オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『感染家族』

기묘한 가족(The Odd Family: Zombie on Sale), 111min

監督:イ・ミンジェ 出演:キム・ナムギル、チョン・ジェヨン

★★★

概要

ゾンビを使って一儲け。

短評

韓国製ゾンビ映画。元々は「ホラー」のサブジャンルとして登場したゾンビ映画だが、そのノロマで阿呆な姿が「ゾンビコメディ」というサブサブジャンルを生み出し、中にはゾンビと人間が友好的な関係を築いている作品も決して珍しくはない。しかし、本作の発想は完全に予想の斜め上であり、「そう来たか!」と感心しつつも爆笑させられるものだった。「コメディ」という枠に甘えず、“純ゾンビ映画”的にジャンルを変化させても高い質を保っていたし、そこから再度コメディとしてオチをつけるのも好感が持てた。

あらすじ

ド田舎の村でぼったくり自動車整備工場を営むパク家の長男ジュンゴルと彼の妊娠中の妻ナムジュ。パク家の末娘ヘゴル(イ・スギョン)と帰省した次男ミンゴルを追いかける何者かをジュンゴルが轢き飛ばすも、男は何事もなかったかのように走り去っていく。その夜、工場の倉庫に現れた男をジュンゴルが飛び蹴りで撃退するも、なんと胸に杭が刺さっても男は死なない。スマホで『新感染』を観た結果、男の正体がゾンビであるらしいと一家は察するのだが、パク家の父マンドクがゾンビに頭を噛まれていたことが判明する。ナムジュが即座にマンドクを監禁し、ミンゴルは父の殺害を主張するものの、翌朝……。

感想

映画冒頭、「HIBという製薬会社の違法な実験によってゾンビが誕生したらしい」という事情が説明される。と言っても、『バイオハザード』の如き陰謀が潜んでいるわけではなく(こちらの目的も正直よく分からないが)、製薬会社だってゾンビを生み出す以外の真っ当な目的を持って研究していたのだろう。その成果が、ゾンビに噛まれたマンドクに現れる。なんと彼は“若返る”。この時点で意外すぎた。ほぼ勝利が約束された。確かにゾンビと言えば「不死」の存在だが、そこから転じて「不老不死」の研究でもしていたのだろうか。なんだか妙に説得力があるではないか。

若返ったマンドクは村の老人たちの注目を集め、“若い嫁を貰う果樹園の長男”を筆頭に「俺も!俺も!」の大行列。それに目をつけたミンゴルたちが……という展開である。ちなみにゾンビの好物はキャベツであり、ケチャップをかけてあげると喜んで食べる。ベジタリアンである。かつてここまで平和なゾンビ映画があっただろうか。身なりを整えてやると実はイケメンだったゾンビのチョンビとヘゴルのロマンス要素を交えつつ、チョンビを利用して意地汚く金儲けを企むミンゴルやチョンゴルの姿がコミカルに描かれている。“田舎のゾンビ狂騒曲”として色彩が極めて強く、その“商売”の描写に笑いを堪えられる者は多くあるまい。

ナムジュに歯を抜かれて噛めなくなってしまったのに入れ歯を使えば問題なかったり(チョンビのおかげで儲かると新しい入れ歯がプレゼントされる)、チョンビをソウルの会社に売り飛ばそうと連れ去ったミンゴルが逮捕されてもマンドクが「チョンビは私の末息子」と申し出ればお咎めなしだったりと、細部の阿呆描写にも手抜かりはなかった。

こうしてパク家の“ゾンビ・ビジネス”は成功を収めるも、やがて“顧客”たちがまるでゾンビのように凶暴化する。鍋をヘルメット代わりに利用したり(ミンゴル制作のゾンビ対策本は『ゾンビサバイバルガイド』を参考にしたか)、花火爆撃で攻撃するといった遊び心を残しつつも、特殊メイクを筆頭に“普通のゾンビ映画”としての描写もしっかりしている辺りが韓国映画の地力を感じさせた。なお、ゾンビ映画特有のグロ描写は極力抑えられており、ヘゴルが草刈り機で刈り取ったゾンビの腕にも何故かモザイクが掛かっていた。パニック映画になってからの描写では、村が大混乱に陥っているのにテレビでは何も報道されておらず、ヘゴルが「田舎だから仕方ない」と嘆く場面が好きである。

終盤のチョンビが人間性を獲得する展開はご都合主義的に感じられたのだが、これも上手いことオチをつけて整合性を付与していた。ナムジュの出産及び育児費用をネコババしてハワイ旅行に行ったマンドクが帰国すると、彼は“第一号”のはずなのに何ともない様子。つまり、“免疫持ち”である。マンドクをそのまま“ワクチン”として一家で新ビジネス(マネタイズの方法は不明)を開始する結末は圧倒的雑さなのに、マンドクの自業自得による笑いがそれを上回っている。

ヘゴルがチョンビにキャベツを食わせて顔が赤くなっていることを指摘され、「ホットプレートが近くて熱いだけ」と言い訳するシーンが可愛い。『パラサイト』でも自宅焼肉のシーンがあったかと思うが、ホットプレート焼肉(豚)が韓国における一家団欒の象徴なのだろうか(皿に盛られた肉の量が凄い)。日本でもそういうイメージがなくもないとは思うが、部屋に臭いがつくのがどうもなあ……。外食がしづらくなって復権していたりはしないのだろうか。

感染家族(字幕版)

感染家族(字幕版)

  • キム・ナムギル
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