オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『バーチュオシティ』

Virtuosity, 105min

監督:ブレット・レナード 出演:デンゼル・ワシントンラッセル・クロウ

★★★

概要

逃げたAIを追う話。

短評

デンゼル・ワシントン主演のSFアクション映画。現役では文句なしに(恐らくは歴代を通じても)最も偉大な黒人俳優であり、“出ているだけで何とかなってしまう存在感”を誇る同氏だが、こういうダメ映画にも出ていたことを知ってなんだか逆に安心した。最近になって耳にすることの増えた設定が95年の時点で色々と登場する点には感心させられたものの、それがなくてもほとんど成立してしまう展開に終始している。CGのショボさは制作時期的に仕方がないかとも思ったが、『ターミネーター2』や『ジュラシック・パーク』が本作よりも先に制作されているのだから言い訳にはなるまい(それらが凄すぎるだけだが)。とは言え、“微笑ましいダメ映画”の範疇ではあったと思う。

あらすじ

仮想現実空間で警察官の訓練を行うため、複数の凶悪犯罪者の人格を競争させて統合したシド6.7(ラッセル・クロウ)が開発される。しかし、囚人を用いた実験中に死亡者が出てしまったため、プログラムは閉鎖。そこで、開発者ダリルは桃色AIシーラ3.2(ハイジ・シャンツ)を餌に使ってアンドロイド・ボディにシドの情報を移植し、彼を現実世界に解き放ってしまう。シド捕獲のために白羽の矢が立ったのが、元警官の囚人で実験に参加していたパーカー(デンゼル・ワシントン)。彼は「捕獲すれば釈放」という条件で捜査に協力することに。

感想

マトリックス』よりも前に「仮想現実」の世界を描き、シドのプラグラムは「機械学習」という形で近年よく耳にするにようになった「自立進化型」。加えて、シドのボディは最近流行りの「ナノマシン」である。当時から既にアイディアはあったのかと感心せずにはいられない。これらの組み合わせに「これはなかなか面白そうだぞ」と胸が高鳴るものの、残念ながら本作のピークは序盤の“設定紹介パート”である。

チャールズ・マンソンたちの人格を利用して進化を遂げたシドの“中身”だが、その中にはパーカーの仇敵であるグライムスが含まれている。そして、グライムス以外の人格は“いかにシドが怖ろしいのか”のアピールに使われるのみであって、話としては彼がそのまま登場しても成立するものでしかない。せっかく面白そうな設定を盛ってみた割には何の役にも立っていない。ナノマシン製のボディについても同様で、多少は自己修復するシーンがあるものの、それはショボいCGの映像でしかなく、やはりなくても成立するような話なのだった。

それでも結末の展開だけはちゃんと設定を利用していたし、上手く活かせていないとは言え無駄に期待感だけはある(そのせいで残念でもあるわけだが)。また、CGはチープでありながらも『インセプション』を先取りしたかのような演出も見られ、やはり“発想”だけは悪くないと思えるところもあった。

ドレッドヘアにヒゲ面の悪人として登場するも、捜査協力するといつもの姿に戻るデンゼル・ワシントン。つまらない役である。設定だけを聞いて面白そうな企画だと本作に飛びついてしまったことを反省したのだろう。ラッセル・クロウとの次の共演作となる『アメリカン・ギャングスター』で彼が複雑な背景を持つワルを演じきってみせたのは、きっと本作の影響からなのだ(違うと思う)。一方のラッセル・クロウだが、こちらは全裸でハッスルしていて楽しそうだった。