オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ボルケーノ・パーク』

天火(Skyfire), 93min

監督:サイモン・ウェスト 出演:ワン・シュエチー、ハンナ・クィンリヴァン

★★★

概要

火山テーマパークの火山が噴火する話。

短評

コン・エアー』のサイモン・ウェストを招聘して制作された中国製パニック映画。中国映画界の豊富な資金力を象徴するかのように、明らかなB級テイストの物語に似つかわしくないレベルのCGのクオリティだった。EDをロール前に「困難は人を強くする。COVID-19と戦う人たちに捧げます」のメッセージが流れ、あたかも真面目な映画であったかのように装っているが、尺が90分強であることや、数々のツッコミどころが“あえて”を感じさせるものであることを考慮すれば、制作者は“分かって”やっているように思われる。いい意味で“大味”である。

あらすじ

天火島の大噴火から20年、島はテーマパーク化されたリゾート施設に生まれ変わりを遂げていた。20年前の噴火で妻を亡くしたタオ教授は噴火の予兆に気付き、島で火山の調査をする娘シャオモン(ハンナ・クィンリヴァン)に警告すべく島へと向かうものの、火山が噴火を始めてしまう。

感想

ジュラシック・パーク』が何度でも同じ保安上の失敗を繰り返すのと同様に、火山パークもまた“パニックに見舞われるためだけに存在する施設”である。B級映画らしい“いかにも”な、現実的にはありえないような危険な施設なのだが、これが中国が舞台となると、「中国ならやりそうだな……」という謎のリアリティが生じてしまうものだから不思議である。本作のように破滅させられることを前提とせず、噴火時にはちゃんとシェルターとして機能するようなBプラン付きで似たような施設を作って欲しいような気もする。噴火の様子を“内側”が眺められたなら、それは大いに金を取れる見せ物となることだろう。

そもそもの設定には“ツッコミ待ち”の潔さが全開な一作だが、その一方で、意外に人が死なないことが特徴である。最後に“どう考えても死んでいた人”が生きていたというご都合主義もさることながら、明らかに死ぬべきシチュエーションを難なく生き抜くようなシーンが散見される。たとえば、チュンナンとチアワイ(王柏安)の美男美女カップル。彼らがジャック・マイヨールよりも強靭な肺活量でもって水中でイチャつく“クソどうでもいいシーン”があるため、「こいつらは噴火の第一犠牲者として雑に殺される役に違いない」という確信に近い願望を抱くわけだが、これが意外にしぶとい。しぶといのはチアワイのヘアメイクも同様であり、水から上がると服もろともすぐに乾き、ウォータープルーフの化粧だけはなく髪のウェーブまでもが見事に維持されている。そのヒラヒラしたスカートも邪魔だろ。

他にも、ケーブルが切れたモノレールの車両がもの凄い勢いで落下するも、中に残っていたシャオモンたちは無傷。これでは並走する車両に飛び移ろうとして死んだ奴があまりに不憫である。これならチアワイの爺ちゃんも助けられたのではないか。

ただし、人が死ななければ“パニック映画”とは言い難い。中国人が驚異の生命力を発揮する一方で、リゾートの経営者である外国人ハリスだけはB級映画らしい雑な死に方を披露している。取り残された少女を救出するという格好いいシーンの直後の出来事だけに、コメディ映画で車に轢かれる演出のような唐突感が素敵だった。ちなみに、ハリスがパークの魅力を「東京でフグを食べるようなもの」と表現しているのだが、フグって海外の人からはそういう認識なのか。

ドローンが(それなりに)活躍する辺りが“最近の映画”という感じがするものの、降り注ぐ火山弾を巧みに避けれられるのは何か自動運転用のセンサーでも搭載されているのか。上から降ってくるものに対して備えるのは明らかに火山弾対策だろうに、どうしてこのドローン以外には噴火を想定した対策がとられていなかったのだろう。これでは直撃を受けたハリスが阿呆みたいではないか。

「困難は人を強くする」の原語が「What doesn't kill you makes you stronger」なのだが、『ダークナイト』の冒頭に登場する「I believe whatever doesn't kill you simply makes you ......stranger」はこの諺の捩りだったのか。