オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『引き裂かれた女』

La Fille coupée en deux(The Girl Cut in Two), 114min

監督:クロード・シャブロル 出演:リュディヴィーヌ・サニエブノワ・マジメル

★★★

概要

作家と金持ちとお天気お姉さんの三角関係。

短評

スタンフォード・ホワイト殺人事件」という情痴殺人を元ネタにしたというフランス映画。他に『夢去りぬ』や『ラグタイム』としても映画化されているそうである。三人が三人とも好きになれないキャラクターではあるのだが、第一印象とは異なる性格が生み出す奇妙な関係性はとても面白かった。女性心理はよく分からないものの、寝取られ男の葛藤が可笑しかったり、一番のクソ野郎がしっかりと報いを受けていたりして、どことなくブラックユーモアを感じさせる一作だった。

あらすじ

普段は妻ドナと郊外に住んでいる作家のサン・ドニは、サイン会のために訪れたパリでガブリエル(リュディヴィーヌ・サニエ)という美しいお天気キャスターと出会う。ガブリエルは自分の母よりも年上のサン・ドニの誘いに応じ、関係を持つようになるのだが、サン・ドニは釣った魚に餌をやらないタイプの男だった。ショックで寝込むガブリエルを必死に元気づけようとするのが、かねてより彼女に熱烈に求愛してきた金持ちイケメンのポール。ガブリエルも遂に折れてポールとの結婚を決めるのだが……。

感想

ガブリエルはとっても美人である。サン・ドニとポールが彼女に惹かれる事情は誰にとっても分かりやすい。ジョニーがそうさせるのである。一方で、ガブリエルが初老に片足を突っ込んでいるサン・ドニにメロメロになる理由はよく分からないが、これが“有名人パワー”というやつなのか。アレがよっぽど良かったのか(片親で“父性”を求めたことが示唆されるがそれだけなのか。分からないから三十郎氏はモテないのか)。田舎に住んでいるのにパリに別邸を持っている時点で目的はバレバレなのだが、妻の方でもそれは先刻承知らしく、彼が相当に遊びなれていることが分かる(ガブリエルの母とも過去に関係していたらしい)。可愛いガブリエルをヤリ捨てするクソ野郎である。

ポールは「金ならあるぞ」「欲しいものは全て手に入れてきた」という傲慢さ全開の無能ボンボン野郎。こちらもクソ野郎である。彼に対して誰もが「なんといけ好かない奴だ」と嫌悪感を抱くことだろうが、サン・ドニがガブリエルをヤリ捨てした後に、彼が意外なまでの一途さを披露する。彼の“押してダメなら引いてみろ作戦”が分かりやすすぎるのも可笑しかったが、真の見せ場はその後だった。

足掛け一年、遂にガブリエルを口説き落とし、待望の瞬間を迎えたポール。しかし、彼女の“テクニック”があまりに凄すぎて、「誰に教わった」「知りたくない」とショックを受けるのである。もの凄いプレイボーイ風だったのに、これではまるで処女厨みたいである。その上、ガブリエルから「会員制クラブでサン・ドニの仲間に輪姦された」と告白されるものだから、彼の精神的寝取られ感は尋常ではない。また、ガブリエルの傷心につけ込んで籠絡したという事情も「本当にサン・ドニを忘れたら自分は必要でなくなる」という劣等感を生み出す。彼がダメダメなのは分かるが、その気持はよく分かる。自らの愚昧さを指摘されるかのような強烈な精神攻撃ある。

結局の所、サン・ドニがクソ野郎なのは自明として、一途さを見せたかに思われたポールもまたガブリエルを“手に入れる”ことに躍起になっているだけなのだった。そんな阿呆男二人に“引き裂かれた”ガブリエルだったが、二人から離れて“再生”したことが隠喩と言うには分かりやすすぎる形で最後に示される。「阿呆男にご用心」と話を締め括りたいところではあるのだが、果たして、彼女の人間性はどうなのか。

サン・ドニと初めて交わった後に「私は上手くないから……」と気にするような女にリュディヴィーヌ・サニエが全く見えないという欠点はあるものの、一応は“うぶ”なキャラクターなのだろう。相手が遊び人であることにも気付かず有名人に口説かれて舞い上がり、相手の求めるままに変態プレイも受け入れ、男に捨てられた寂しさを紛らわすために愛していない男との結婚を決める。本作では“引用好き”という形でその主体性の欠如が示唆されていたが、言ってしまえば幼稚なだけである。本作は、そんな彼女のある種の“成長譚”だったということになるのだろうか。しかし、その成長過程を男として受け入れられるかと言うと、たとえポールのダメ男ぶりを見せられた後であっても、これはなかなか心苦しいところである。

なお、会員制クラブでの行為については言葉による言及があるだけで、サン・ドニとの行為の際にもガブリエルのおっぱいは拝めない。フランス映画なのに!“孔雀プレイ”はセクシーだった。

ポールが冒頭からサン・ドニに対して強烈な敵愾心を燃やしているのだが、その理由はよく分からなかった。実は親子だという事情でもあるのではないかと思ったが、特にそういうこともなかった。

ポールの妹ジョゼフィーヌClémence Bretécher)が美人だった。