オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『シャーク・イン・ベニス』

Shark in Venice, 88min

監督:ダニー・ラーナー 出演:スティーヴン・ボールドウィン、ヴァネッサ・ヨハンソン

★★

概要

ヴェネチアメディチ家の秘宝とサメ。

短評

実際にはヴェネチアではなくブルガリアで撮影されたというサメ映画(そもそも『Shark in Bulgaria』という企画だったのだとか)。路地の雰囲気が現地のものでないことはなんとなく分かってしまうのだが、本物のヴェネチアの映像を随時挿入することで“勘違いさせる努力”については頑張っていたと思う。また、サメ映画らしからぬ無駄に予算を掛けたと思しきシーンがあったりはするものの、肝心のサメが“ほぼ記録映像”というショボさだった。そのサメがストーリーに絡んでくることもほぼなく、中年体型のおっさんによるジタバタしたアクションがメインという不毛な一作である(ハゲてはいない)。努力の方向性が明らかに間違っている。

あらすじ

ヴェネチアで父がスクリューに巻き込まれたという訃報がフランクス博士に届く。恋人ローラ(ヴァネッサ・ヨハンソン)と現地に飛んだ博士だったが、遺体にはサメに襲われた痕があった。しかし、警察は「ヴェネチアにサメはいない」と言って相手にしてくれず、博士は父の残したメモを手掛かりにメディチ家の秘宝を探す。

感想

ヴェネチアにサメはいる。メディチ家の秘宝を探し当てた博士の前に“ヴィト・クレメンザ”という雑すぎるネーミングのマフィアが現れ、「ちょっと手を貸してくれや」と。実はサメは彼がペットとして飼っていたものをヴェネチアの海に放ってしまったという事情があるのだが、それはストーリーとは特に関係ない。本作におけるサメの役割は、恋人を人質に取られてもう一度宝の隠し場所に行く羽目になってしまった博士の“妨害”に留まっている。ヴェネチアを混乱に陥れることもなければ、サメとの戦いがメインになることもない。別にいなくてもいいような存在である。

記録映像に加えてクソCGで描かれたものがほんの少しだけ登場するというサメの描写も酷いが、本作の中心であるアクションとアドベンチャーはもっと酷い。アレック・ボールドウィンの弟スティーヴン・ボールドウィン演じる博士はあまりにも“博士らしい体型”で、決してアクション向きではない(ちなみにローラ役はスカーレット・ヨハンソンの姉なのだとか。確かにおっぱいが大きい)。彼が“頑張る”シーンもショボいのだが、クライマックスに警察とマフィアが銃撃戦を繰り広げている最中、彼がヴィトと水中で揉み合っているだけという残酷な演出が、“アクションさせない方がマシ”という哀愁を感じさせた。

サメも酷い、アクションも酷い(もちろんストーリーもつまらない)。とんでもない駄作の要素を揃えた一作ではあるものの、謎の気合が入った描写も見られる。たとえば、メディチ家の秘宝について説明する際、ちゃんとコスチュームを着た十字軍の騎士たちが、馬に乗って登場するのである。あらゆる箇所に低予算の臭いが染み付いている映画なのに、どうしてここだけ歴史大作風なのか。予算の使い方が間違っているだろう。記録映像のサメと同じく、別作品からの流用を疑うレベルである。また、宝の隠し場所のセットも作品の規模を考えれば上出来だと感じられたが、こちらは物語の核なので仕方がないか。なお、インディ・ジョーンズ風の罠だが、博士は二度もスイッチに気付くことなく回避するという鈍くさいのか凄いのか分からない強運を発揮している。

イメージを死守するためなのか、「ヴェネチアにサメはいない」という方針を頑なに崩そうとしない警察。最後は博士も「うん、いないね」と認めて去っていくのだが、放置するなよ(「ツッコんでくれ」と言わんばかりにEDロールにサメが登場してゴンドラを襲う)。トッティ刑事(ヒルダ・ヴァン・デル・ミューレン)も野放しにしちゃダメだろ。ここまで無責任な“ハッピーエンド風”も珍しい。

サメとの戦いではない場面にチェーンソーが登場するが、本作は2008年の作品なので、2013年の『シャークネード』とは特に関係ない。