オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『デッド・シティ』

Infección(Infection), 96min

監督:フラビオ・ペドタ 出演: ルーベン・ゲバラ、レオニダス・ウービナ

★★

概要

ベネズエラのゾンビ。

短評

ベネズエラ製のゾンビ映画。決して出来は悪くないのだけど……という印象である。薬物汚染や政治不信を背景としていることは分かるのものの、内容としてはオーソドックスなゾンビ映画に過ぎず、展開の遅さによる退屈さばかりが目立ってしまっていた(ゾンビの動きは素早いのに)。また、邦題の『デッド・シティ』は大問題であり、“シティ”要素のほぼない田舎ロードムービーとなっているため、首都カラカスの大混乱を期待した身からすると「う~ん……」と首を傾げてしまう(というよりも船を漕ぐような)内容だった(その予算の節約感がゾンビ映画らしくもあるのだが)。

あらすじ

ベネズエラの首都カラカスで謎の病気が蔓延し、感染者が凶暴化して人々を襲いはじめる。間もなくして田舎でも感染者が広まり、医師アダムの住む村にも感染者が出現。彼は隣人ジョニーと共に息子ミゲルを預けた義理の両親の家を目指す。

感想

ゾンビの攻撃をかわしつつ、安否不明となった息子の元を目指す。シンプルなロードムービーである。映画冒頭にいきなり「腐った独裁者」という強烈な文言が登場するため、どの程度政府に対する批判的な描写が登場するのか注目していたが、そこまで直接的なものは少なかった印象である。一応ゾンビが襲いかかっては来るものの、本当に淡々とロードムービーが進行し、“イベント”という意味での見どころは皆無に近い。とりあえず国連とWHOに協力を要請し、あとはほとんど無策という政府の頼りなさこそが批判対象だったのだろうか。

とは言え、ベネズエラ人の政府に対する不信感が如実に現れているようなシーンもあった。アダムが知人の医師カルロスに連絡すると、彼は隔離所で病気の研究をしていると言う。それを知ったジョニーが「隔離所なんかに連れてったらまとめて殺されるに決まってる」と反応するのだが、現(及び前)政権に批判的な三十郎氏とは言え、即座にこの言葉は出てくることはないだろう。

本作のゾンビは動きが素早いためにそれなりの迫力はあるものの、人間に喰らいつく描写は強調されておらず、激しい動きの割には大人しかった印象である。したがって、ゾンビに関する描写で印象に残る点はないのだが、“襲われる人間”の描写は特徴的だった。アダムがホテルに籠城した際に知り合う女がヒロインポジションなのかと思ったらあっさりと殺され、変人親子から救出した妊婦も重要ポジションなのかと思いきやあっさりと死ぬ。この無常感は何なのだろう……。

そうして崩壊した社会のやるせなさを描いたかと思いきや……からの息子は免疫持ちというご都合主義……からの待ち伏せしていた何者かに攫われるというバッドエンド……からの過程をすっ飛ばして息子発の血清によってベネズエラは救われたというグッドエンド。終盤は正直何がしたいのか分からない超展開の連続だったものの、EDロール前に見られるベネズエラから脱出する難民に対する反応はコロナ禍と重なるようで面白かった。

シティ要素がないのは残念だったが、田舎とは言え荒廃した町の描写は素晴らしく、退屈だという一点を除けばそこそこの一作だったかと思う。