オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『バニシング』

Keepers(The Vanishing), 106min

監督:クリストファー・ニーホルム 出演:ジェラルド・バトラー、ピーター・マラン

★★★

概要

消えた三人の灯台守。

短評

フラナン諸島の謎」という未解決事件が元ネタの一作。実話レベルは「Inspired」である(「Based」なら“未解決”でない)。孤島が舞台の失踪事件ということで、てっきり超常現象系のB級ホラー映画なのかと思っていたのだが、割と硬派なスリラーだった。いくつかの粗が気にならないでもなかったが、二段構成となったスリラーにはいずれも緊張感があったように思う。“何とかしてくれそう”なジェラルド・バトラーがいてもダメな時はダメらしい。

あらすじ

舞台はスコットランド沖アイリーン・モア島。大ベテランのトマス、ベテランのジェームズ、そして新人のドナルドの三人は、これから6週間の灯台守の任務に就く。それはいつも通りの仕事のはずだったが、嵐の夜の翌朝、犬のジェドが吠えるのでドナルドが崖の下を覗いてみると、そこには難破した船と一体の死体が転がっていた。死体の傍らには木製の箱があり、回収したその箱の中には……。

感想

崖の下に降りるのはドナルドの仕事である。とりあえず“死体が死んでいること”を確認し、箱をロープで引き揚げようとしていたら、実は生きていた死体が襲いかかってきたので逆に殺してしまう。これは箱の中身の貴重さを示すためのエピソードなのだろうが、そんなものは中を見れば分かる話であり、特に必要なかったかと思う。海鳥の死体や水銀中毒の線でミスリードはしているものの、動きの少ない序盤に何かインパクトが欲しかったのか。いくら無能な新人とは言え、生死の確認くらいはちゃんとしてほしい。

箱の中身は“金塊”である。「やっほー!」「パリとニューヨークのどっちに行く?」とはしゃぐ若手二人に対し、「こんなのヤバい奴が取り返しに来るに決まってるじゃん」と冷静なトマス。そう、今回のジェラルド・バトラーはあまり頼りにならない。“エンド・オブ・ライトハウス”ではない。案の定、目が笑ってなくて怖い奴と頭の悪そうな巨漢の二人組が現れ、トマスの「ほ、本土に送ったよ……」という下手なウソもすぐにバレる。これが一段目のスリラーである。なお、ウソがバレるのを回避するために必死で無線を修理するジェームズだったが、修理できるのなら初日の内にやっておけよ。

数で上回り、しかも島という地の利があるにも関わらず、二人組にボコられるポンコツ三人衆。しかし、ここで“頼りになるジェラルド・バトラー”と“海賊式の縄拷問テクニック”が発動し、怖い二人組みを返り討ちに。徐々に増えていく死体の数が“後戻りできない”感を強く打ち出すわけだが、そこにもう一つ加わる死体が決定的なものとなる。

「もう一人いるぞ!」とジェームズが暗闇で殺した相手がチャーリーという顔見知りの子供で、その罪の意識から彼は完全に“壊れる”。このチャーリーがどこから湧いてきたのかという謎は残るものの、壊れた男、金塊を持って逃げたい若者、そして態度を決めきれない老人の三人が織りなす人間ドラマはなかなかの見応えだった。ちなみにこれがスリラーの二段目ということになるのだが、「独り占めしてやろう」と三人が身内で争うのではなく、既に取り返しのつかなくなった事態に対してどう対処するのか(具体的にはジェームズの処遇)が焦点となっている。いずれにせよ欲をかいた浅はかさ故のものであるが、そこには地味ながらもリアリティがあった。

謎多き未解決事件の解釈としては“ワクワク感”に欠ける展開ではあったが、それを優先するとバカ映画になってしまうのだろう。そういう映画を求めるならば『コールド・スキン』が思い浮かぶが、こちらはこちらで少々難解である。