オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『荒野の処刑』

I quattro dell'apocalisse(Four of the Apocalypse), 104min

監督:ルチオ・フルチ 出演:ファビオ・テスティ、リン・フレデリック

★★★

概要

賭博師と娼婦と墓掘りと浮浪者。

短評

ルチオ・フルチが手掛けたマカロニ・ウエスタン。ホラー映画のイメージが強い同監督だが、『サンゲリア』でキャリアの転機を迎える前は特にホラー専門というわけでもなかったらしい。開幕早々に“掃除”と称して悪党が一掃されるような残虐性にその片鱗を感じさせつつ、基本的にはシンプルな復讐譚なのだが、終盤には心温まる謎の展開が待っているという一風変わったロードムービーだった。

あらすじ

商売をしようとソルトフラットにやって来るも、到着早々に逮捕されてしまった賭博師のスタビー。しかし、その夜、覆面集団による悪党の一掃が保安官黙認の下に行われ、彼は逆に命を救われることとなった。共に投獄されていた娼婦“バニー”ことエマヌエラ(リン・フレデリック)、墓掘りのバット、自分の名前も分からないのでスタビーにクレムと名付けられた酔っぱらいの浮浪者の三人と町を追放されたスタビーは、与えられた馬車で南下することに。その道中、腕利きの狩人だというチャコも仲間に加わるのだったが……。

感想

チャコがくれた“シャイアン族のサボテン”で酩酊状態となったところで身体を縛られ、バニーがレイプされてしまう。彼女の完全に“キマった目”の無反応ぶりが妙にエロティックで、イタリア人という桃色民族は何が股間に響くのかをよく理解していると思った。バニーのレイプ、チャコに逆らって脚を撃たれたクレム(その前に酒欲しさにチャコに協力している)──この二つに善良な移民集団の虐殺という要素が加わり、スタビーが「あいつは絶対に殺す」と復讐を誓う物語である。

これで物語の軸が定まったかに思われたが、話が“復讐”へと向かう気配を一向に見せない辺りが本作の特徴だろう。豪雨に見舞われて廃村に避難した四人。「服を脱いで乾かすぞ」という展開にバニーが少し恥ずかしがるコミカル寄りな描写を見せたかと思えば、クレムがスタビーとバニーに「愛し合え」と言い遺して息絶える。するとバットが察したかのように墓の様子を見に外出し、事後の二人に「獲物がいた」と肉を持ってくる。ところが、バットは精神を病んでおり、その肉は“人肉”だったというオチがつく。「あいつは壊れちゃったよ……」とバットと別れ、スタビーとバニーの二人は旅を続ける。なんだこの謎展開の連続は!?頭が大変に混乱する。

レイプされたり愛し合ったりと忙しいバニーだが、彼女は妊婦である。二人が旅を続けていると、彼女が産気づき、出産のために急遽近くの町へ。この町には荒くれ者の男たちしかおらず、彼らは「この町に女なんか要らねえ!」と言い出したりもするのだが、出産という生命の神秘に立ち会って心変わりするというこれまた謎の展開を迎えるのだった。これが確かに意味不明ではあるものの、妙に心温まるところもあったりして、余計に混乱する。基本的にはシンプルな復讐譚のはずが、まったく大した謎映画である。

赤ん坊に“完堕ち”した男たちに「俺にはバニーとの思い出だけあればいい」と無責任に赤ん坊を預けて町を去るスタビー。すると都合よくチャコに奪われた馬車を発見し、見事復讐を成し遂げて終劇となる。最初から最後まで一貫して“雑”なのだが、なんだか“いい話”だったような不思議な感覚を覚える一作だった。

ちなみにパッケージに写っているのはチャコである。彼が主役にしか見えない。

荒野の処刑 (字幕版)

荒野の処刑 (字幕版)

  • ファビオ・テスティ
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