オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『アメリカン・ヴァルハラ』

American Valhara, 81min

監督:ジョシュ・ホーミアンドレアス・ニューマン 出演:イギー・ポップジョシュ・ホーミ

★★★

概要

イギー・ポップ(69)の新境地『Post Pop Depression』の制作風景。

短評

イギー・ポップドキュメンタリー映画。三十郎氏は彼について、『トレインスポッティング』で「Lust for Life」がアイコニックに使用されていたというくらいの知識しか有しておらず、実はイギリス人だと勘違いしていたくらいである。したがって、本作の内容や彼について語れるような資格はないと思うが、“特典映像レベル”としては普通に面白いドキュメンタリーだった。あの年で、あれだけのエネルギーが湧いてくるのは単純に凄いし、格好いい。

あらすじ

ストゥージズとしての活動を停止し、方向性を模索していたイギー・ポップ。彼はジョシュ・ホーミに白羽の矢を立て、更にジョシュがディーン・フェルティタとマット・ヘルダースの二人を集めてくる。かくして、新作アルバム『Post Pop Depression』の制作が開始する。

感想

三十郎氏が「Lust for Life」で興味を持ってイギー・ポップのアルバムを聞いた時に出会ったのが“謎のフランス語の歌”だったのだが、これは上述の“迷走期”に制作されたものであるらしい。本人曰く、「ファンに文句言われてムカついたけど、自分でも何か違うと思った」とのことである。確かに楽曲の雰囲気は彼のイメージから大きくかけ離れており、三十郎氏も「え……?」と戸惑ったことを思い出した。劇中で制作される曲にも若い頃ほどの勢いはないものの、シャンソンよりはずっと好きである。

イギーはジョシュを“勢いのある若手”として登用するのだが、ジョシュは40代半ばである。そのジョシュが“殻を破ってほしい奴”として呼び出したのが同じバンドで活動するディーンとアークティック・モンキーズのマット・ヘルダースで、後者も既に十分に売れているため、あまり“若手”という感じはしない。60代から見れば40代が、40代から見れば30代が、それぞれ“若手”だと思える──すなわち自分が“老いていない”と思える感性こそが、あのバイタリティの源泉なのだろうか。三十郎氏はマットと同世代なのだが、既に老け込んでしまった感がある。これからは20代後半の“若者”に対して「まだまだ青いな」と謎マウントを取るべきか。

「イギーが勝手に歌詞を変える」と文句を口にする“若手”ジョシュ。「俺はコソコソやるタイプだから」と笑う“大御所”イギー。ライブシーンに次ぐ本作のハイライトである。

“身体が衰える”というよりも“皮膚が弛んでいる”イギー・ポップ。それでも彼はステージで“脱ぐ”。これは凄いことである。ローリング・ストーンズもそうであるように、若者の音楽だったロックの担い手たちが今なおパワフルなのは大変に凄い。しかし、イギーは「若い頃からのファンがついてきてくれてる」と喜んでいたものの、聴衆の高齢化という問題についてはこの先考える必要があるのだろう。“おっさんの音楽”というダサさをどうするか。

三十郎氏は同世代ということもあってデビュー作以来のアークティック・モンキーズのファンなのだが、当初は“田舎のティーンエイジャー”みたいで親近感のあった彼らが、いつからか“いかにもロックスター”な風貌にファッションを変化させてしまった。調べてみると、本作に登場するジョシュ・ホーミと仕事するようになったのが3rdアルバム『Humbug』からで、どうやら彼の影響があるらしい。イギリスからアメリカに進出し、アレックスがリーゼントになったのはそういうわけだったのか。なんだか腑に落ちた。

POST POP DEPRESSION

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