オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『チャット ~罠に堕ちた美少女~』

Trust, 105min

監督:デヴィッド・シュワイマー 出演:クライヴ・オーウェンキャサリン・キーナー

★★★

概要

ネットでの出会いにご用心。

短評

「チャット」というツールは流石に一昔前の感があるものの、内容的には古さを感じさせないものだった。10代の少女がネット上で知り合った“男子”の正体がおっさんで、上手いこと言い包められて身体を許すというのは、SNSの普及によって“手段”の増えた現代でも頻繁に行われているのだろう。デジタルネイティブ世代ならば防衛策も身につけてほしいものだが、彼女たちに社会的な保護が必要となる理由である“チョロさ”の部分が上手く描かれていたと思う。また、娘がレイプされたことを知った際の父親の反応が興味深く、“向き合い方”についても考えさせられる映画だった。

あらすじ

シカゴに住む14才のアニー(リアナ・リベラト)は、チャットサイトで知り合ったチャーリーという少年と頻繁に連絡を取り合っていた。学校のイケてる女子セリーナ(ザニー・レアード)たちに少々引け目を感じていた彼女は、自分を褒めてくれるチャーリーに強く惹かれ、彼に求められるがままに写真を交換。そして、遂に実際に会ってみることにするのだが、そこには写真とは似ても似つかぬおっさんが待っていた。

感想

ネット上で連絡を取り合っていた段階で怪しい兆候は数多く出ている。チャーリーは「実は20才の学生なんだ」「実は25才の院生なんだ」と年齢についてウソをついていたことを告白。しかし、アニーは写真を見て「イケメンだからいいか」とこれを華麗にスルー。現代っ子ならば「拾い画だな」と即座に見抜きそうなものだが、彼女にその発想はなかったらしい。

それでも現地におっさんが現れると「冗談でしょ……」と流石に戸惑いを隠せないアニーだが、そこは変態ロリコン親父も慣れたもの。「僕があのチャーリーだよ」「愛があれば年齢なんて関係ない」「君は成熟してるから理解できるよね」と果敢に揺さぶりを掛けてくる。「いや、待て。おっさんだぞ!ロリコンだぞ!」とツッコみたくなるが、アニーの“自分に少し自信を持てない少女”という設定が活きてくる。EDロールでチャリーが“教師”であることが明かされるのだが、なんだかもの凄く納得感があった。罠に掛かりやすい少女の特徴も、その対処法も、良くも悪くも知り抜いていることだろう。

褒められまくっていい気になったので、相手の車に乗ってホテルについて行ってしまうアニー。となると、やることは一つである。「ダメ、待って」と拒否するアニーに対してロリコンが「大丈夫だから」と返すが、一体何が大丈夫なのか。

ここまでの彼女の行動を見て、観客は彼女にも責任があると思ってしまうことだろう。そこを見抜いている点が本作の面白さである。娘がレイプされた事実を聞かされ、「野郎、ぶっ殺してやる!」と憤る父ウィル(クライヴ・オーウェン)。彼は犯人探しに躍起となる。「濡れちゃう」「大きくて美味しそう」と娘が発言したチャットログを入手して激昂し、挙げ句は、ロリコンデータベースで入手した無関係のロリコンに襲いかかったりする(襲われたロリコンが「大丈夫だから」と慣れていそうなのがちょっと面白かった)。当然仕事が疎かになって上司から叱責されるのだが、ウィルが「実は娘が……」と事件のことを話すと、「ああ、無理やりじゃなかったのか」という反応が返ってくるのである。未成年者との性交について、当事者と部外者との認識の乖離は実に根深い問題である。

一方で、娘がレイプされたと怒っているウィル自身も娘に落ち度があると感じていたらしく、父娘間の意識の乖離も大きい。そこから目を逸らすかのように“事件”や“ロリコン”にばかり情熱を燃やす父が、妻から「大事なのは娘でしょ」と諭され、娘と向き合って終劇となる。カウンセラー(ヴィオラ・デイヴィス)の「人は傷つくもの」という言葉が印象的だった。なお、父は娘がレイプされる光景が頭から離れなくなのだが、被害者が娘ではなく妻だったならば、寝取られ性癖に目覚めたみたいになっていただろう。

FBIの捜査が始まった後も、「私とチャーリーは愛し合っている」「両親と警察のせいで彼が連絡してくれない」と自説を曲げないアニー。チャーリーが連絡してこなくなって様子のおかしいアニーを心配し、学校にチクった親友(ゾーイ・レヴィン)は無事“元”親友に降格となる。明らかに防衛機制の一種で現実の認識がねじ曲がっている感があるが、割とリアルな心理描写だと思った。なお、チャーリーが他の少女ともヤッていたことを知らされてレイプだったと認識し、ネットにコラ画像をバラ撒かれて自殺未遂するアニー。現代だとコラ画像どころか恋人に撮影させた映像が出回ってしまう人も多いと思うが、その映像を眺めて間接的に加害する以外に続報を聞くことはない。

三十郎氏はジョニーの暴走を許す男たちについて、「インターネットでの出会いなんて証拠が残りまくるだろうによくやるなあ……」と考えるのだが(本作では複数のIP経由で携帯やホテルは現金払いという“手慣れた手口”をとっている)、実際には事件化しないケースが相当数に上るのだろう。インターネットはSNSの普及によって“リアルが寂しい者のための空間”ではなくなったが、“負け組”もまた可視化され、ロリコンにとっては標的を探しやすくなっていたりするのだろうか。

それにしても、この内容の映画の邦題に「堕ちた美少女」という扇情的な言葉を使うのは悪趣味だと思う。