オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ブルース・リーの神話』

Bruce Lee, the Legend, 85min

監督:レイモンド・チョウ 出演:ブルース・リー、ノラ・ミャオ

★★★

概要

ブルース・リーの生涯。

短評

ブルース・リーの死から約10年後、1984年に制作されたドキュメンタリー映画。彼のスクリーン内外での生涯や作品の見所が非常に分かりやすくまとめられていた。この手の映画に期待される“貴重な映像”もちゃんとあるし、リーのキャリアを振り返る上で必要なものが全部詰まっていた印象である。生前の彼が“構想”していたキャラクター等も紹介されており、改めてもう少し長生きしてくれればと思わずにはいられなかった。

あらすじ

1940年11月27日──“辰年”に誕生したブルース・リー。喜劇役者の父と独ハーフの母の間に生まれた彼は、幼い頃より子役として活躍する。その後、不良青年時代を経てアメリカに渡り、父の太極拳と葉問の詠春拳を発展させ、「截拳道」という独自の武術を開発。その技術をもってハリウッドを目指すも大役を得ることは叶わず、失意の内に香港に帰国。しかし、『ドラゴン危機一発』で大ヒットを果たし、リーは中国の神話に新たな1ページを書き加えることとなる。

感想

我々のよく知る香港での活躍の前にアメリカで『グリーン・ホーネット』等に出演したことは知っていたが、子役出身だったとは知らなかった。リーの演じる役に“怒りを抑えて耐えるも最後に爆発させる”というタイプが多いのは、アメリカで「お前、強いんだろ?」と喧嘩を吹っ掛けられることが多かった経験が反映されているそうだが(悪役が外国人ばかりなのもアメリカで受けた差別の影響だとか)、渡米前に出演した作品にもその原型が見られるようである。子役時代の映像を見られるのは貴重だったが、“作品”として見てみたいのは流石にアメリカ時代以降のものか。

アメリカに渡ったリーは中華料理店で住み込みとして働いた後に(中国系移民の典型的なイメージ通り)、シアトルの大学で哲学を学んでいる。ちなみに、三十郎氏の知り合いがワシントン大学に留学した際に「これでブルース・リーの後輩だぜ」と自慢していたため、これは知られざる事実ではなかった。

ノラ・ミャオが語るところによれば、素顔のリーもまた劇中で演じるキャラクターに近かったそうである(イメージを崩さないように発言している可能性も無きにしもあらずだが)。じっとしていることが出来ず、鍛錬に余念がなく、お酒に弱い。なお、彼は女性に対してシャイな役柄を演じているものの、実生活では弟子の一人だったリンダと結婚し、“謎の死”を遂げた現場も愛人と噂された女優の自宅である。彼の渡米には市民権取得の他に「香港にいるとヤンチャするから」という理由があったらしく、この辺りは役柄と本人の違いである。ちなみに、バイクも好きだったらしく、『死亡遊戯』のバイクスタントも意外にありえたのかもしれない。

死亡遊戯』の構想は、ジェームズ・コバーンと共演する予定だった『サイレントフルート』のロケハンでネパール(映画の舞台はインド)を訪れた際に見た塔に着想を得たのだとか。その思い付きから先に撮影してしまったくらいだし、本人も“塔を登って順番に敵を倒していく”以外のことはあまり考えていなかったのかもしれない。リーの死によってお蔵入りした企画の中には"座頭市”をモデルとした盲目の剣豪も含まれており、現代劇にしか出演しなかったリーの別の姿が見られたかと思うと、改めてその死が惜しまれる。

ハリウッドでのオーディションや『死亡遊戯』のスクリーンテストの風景が“貴重な映像枠”で収録されている。前者で「ちょっとカンフー見せて」と言われたリーが「相手が要る」と言い、スタジオの人が相手役として立たされるのだが、寸止めにビビって身体が反応してしまうのが面白かった。香港とシアトルで二度に渡って行われた葬儀の様子が収められており、後者にはジェームズ・コバーンスティーヴ・マックィーンらが参列していた。