オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『トゥモロー・ウォー』

The Tomorrow War, 138min

監督:クリス・マッケイ 出演:クリス・プラットイヴォンヌ・ストラホフスキー

★★★

概要

30年後の未来の戦争に参加する話。

短評

Amazon OriginalのSFアクション映画。元々はパラマウントが劇場配給を予定したのがコロナ禍で流れ、アマゾンに配信権を売却という流れらしい。そういう事情の作品というだけあって、配信映画らしからぬ高額の予算が費やされた迫力ある一作だった。その一方で、ストーリーについてはB級映画並のガバガバ感であり、映画館でお金を払って観なくてよかったと思う。一応はタイムトラベルを扱っている話なのだが、タイムパラドックス等について考えるのがバカらしく思えるくらいにはガバガバである。

あらすじ

温暖化の影響でワールドカップが冬に開催されている2022年のクリスマス。試合中のピッチ上に突如として「2051年から来た」という兵士たちが出現する。曰く、30年後の未来で人類はエイリアンとの戦争に劣勢であり、助けが必要なのだと。未来の人類を救うために民間人の徴兵が始まるのだが、その中に元軍人で現高校教師のダン(クリス・プラット)の姿もあった。まともな訓練も受けず、敵の情報も与えられることなく送り込まれた未来の世界には、とある意外な人物が待ち受けていた。

感想

2022年に予定されているカタールW杯が冬季開催なのは温暖化の影響というわけではないと思うが(ついでに言うとクリスマスまでには終わっている)、本作はタイムトラベル映画なので、パラレルな別世界線ということにしておこう。本作にそんな細かいことをいちいち気にしていられるような余裕はない。圧倒的な迫力とスリルで息をつく暇もないわけではなく、単純にツッコむのが追いつかない。「対策もなく素人を送り込んでも何の役にも立たないだろう」とか「タイムトラベルが可能なのに武器が全く進化してない」とか、考えるだけ無駄である。

ダンを待ち受けていたのは、成長した娘ミューリ(イヴォンヌ・ストラホフスキー)である。彼女が「時期が来たら話す」「あなたには生きていてもらう必要がある(その割に死にそうな任務を課す)」と意味ありげに誤魔化すので、きっと全ての疑問が氷解するような展開が待っているものと期待するわけだが、これも新たなツッコミどころを増やすだけである。ミューリ曰く、「エイリアンに効く毒を持ち帰って未来を変えて欲しい」「信用できるのは父だから」とのことだが、未来を変えることについてのタイムパラドックス的検討は一切ないし、そんな全人類規模の重要な仕事を「父だから」の一言で片付けてもらっては困る。

「俺はお前を救うぞ!」と父親らしく振る舞うも、制限時間が来たので現代へと強制送還されるダン。ここで彼が至極真っ当な意見を口にする。曰く、「現代で毒を大量生産して未来に送り込もう!」と。どうしてミューリはこの方法を思いつかなかったのか。MITで生物化学のPh.Dを取得したという才女なのに。おまけに軍を指揮する大佐なのに。しかし、ここでミューリの無能ぶりを隠すかの如く、都合よく「タイムトラベル装置が壊れちゃった」と未来人が言い出すのである。なんでやねん!

大人ミューリを救うことに失敗し、子供ミューリ(ライアン・キーラ・アームストロング)の未来を救う方向に舵を切ったダン。エイリアン襲撃の未来がなければ……というタイムパラドックスは考えないことにする。それ以上の特大のツッコミどころが待ち受けているのが本作の魅力である。

不仲だった父(J・K・シモンズ)の力を借り、エイリアンが冷凍保存されているロシアの氷河にやって来たダン。ここで件の毒を使用してエイリアンを解凍前に殲滅しようとするのだが、その前にエイリアンが目覚めて暴れ出す。そこで仲間の一人が自爆攻撃をするのだが、これだと毒は必要なかったのでは……?一体だけ逃げたメスを毒を使って始末していたが、目覚める前に宇宙船を爆破していればその必要すらなかったのでは?もう何だったの、この話?

「こんな時代だからこそ科学を学べ」という言葉や「科学の力で世界を救うぜ!」というノリに、取って付けたような“コロナ禍映画”感があるのだが、再撮影でこの設定を盛ったためにガバガバになったという事情があったりはしないだろうか。

エイリアンの“ホワイトスパイク”。登場時の印象は、ロドリゴ・アラガォンの『チュパカブラ』が凶悪化したバージョンである。棘を発射できる触手があったり、体の構造は全く異なるのだが、顔がチュパカブラ的だった。奴らの弱点は“ノドと腹”とのことだが、より的の広い腹に被弾する場面はほぼなかった。その代わりに的の小さなノドを狙い撃つという非効率な攻撃ばかりが見られるのだが、当たると頭部が弾け飛んで爽快だった。

ダンの妻(ベティ・ギルピン)が美人だったが、彼女にも申し訳程度の功績を与えるため、頭脳と筋肉の二つの武器でエイリアンに立ち向かっているはずのダンが阿呆化されるダメ演出が見られた。

トゥモロー・ウォー

トゥモロー・ウォー

  • クリス・プラット
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