オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『エルサレム』

JeruZalem, 95min

監督:パズ兄弟(ドロン&ヨアヴ) 出演:ヤエル・グロブグラス、ヨン・トゥマルキン

★★★

概要

贖罪日にエルサレムで復活するもの。

短評

イスラエル製のPOVゾンビ映画。ゾンビが出てくることは終盤まで分からないし、それがゾンビなのかも微妙なところだが、原題が『JeruZalem』で「Z」が強調されているため、特にネタバレにはならないだろう。事が起こり始めてからのゴチャゴチャした感じはいかにもなファウンド・フッテージだったが、撮影媒体が“スマートグラス”というのが新鮮で、観光映画としてもなかなの出来だと思う。ただし、ホラーとは別の意味で怖いところがあったりするため、エルサレムの観光振興には役立たないだろう。

あらすじ

兄を交通事故で亡くしてから1年。サラ(ダニエル・ヤドリン)は親友レイチェル(ヤエル・グロブグラス)と共にテルアビブへとバカンスに出かける。しかし、イスラエル行きの機内で知り合ったケヴィンに誘われ、“贖罪日”の近いエルサレムに立ち寄ることに。町の眺望や大麻、クラブ、そしてセックスを楽しむサラたちだったが、エルサレムでは何かが起ころうとしていた。

感想

サラが父からプレゼントされたスマートグラスを着用して旅に出ているのだが(最初に遊んでいるARゲームがゾンビもの)、これがとても便利そうだった。三十郎氏は音声操作が恥ずかしくて使えないだろうが、スマホを取り出すことなく視界に地図を出せるというのは羨ましい。また、“顔認識”の機能が秀逸であり、視界に入った人がフェイスブックで検索され、誰が、どんな写真をアップロードしているのか分かるのである。これは面白いし便利そうだが、冷静に考えると怖い。完全にディストピアである。

そんな便利なスマートグラスを使って観光していると、突如として爆発音が鳴り響く。これは悪魔的でゾンビ的な者たちが復活した合図なのだが、“テロ”として報道される辺りがイスラエル的である。また、その存在を隠すために旧市街が封鎖され、サラたちは復活した悪魔と共に閉じ込められてしまう。この対応の素早さもイスラエル的である。ホラーとは別の意味で怖い。悪魔が出てこなくても映画が成立する。

何か宗教的な背景があるらしい悪魔や巨人の正体についてはよく分からなかったし、それが“伝染性”である理由もよく分からなかったが、話が動き始めてからはパニック映画的なので、よくあるPOVものと同じ程度の面白さである。いわゆる“本編”に該当する箇所は普通としか言いようがないものの、終盤に再度スマートグラスが活躍する。ここが本作最大の見所である。「兄に会いたい」と嘆きの壁に祈ったサラの前に復活した兄が現れるのだが、その悪魔ゾンビ化して誰だか分からなくなった男を、“顔認識”が兄だと言い当てるのである。これには爆笑した。なんという精度!

他にもお笑いポイントがいくつかあった。サラがケヴィンと交わる際、彼女はスマートグラスを外して自身の裸体が画面に映り込むのだが、その端っこでは父からのメッセージが表示されている。サラはメガネを“掛けている”ので、ほとんどその姿が映ることはないものの、しっかりとおっぱいだけは晒しているサービス精神に感謝したい。あとは、“エルサレム症候群”を発症して精神病院に収容されたケヴィンをサラが助けに行くシーン。彼女は先導役の軍人が最後まで一緒にいてくれなかったことで「人でなし!」と責め立てるのだが、彼女もケヴィン以外の患者を気にする様子は全く見られない。なんて自己中な女だ。そして、避難時に患者を放置する病院も怖い。