オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『スーパーバッド 童貞ウォーズ』

Superbad, 113min

監督:グレッグ・モットーラ 出演:ジョナ・ヒルマイケル・セラ

★★★★

概要

お酒を買って、パーティーに行って、童貞を捨てよう。

短評

阿呆映画と青春映画の二つのバランスが最高なコメディ映画。“チンコの絵”や阿呆警官コンビ、そして「マクラビン」のようなバカバカしいネタでしっかりと笑わせてくれる一方で、主人公二人の関係が妙にしんみりとさせる一作である。ヤリたくて仕方がないし、頭の中はエロで一杯だけど、実際のセックスに対しては少々尻込みしているところがあるという童貞の描き方も絶妙だった。また、主人公二人以外のキャスティングも非常に魅力的であり、特にフォーゲル役クリストファー・ミンツ=プラッセの“ナード感”は、狙って出せるようなものではないと思う。あの締まりのない顔は一体何なのか。

あらすじ

高校卒業まで残り二ヶ月。セス(ジョナ・ヒル)とエバン(マイケル・セラ)の二人は、未だに童貞だった。しかし、高校卒業までに何とか童貞を捨てたいと願うセスにまたとないチャンスが到来する。いつもはフォーゲルを加えた冴えない男三人でばかりつるんでいたが、イケてる女子ジュールズ(エマ・ストーン。劇場映画デビュー作)からパーティーに招待されたのである。アルコールの調達を買って出たセスは、パーティーを成功させるヒーローとなってジュールズと一戦交えようとするのだが……。

感想

高校生時代の三十郎氏はセスたちと同じく日陰者軍団の一員だったので、パーティーのために大量のアルコールを調達する必要に駆られることはなかった(当時は少量であれば“ユルい”店は売ってくれた。今も大学生なら未成年でも問題なく買えるだろうし、年齢確認が厳しくなったと言ってもいい加減なものだと思うが)。しかし、アメリカのリア充界隈では事情が異なるらしく、なんとかしてアルコールを手に入れなければならないし、逆にそれができれば英雄となる。酒の力で女子に“失敗”させることだって可能である。ホームレスに金を渡して買わせたりと、他の映画でも様々な方法が描かれているが、本作に登場するのは“ニセID”。ここから話が動きはじめる。

セスはフォーゲルがニセIDを持っていると言っていたのでアルコール調達を買って出たわけだが、そのIDに記されていた名前が「マクラビン(ファーストネームなし)」。日本だとどんな名字が該当するのか分からないが、聞いたこともないような外国風の名前である。よく分からないが、この名前が出てくるだけで何故だか可笑しくなってくる。扱い方も上手いのだとは思うが、本当に絶妙なネーミングだった。兎にも角にも「マクラビン」である。

「酒の力でなんとかヤリたい」と願うセス。「酒なしでもなんかとできる」と思っているエバン。そして、酒を購入していると強盗に遭遇し、事件を調べに来た阿呆警官コンビ(セス・ローゲンビル・ヘイダー)に連れ回されることとなるフォーゲル。単純に笑えるのはフォーゲルたちのエピソードなのだが、進学を期に微妙なすれ違いは生じている親友二人の描写も上手かった。セスの「ヤリたい」という前のめりな姿勢がコンプレックスの裏返しだったり、一方のエバンも憧れのベッカ(マーサ・マックアイサック)が実際に迫ってくるとビビってしまう“紳士”だったり(紳士であろうとしてチャンスを逸したこと、ありますよね?)。エヴァンなんてイケメンなのに、二人とも実に“童貞”なのである。

そんな彼らの心地よい童貞時代、否、青春時代の終わりを告げるかのようなラストなのだが、これがほんのりビターでありながらも悲しくはない。本作の絶妙なバランス感を象徴しているかのようだった。結局二人は童貞を捨てられなかったが(フォーゲルは挿入を果たしたので脱童貞にカウントすべきなのか。それともイッてないので半分童貞か)、とても気持ちよく前に進むのである。散々チンコとかゲロとか生理の血とか下ネタばっかりやってたくせに、爽やかな青春映画かよ!コメディ映画の終盤にありがちな“いい話”パートが、これ程までに上手く機能している例を三十郎氏は他に知らない。バカ映画を観たはずなのに、なんだかすごく“いい映画”を観たかのような不思議な感覚だった。

映画冒頭にポルノ談義を交わしているセスとエバン。前者は素人派、後者はプロ派である。プロの作品ばかり見ていると素人ものが見たくなるし、逆もまた然りである。スカトロまでは必要ないが、セスの言う通り選択肢の幅は広い方がよい。ただし、劇中とEDロールに登場する彼の“絵”を見る限り、やはりセスは病気だと思う。

エバンが「男の勃起に女が喜ぶ世界に住みたい」と発言している。大賛成である。