オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『俺たちステップ・ブラザース -義兄弟-』

Step Brothers, 97min

監督:アダム・マッケイ 出演:ウィル・フェレルジョン・C・ライリー

★★★

概要

(アラフォーの)連れ子付き再婚。

短評

数々の情けない男やダメ男を演じてきたウィル・フェレルだが、その中でも本作のダメっぷりは屈指かと思う。つまりは最高のはまり役である。その上、アラフォー無職のダメ男が彼一人だけではないという親にとっては地獄のような設定が悪魔的相乗効果を発揮し、素晴らしいカオスを生んでいる。定期的に摂取しておきたくなる阿呆なコメディ映画としては文句なしの出来栄えだった。

あらすじ

職場で出会って惹かれ合い、再婚することを決めたナンシーとロバートの熟年カップル。しかし、彼らにはそれぞれブレナン(ウィル・フェレル)とデール(ジョン・C・ライリー)というアラフォー無職の子供がいた。これまでのぬるま湯ライフが脅かされることを危惧し、二人は再婚と同居に大いに反発。互いにいがみ合う“子供たち”だったが、ブレナンがデールの宝物であるドラムに玉袋(無修正)で触れたことから、その決裂は決定的なものとなる。

感想

二人は正真正銘の“おっさん”だが、中身はクソガキそのものである。親の再婚に子供が反発するというのはよくある状況だが、それをおっさんが演じてみせると、ここまでグロテスクで可笑しな光景になるという意外性である。二人はアレな人でしかないし、老後の計画を台無しにされてしまうロバートも気の毒なのだが、傍目に見ている分には愉快で仕方がない。きっと世の大人になりきれないおっさんたちにも同じようなところがあるのではないかと思うが、笑って済ませられるのは映画の中だけである。

初めは対立していた二人だが、ブレナンの弟デレクについて意見の一致を見せ、急速に仲良くなる。二人とも中身は子供なので、趣味や好みも似ているのである(エロ本の趣味も似ている。抜ける非成人誌は『良妻賢母』)。ただし、ケンカしていても大人気なくて迷惑だが、仲が良くてもそれはそれで幼稚というどうしようもなさ(二段ベッドの件の阿呆さと言ったらない)。二人が楽しそうにしている程に、ロバートの気苦労も増えるという悲しき矛盾である。

どうあってもダメでしかないおっさん二人だが、本作はそんな彼らの姿を批判するばかりではない。「いい加減にしてくれ」と(至極真っ当に)怒るロバートと「それでも私たちの子供よ」と優しすぎるナンシーの間に溝が生じて離婚し、親友となった二人も引き裂かれる。二人は仕方なく働き始めるのだが、「独立できてめでたしめでたし」とはならないのである。

意外なことにちゃんと仕事をする二人だったが、ロバートは彼らが“自分らしさ”を失っていることに気付く。「こんなつまらない普通の人間じゃなかっただろ」と。世間は“大人になる”ということを無条件に肯定しがちだが、それが子供の頃に思い描いた自分である人はきっと少なかろう。随分とつまらない人間になったと嘆く人もいれば、逆にそのつまらなさが大人になるということだと誇る人もいるかもしれない。散々バカにしてきたダメ男二人を通じてそんな“大人”の姿を見せるというのは、なんとも皮肉が効いていて面白かった。なお、“自分”を取り戻した二人の姿は最高にしょうもないので、そこはコメディとして安心感がある。

二人が“幼稚”であること以外に、“子供らしい”エピソードも笑えた。(タキシード着用で挑んだ)面接の帰り道、デールが「この道は苦手な奴がいるから通りたくない」と言い出す。完全にいじめられっ子のそれである。それでもブレナンに促されて通るのだが、そこに待っていたいじめっ子。「こんなの子供だろ」という言葉とは裏腹にボコボコにされるおっさんたちが惨めで愉快だった。ちなみに、ブレナンはカビが生えて白くなった犬の糞を舐めさせられる。アメリカのイジメはえげつない。