オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『TENET テネット』2

Tenet, 150min

監督:クリストファー・ノーラン 出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン、ロバート・パティンソン

他:アカデミー賞視覚効果賞(アンドリュー・ジャクソン他)

★★★

概要

未来人から世界を救え。

感想

映画館で観た時以来の二度目の鑑賞(劇場鑑賞時の感想はこちら)。二度目ならば一度目よりも理解が深まって楽しめるに違いない──そんなことを考えて鑑賞スタートしたものの、すぐにそれが思い過ごし、否、思い上がりであると判明した。逆再生の元ネタも、虚時間の概念も、何の理解も助けてくれない。言ってしまえば、タイムラインの解説を把握しておいたところであまり意味はない。理解が深まったのは、ただ己の理解力の低さについてだけである。たとえるならば、ちょうど瀕死のキャットがニールの説明を受けて「理解できない」と苛ついた時くらいの理解力だろう。

流石に二度目なので、“ストーリー”は分かっている。また、主人公たちが“時系列のどの地点で、どちらの向きで行動しているのか”も分かっている。この二点を理解することが本作を楽しむための最低条件かと思うが、これ自体は言われている程に難解ではない。特に解説を読んだりせずとも、しっかり集中して映画を観れば一度でそれなりに理解できるだろう。少なくとも筋は通っているわけだから、隠喩とイメージを撒き散らす類の芸術映画よりは遥かに親切である。問題となるのは“ストーリー”というよりも、それが“映像”とどう結びついているのかである。

主人公が回転ドアをくぐって逆行モードに入ると、世界(あるいは逆行側から来た人)は、文字通り“逆の動き”をする。ノーラン作品なので撮影のスケールは圧倒的だし、巡行と逆行を組み合わせた映像も摩訶不思議で面白い。しかし、何が起きているのかを“理屈”では理解していても、“直感”では掴めないのである。「こいつが巡行、あいつは逆行」「今、あの時のアレがコレなのか」と“読み取る”ことができても、それが頭に、感覚的にスッと入ってこない。「何が起きているのか」という目で見ていることをそのまま“体験”として消化できない。劇場鑑賞時の感想には「映像的な面白さが物語に直結していなかった」と書いたが、これを「物語の理解が映像的な面白さに直結しない」と置き換えることができるかもしれない。根本の理屈を理解できていないことが原因なのかもしれないが、それが理解できるような映画にはなっていないだろう。

劇場で観た時には、考える暇すら与えない勢いの物語が、「考えるな、感じろ」の基本方針と合致しているように感じられた。しかし、落ち着いた状態で改めて観てみると、もっと焦点を絞った方がよかったのではないかという気がしてくる。「巡行と逆行の組み合わせが不思議で面白い」と「そこで何が起きているのかは(ギリギリ)分かる(ような分からないような……)」の一歩先に進むべきだったのは、果たして、観客と映画のどちらなのか。巡行人間と逆行人間が格闘するシーンのゴチャゴチャ感が象徴的かと思うが、ノーラン自身もこの複雑な設定を扱いきれていなかった印象は否めない。

残念ながら「繰り返し観ることでより楽しめる」とはならなかったが(そもそも自宅鑑賞がIMAXを上回るはずもない)、「何度でも繰り返し楽しめる映画」だとは感じられた。単純に“凄い”。これだけのスケールの大作というのはそうそう出会えるものではない。スリリングでありかつド迫力。これが楽しくないはずはない。なんならエリザベス・デビッキ様を眺めているだけでも楽しい。もし明日、他のアクション映画を観れば、本作と比較して随分とショボく感じられるに違いない。それくらいの作品である。これからも何度となく「次こそは違う感想が……」と挑んでは返り討ちに遭うことだろう。別にそれで構わない。それでも面白いことには違いない。

TENET テネット(字幕版)

TENET テネット(字幕版)

  • ジョン・デイビッド・ワシントン
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