のペニスよりもエルモの方が“大きい”といった事情まである。「長さよりも太さだ!」「硬さこそが絶対!」「俺のはカリ高だ!」と様々にペニスを語る者がいるが、やはり展示品としては大きいに越したことはない。誰だって大きなペニスには思わず圧倒されるだろう。真偽不明にしても、ラスプーチンを今なお怪僧たらしめているのはあの巨根の存在である。

しかし、そうは言っても“ペニス”である。「生前にちょん切って寄付したい」と申し出るような男がまともなはずもない。ミッチェルは、エルモに星条旗のタトゥーを刻み(それを見た女医の反応が面白い)、専用の展示ケースを勝手に作り、“プラスティネーション”という手法による完全勃起状態のペニス保存と、館長の意向を無視して自らの“理想のペニス展示”を推し進めようとする。更には毎日メールで様々にコスプレしたエルモの写真を撮っては送ってくるものだから、館長も「あの人とは関わりたくない……」と参ってしまうのである。この顛末を笑わずに観ていられる人と三十郎氏は仲良くなれる気がしない。

こうなるとイカれたアメリカ人のペニスなんて御免被りたいところなのだが、アラソン氏のペニスにも問題が発生。加齢によってペニスが縮み、女性を満足させうる“法的な長さ”の最低基準12.7cmを下回る可能性が出てくる。法的に認められない長さでは“人間のペニス”としては展示できない。かつては絶倫を誇った同氏も情けなく縮んだペニスが展示されることを望んではおらず(交わった女たちの写真を眺めながら「この女はおっぱいが、この女は尻がキレイだった。ヒヒヒ」と笑う姿が最高に良い。“記録ノート”に記された人数は約300で、数では“校長”に大きく劣るものの、「商売女は含まない」と同氏は豪語する)、一方では館長に距離を置かれてしまったミッチェルが「エルモにはもっと相応しい場所があるはず」と言い出し、最後の1本計画は暗礁に乗り上げる。

万事休したかと思われたが、「縮んじゃったよ……」と言い遺してアラソン氏が亡くなり(これは字幕でイジったわけじゃなくてガチなのか)、彼のペニスが無事館長の元に届く。測定の結果、“法的な長さ”もクリアである(他の動物のペニスは素手で扱っているが、アラソン氏のものだけはゴム手袋を着用していた)。かくしてペニスコレクションは完成し、大団円を迎えたわけだが、だからと言ってEDロールで“感動的なBGM”を流すのは反則だと思う。館長も石で出来たペニスのオブジェの“後ろ”に立ってポーズを取っていたが、あれは流石に盛りすぎだろう。

完全に頭のおかしい人にしか見えなかったミッチェルだが、彼のことも少しだけ擁護しておきたい。彼は惚れやすい性格であり、女性関係で失敗することが多かったとのことで、「女に気を散らされなくて済むようになりたい」と語っている。宦官の歴史を見れば、残念ながらペニスを除去したからと言って性欲が消え去るわけではなく、むしろ歪んだ形で発現してしまうことが分かるのだが、ミッチェルの言わんとすることが三十郎氏にも分からないでもない。股間のぶら下げた二つの玉に振り回されなければ、三十郎氏だってもう少しだけ有意義な人生を送ることができたかもしれない。とは言え、「加齢で縮む」という話を聞かされてしまうと、「元気な内に使っておかないと……」と考えてしまうのもまた事実なのであった。なお、“法的な長さ”は余裕でクリアしているのでちゃんとペニスではあるが、残念ながらエルモよりは小さいので自慢はできない。

最後にペニス博物館のHPのリンクを貼っておく。アイスランド旅行の際に訪問すれば、オーロラよりも、氷の洞窟よりも、きっと誰もが食いつく話の種となるはずである。

最後の1本~ペニス博物館の珍コレクション~(字幕版)

最後の1本~ペニス博物館の珍コレクション~(字幕版)

  • シグルズル・シッギ・ヒャールタルソン
Amazon