オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『スポーン』

Spawn, 98min

監督:マーク・A・Z・ディッペ 出演:マイケル・ジェイ・ホワイトジョン・レグイザモ

★★

概要

地獄の尖兵スポーン。

短評

ブレイド(1998)』よりも先(1997)に制作されていた黒人スーパーヒーロー映画。なんだよ、ブラックパンサー周回遅れじゃん。もっとも、本作の主人公を演じているのは確かに黒人男性だが、焼き殺された後に“黒焦げボディ”となって復活するという際どいブラックジョークのような内容である。『ヴェノム』よりも20年以上前に生体可変式スーツを表現したCGは上出来だったが、肝心の話の方がちっとも面白くなかった。冒頭に早口で設定を説明した甲斐もなく、終始「何やってんだ、こいつら?」感が否めなかった。

あらすじ

諜報機関A-6の優秀な工作員アル・シモンズ。しかし、魔王マレボルギアに目をつけられた彼は上司ウィン(マーティン・シーン)の裏切りに遭い、任務中に焼き殺されてしまう。最終戦争で地獄軍を率いることを条件にマレボルギアと契約し、“スポーン”として地上に舞い戻ったシモンズだったが、婚約者ワンダは既に元同僚テリーに寝取られてしまっていた。スポーンはウィンに復讐しようとするものの、その裏にはマレボルギアの手下クラウンによる陰謀が潜んでいた。

感想

肌が焼けただれてしまっているので顔は怖いスポーンだが、ゴツゴツして禍々しいダークヒーロー的なデザインは格好いい。悲惨な境遇を強調するためなのか普段は“顔出しスタイル(という名の黒焦げマスク着用)”だが、寄生生物式のスーツ“ネクロプラズミック・アーマー”がグニョグニョと動いて顔まで覆ってしまえば、普通にヒーローらしいヒーローである(ヴィランと言われても納得できるが)。ヒーローのビジュアルの格好よさという最低限の条件は満たしている。

黒を基調とするスーツだが、“マント”は血のように鮮やかな赤色であり、ダークで汚いトーンの画面に上手く変化をつけている。これは素敵である。また、スポーン単体では(魔力があるらしいもののあまり行使されないために)単調な戦闘シーンになってしまうのだが、これにもスーツが上手くアクセントをつけていた。この表現技法には『ヴェノム』も大きな影響を受けたのではないかと思ったのだが、そもそもどちらも原作者がトッド・マクファーレンで同じらしい。バイクごと包み込んで銃弾を受け止めたり、突っ込んくるトラックを待ち受けてドカンとやるシーンが面白かった。

それだけの好条件を揃えていながら映画が面白くならなかったのは、地獄規模の壮大なスケールでありかつゴチャゴチャとした話なのに、冷静に考えると展開が非常にミニマルでショボいものに収まってしまっているためだろう。魔王と取引して地獄的パワーを手に入れたスポーンだが、その復讐の対象であるウィンはあくまで一般人である。スポーンにウィンを殺させることで人類を滅ぼすというのがクラウンの仕掛けた陰謀だが、わざわざスポーンに殺させるべき理由は思い当たらず、物語に盛り上がりを与えてくれない。これでは世界観もよく見えてこない。

また、ヴァイオレーターと化したクラウンがスポーンに襲いかかってくるものの、これも「俺の方が先輩なのに、なんでスポーンが指揮官なの!」としょうもない内輪揉めをしているに過ぎない。ビギニングものにはありがちなことだが、ヒーロー誕生を描くことだけを目的としており、彼の“存在理由”とも言える“倒すべき敵”の存在が希薄なのだった。ただし、スポーンを「黒焦げちゃん」や「焼き肉(BBQ Friend)」と今では許されるのか不明な名前で呼び、蛆虫トッピングのピザを食べるクラウン自体は大変に個性的で強烈なキャラクターだった。