オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『エンド・オブ・キングダム』

London Has Fallen, 98min

監督:ババク・ナジャフィ 出演:ジェラルド・バトラーアーロン・エッカート

★★★

概要

ロンドン、陥落す。

短評

アメリカと韓国に続き、同盟国イギリスが無能ぶりを晒すガバガバアクション映画シリースの第二作。前作に引き続き、本作もツッコミの追いつかないツッコミどころを笑い飛ばしながら楽しむべき一作かと思う。相変わらず細部の描写は酷いものだが、長回しの突入シーンのような圧巻の演出も見られ、大味なアクション映画に求められるものはきっちりとクリアしてくるのだった。これだけ無能揃いの世界であれば、ド素人の三十郎氏がセキュリティ・コンサルタントの職についても稼げそうなものだが、テロリストの数が想像を絶するレベルで多いので厳しいか。

あらすじ

ホワイトハウス奪還の功績により大統領アッシャー(アーロン・エッカート)の警護責任者に戻ったマイク(ジェラルド・バトラー)だったが、妻リアが出産を控えていることもあり、危険な職を辞することを考えていた。そんな折、イギリス首相が急死したとの一報を受け、セント・ポール大聖堂で執り行われる葬儀に各国首脳が集うこととなる。しかし、爆破テロを皮切りに大量のテロリストが町を陥れる。マイクはなんとか大統領をヘリまで誘導したものの、ヘリが撃墜され、二人はロンドンの町で追手から逃れようと奮闘する。

感想

テロの首謀者はパキスタンの武器商人バルカウィなのだが、彼に雇われた参加者の数が尋常ではない。“紛れ込んでいる”とかいうレベルではなく、周りを見渡せば警察も民間人も、そして衛兵までも、誰も彼もがテロリストである。「西欧社会に不満を持っている者を集めたらしい」という説明があったが、身内に嫌われすぎだろ。前作の韓国政府が首相の警備を有名テロリストに任せるという大失態を犯したのに続き、本作のイギリス政府にも警備関係者の身辺調査をするという発想はないらしい。この膨大な数の警察等に偽装したテロリストが誰が味方か分からないという状況を生み出し、またもやマイクの「信じられるのは俺だけだぞ」と言葉を生む。ちょっとDV男みたいである。

ヘリがRPGで撃墜されたにも関わらず無傷だった二人は(マイクは「機体が爆発するから早く出ろ」と大統領に指示するが、彼は長々と残るし、出ても機体からあまり離れない)、マイクの知り合いのMI6エージェントであるジャクリーン(シャーロット・ライリー)の隠れ家へと向かう。「MI6に知り合いがいる」なんて、もはやマイクの方が怪しいのではないかという気がしてくる。流石にそんな展開ではなかったが、内部に裏切り者はいるし、市内の電気や通信を易易と遮断されるし、イギリスの味方はとにかく当てにならない。首相の死が暗殺によるものだと当日中に見抜けないってどういうことだ。ジャクリーンだけは“正義側”で、彼女が裏切り者に制裁を加えていたが、あれは完全に私刑だろう。デュー・プロセス・オブ・ローはどこに行った。

市民も警察も怪しい、イギリスの味方も当てにならない。しかし、怪しいのイギリスの関係者だけではない。副大統領に昇格したアラン(モーガン・フリーマン)が犯人の正体を知り、「あいつは疫病よりも人を殺す男だ」という「それはお前たちだろう」というツッコミ待ちのような言葉を発した直後、なんとバルカウィからビデオ通話が掛かってくるのである。なんだよ、お前ら連絡先交換済みかよ。そもそものテロの発端は、バルカウィの娘の結婚式をドローン空爆したことにあるのだが、結婚式を襲って民間人を巻き込みまくった挙げ句、肝心のバルカウィを取り逃しているという無能ぶりである。最後に再びドローン攻撃でバルカウィを始末するシーンでは「この建物に民間人はいません」とアピールしていたが、どう見ても民間人な通行人にも被害が出ていた。マイクは「お前らが何しようとこの国は千年安泰だ!」と言っていたものの、割と危ういと思う。

“周囲を極端に無能化させて一人有能ぶる主人公”というのが本作の構図かと思うが、マイクの判断も割と怪しかったと思う。地下鉄構内でテロリストを発見し、そいつの無線を奪うマイク。テロリストの司令部と通信して「お前の弟が苦しんでるぜ!」とイキがるものの、これは相手に自分の居場所を伝えているに等しいのではないだろうか。対するテロリスト側もこれだけの大規模作戦をほぼ成功させた割には無能なところが散見される。彼らは米大統領殺害の様子をネット中継することを目的としていたようだが、捕まえるまでに死んでてもおかしくなかっただろう。

英首相の葬儀には我らが日本の首相“ツトム・ナクシマ”も参列予定で訪英していたが、彼はセント・ポール大聖堂まで辿り着くことなく死亡する。厳重な警備により発生した渋滞に巻き込まれ、立ち往生しているところで橋が爆破テロで落とされる。海外首脳の移動ルートに交通規制を掛けられない“厳重な警備”とは一体なんなのか。日本なめられすぎだろ。一般人と扱いが変わらないではないか。あれか、「日本人は行列に並ぶのが好き」というのを皮肉ったギャグなのか。