オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ロード・オブ・セイラム』

The Lords of Salem, 100min

監督:ロブ・ゾンビ 出演:シェリ・ムーン・ゾンビ、メグ・フォスター

★★★

概要

セイラムの魔女。

短評

「『マーダー・ライド・ショー』の頃はあんなにピチピチで可愛かったのに……」と、同作から10年も経っていないのにシェリ・ムーン・ゾンビの変化が時の流れを感じさせるロブ・ゾンビ監督作。話としては『へレディタリー』に似ていて好きだったのだが、どういうわけだかまるで怖くはなかった。ロブ・ゾンビ特有の“ゴチャゴチャ感”が抑えられているのが物足りないにも関わらず(最もグロい描写が“魔女のシワシワ裸体”という弱さ)、隠し切れないそれが静謐なトーンを妨害しているという相性の悪さ故なのか。

あらすじ

「ビッグHチーム」というラジオのDJを務めるハイジ(シェリ・ムーン・ゾンビ)の元に一枚のレコードが送られてくる。しかし、「ザ・ロード」と名乗るバンドから届いた奇怪な音楽を聞いて以来、ハイジの周囲で不可思議な現象が起こり始める。ラジオにゲスト出演した魔女博物館の職員フランシスが気になって調べてみると、それは1696年に悪魔を降臨させようとして火刑に処せられた魔女たちが関係していた。

感想

ロブ・ゾンビは「悪趣味」を信条としているのかと思っていたが、どうやらホラー映画全般がお好きなようである。デビュー作『マーダー・ライド・ショー』とは異なり、本作には“オカルトもの”としてのちゃんとしたストーリーがあった。“魔女の勝利”を描くという事自体が、キリスト教社会のアメリカで制作される映画としてはやはり新鮮である。既述の通り『へレディタリー』に似ているということもあり、その内容自体は面白いのだが、改善すべき点がいくつもあった印象だろうか。

本作は冒頭で“魔女の儀式”を見せておいて、その後、そこで用いられた音楽が主人公の元に届く。音楽を起点として二つの時代が繋がる展開である。「音楽」を物語の軸とした点がミュージシャン出身のゾンビらしさを感じさせるが、ハイジはデスメタル好きのヤク中だし、彼女と同じアパートに住む老婆たちは明らかに怪しげで、“日常に潜む悪魔信仰”を上手く演出できていなかったように思う。“平常時”があまりにロブ・ゾンビ的なのである。これは“いかにも魔女がいそうな世界”の演出としては正解なのかもしれないが(セイラムが舞台だし)、恐怖を感じさせるための“抑揚”という意味では失敗で、謎解き要素も入れた割には話が一本調子となってしまっていた。

観客の興味をつなぐためのドラッグ映画的な映像や不気味な廊下の映し方は光るものを感じさせるのだが、安っぽい悪魔的怪物と「ドーンッ!」の音の組み合わせが相殺していしまい、これも恐怖を減じさせる原因となっている。アート路線でいいはずなのに、下手にB級ホラー映画の定番演出を入れてしまうのは何故なのだろう。技術力の問題なのか、悪魔の造形も酷い。なんだか色々と「惜しいなあ」と感じさせる点が多かった。

老婆から太ったおばちゃんまで見苦しい裸体が数多く登場する一作ではあるものの、ラジオで流れる音楽に反応する女たちの中に見事なおっぱいの持ち主がいた。また、シェリ・ムーン・ゾンビにも往時の輝きはないものの、自慢のプリケツを見せびらかしている。本当に「見せびらかす」という表現が的確だとしか思えない必然性皆無の尻出し演出なので、彼女は自分の尻に余程の自信があるのだと思う。あるいは夫が自慢したいのか。

悪魔的な人たちが集団で着衣のまま股間を擦るシーンがあるのだが、ボカシがかかっていたのが残念だった。それがなければ最高にシュールな画になっていたと思う。