オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『マスターズ・オブ・ホラー』

Nightmare Cinema, 119min

監督:アレハンドロ・ブルゲス、ジョー・ダンテ北村龍平デヴィッド・スレイド、ミック・ギャレス 出演:ミッキー・ローク、サラ・エリザベス・ウィザーズ

★★

概要

短編ホラー映画五篇。

短評

邦題のパクリ元となったらしいTVシリーズと比べると「マスター」と呼ぶには少々頼りない五人の監督を集めたホラー映画のオムニバス。“登場人物がふらりと入った映画館で自分の死に様を見せつけられる”という形式によって統一感を出しているものの、「オムニバス」と呼ばれるものにありがちな通り、全体としてのまとまりを欠く一作だった。基本的にはホラー映画のテンプレをコテコテに盛り込んだパロディ的な趣向が全開なのだが、笑わせたいのか怖がらせたいのか判然とせず、かと言って本気で怖いものは一つもない。ちょっと反応に困る出来だった。

あらすじ

とある映画館に足を踏み入れた五組の観客。入り口には映画のタイトルと主演に自分の名前が記されている。自分の他に観客はいない。彼らが不気味に思いながらも席につくと、スクリーンにはそれぞれの死に様が映し出されるのだった。

感想
  • 『The Things in the Woods(森の中の物体X)』監督:アレハンドロ・ブルゲス

コテコテのスラッシャー映画。リア充カップルが“溶接男”なる殺人鬼に襲われる話である。田舎のロッジ、無能な保安官、戦うヒロイン。この種のB級ホラー映画の“あるある”を、ほぼクライマックスだけの構成に詰め込んでいる。これは完全にコメディだった。ちなみに意外なオチが待っているのだが、これもホラー映画で殺されないための必須条件である“宇宙からの飛来物には絶対に近づくな”のネタである。

顔に傷のある女が恋人の勧めで整形手術を受けるサイコロジカル・ホラー。短編映画なので怖がる暇もなくトントン拍子で話が進んでしまうのだが、五篇の中で最もアイディアは好きだった。オチはジョークになってしまっているが(しかもどうして『トータル・リコール』をパロディしたのか)、長編映画にすることも可能な内容だったと思う。

悪魔憑きもの。カトリックの学校を舞台とした一作であり、姦淫を戒めるという品行方正な悪魔の名前が「マシット」。神父とシスターがよろしくヤッているせいで生徒たちが被害に遭うという迷惑な話である。悪魔憑きにあった生徒の“声変わり”や“目から血を流す”といった演出が“あるある”なのだが、本作では何故か神父が教会の装飾用の剣を武器に憑かれた子供たちに立ち向かうという超展開が見られる。一篇目に続き、本作も完全にコメディだった。

“それっぽい雰囲気”のホラー映画。モノクロの映像やコメディの要素のない点が特徴の、五篇の中では異質な一作である。これだけは“普通にホラー”というか、かなり不気味な仕上がりである。周囲の人物や物が醜く見えるようになってしまった女がカウンセリングを受ける話であり、“内面反映系”の話なのかと思いきや、よく分からないオチがついている。こういう“思わせぶり”もホラー映画あるあるか。

  • 『Dead』監督:ミック・ギャリス

強盗に襲われて“数分間死亡”したことによって死者が見えるようになった少年の話。このネタを使っている映画は『シックス・センス』以外に何かあるのだろうか。少年が病院で強盗に再び殺されそうになった際、既に死んだ母が「身を任せなさい」と息子を死なせようとし、自分も一度死んだという患者が「生きろ!」と説く。少年は後者を選ぶのだが、もしかして『マーターズ』のオリジナル版とリメイク版に対するアメリカの答えだったり……はしないか。