オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ゾンビマックス!怒りのデス・ゾンビ』

Wyrmwood: Road of the Dead, 98min

監督:キア・ローチ=ターナー 出演:ジェイ・ギャラガー、ビアンカ・ブレイディ

★★★

概要

ゾンビの血で車が走る。

短評

オーストラリア製のゾンビ映画。邦題詐欺と駄作であることがほぼ確定な、濃厚な地雷臭漂う一作だというのに、意外に面白いというのは逆に詐欺だと思う。ズルい。色々と“すっ飛ばしている”点が多く、流石に上出来とまでは褒められないものの、奇抜な設定、圧倒的な勢い、そして意外に高いゾンビのクオリティの三つが揃っており、凡百のB級ゾンビ映画とは一線を画していた。実はマッドマックス要素がそこまで重要でもなく、それ以外にも意味不明な設定が用意されていたりするのだが、この邦題をつけてしまった理由は理解できる。

あらすじ

空に流星群が降り注いた翌日、世界にはゾンビが溢れた。バリーの妻と娘もゾンビ化し、無念にも二人を殺害することとなるも、彼にはまだ離れた場所に暮らす妹のブルック(ビアンカ・ブレイディ)が残されていた。彼は偶然に出会ったベニーと行動を共にするが、その道中、車が故障して走らなくなってしまう。フランクたちが立てこもっている倉庫に身を寄せたところ、彼はガソリンが燃えなくなっていることを知らされる。しかし、その代わりにゾンビの血が燃えることに気付くのだった。

感想

ただゾンビの血をガソリンの代わりに使えるというだけではなく、どうやら世界の物理法則そのものに変化があったらしい。どういう事情なのかは説明がないので分からないが、とにかくそういうことなのである。ゾンビの血が燃える──この事実に気付けば、血を抜いた上でガソリンの代わりに使用するというのが常人の発想ではないかと思う。しかし、バリーたちは違う。「ゾンビとエンジンを接続するぞ!」である。完全に『怒りのデスロード』の“ブラッド・バッグ”と同じなのである。この画を撮りたかっただけとしか思えない程度にはちゃんと設定が練られているようには感じられなかったが、確かにその画は輝きを放っていた。

ゾンビガソリンの他に、「Rh-のA型だけが感染しない」とか「ゾンビガスは日中しか使えない」といった設定があるものの、物語に大きく影響するのは「ブルックがゾンビを操れるようになる」というものだろう。軍を自称する謎の組織に捉えられた彼女がマッドサイエンティストにゾンビの血を射たれると、何故だかその能力が発現するのである。これも理由や理屈は分からない。とにかくそういうことなのである。貴重な生存者(それもセクシー美女)をゾンビ化してしまうような試みが行われる理由が分からないし、恐らくはブルックの能力も研究者が意図したものではないのだろう。観客は大いに混乱するだろうが、そんな事を気にする素振りを一切見せずに物語は進んでいく。

上述のように、本作には“そういうこと”としてスルーしている要素が極めて多い。バリーがクライマックスで対決する自称軍人が「これはお前ら二人の問題じゃなくて人類全体の命運を握ってるんだぞ!分からないのか!」と怒っていたが、何の説明も受けず、ブルックの身に何が起きたのかも知らされていないバリーに分かるはずがない。少なくとも後者は知っているはずの観客にだってさっぱり分からないのだから。そこを怒涛の勢いで誤魔化しているのが本作ということになるかと思うが、確かに楽しいものの、意味不明な点が全く回収されない消化不良感は否めなかった。

ただし、本作のファンに朗報である。本作には続編『Wyrmwood: Apocalypse』が存在する。2021年現在、2022年の公開を目指してポストプロダクション作業中らしい。これが公開されても日本に入ってくるのがいつになるのかという問題は残るものの、“全く期待してなかった割には意外に面白かった”というタイプの作品なのだから、続編も期待せずに待とう。きっと本作の残したあらゆる謎が回収される……ことはないだろうな。

サメ漁(違法)に使用していたというガス式のモリやブーメランというオーストラリア要素にはもっと活躍の場が与えられてもよかったように思う。特に後者については、白人のバリーではなくアボリジニのベニーに投げさせた方が盛り上がっただろう。