オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ホラー映画で殺されない方法』セス・グレアム=スミス

How to Survive a Horror Movie: All the Skills to Dodge the Kills/Seth Grahame-Smith

概要

ホラー映画で殺されない方法。

感想

高慢と偏見とゾンビ』によるホラー映画で生き残るための方法を記したハウツー本。もっとも、“ハウツー”というよりは“ホラー映画あるある”の要素が強く、全力でホラー映画のテンプレを茶化したコミカルな一冊だった。なお、巻末に紹介されているが、本書のネタ元の半分は『13日の金曜日』で、残りの半分は『ハロウィン』だそうである。

一口に「ホラー映画」と言っても、そこには様々なサブジャンル──スラッシャー、幽霊、ゾンビ、宇宙人、悪魔──がある。本書はそれぞれの状況に即した具体的な対処方法を紹介しているものの、その前に大前提をしてするべきことがある。その内容とは、“自分がホラー映画の登場人物であると知る”ことである。自分の生きる現実世界でホラー映画と同じ状況に見舞われたらどうすればよいのかではなく、あくまで“ホラー映画で殺されない方法”なのである。そこには映画独自の法則が存在するし、何なら物理法則だって現実とは異なる。まずはこの点を頭に叩き込んでおかなくてはならない。「一週間眠らないためには、編集で一週間を一曲分の時間にまとめさせろ」とか書いてしまうような一冊なのである。

「旅客機に蛇が出現したら(『スネーク・フライト』?)」とか「トウモロコシ畑が子供に占拠されたら(『チルドレン・オブ・ザ・コーン』?)」とか、対象があまりに具体的過ぎる既述も見られるものの、基本的に避けるべき“ホラー映画版・7つの大罪”は以下のものである──「疑心」「マッチョ」「孤立」「不細工」「好奇心」「無責任」「カーセックス」。この文字列を見て「あるよね」と笑える人であれば、きっと本書を楽しめるかと思う。

ホラー映画にはよくおっぱいが登場する。そして、おっぱいを披露する女性は大抵の場合死ぬ。これはホラー映画においては“乳首ソニック”なる現象が存在し、悪役にしか聞こえない高周波音波が若い女性の胸から放射されているのだとか。悪役はおっぱいジャンキーというわけではなく、おっぱいのあるところには無防備な男女が存在するという理屈らしい。乳首ソニックはおっぱいが圧迫されることにより大きく響くため、死にたくなければ分厚い衣服で覆い隠し、男に揉ませぬことである。対称的に、男性の陰茎は決して悪魔憑きの映画に登場しないため、サタンと戦う最終兵器としてフルチンを披露すれば、映画のジャンルを変化させて死を免れることができる。なんてバカな本なんだ!

巻末に「ステップアップのための教材」として紹介されている映画の中では、『アルタード・ステーツ/未知への挑戦』(著者曰く「即レンタルしろ」)や『暗闇にベルが鳴る』、『鮮血の美学』(「少女の両親がサイコどものペニスを食いちぎる」)が気になったのでメモしておく。逆に「作らなくてもよかったホラー映画5選」も紹介されており、三十郎氏も観た『ジョーズ4』や『ハウス・オブ・ザ・デッド』が挙げられていた。