オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『マーダー・ライド・ショー』

House of 1000 Corpses, 88min

監督:ロブ・ゾンビ 出演:シド・ヘイグ、ビル・モーズリィ

★★★

概要

恐怖の殺人屋敷。

短評

ロブ・ゾンビの映画監督デビュー作。自分の好きなものを詰め込めるだけ詰め込んだと思われるゲテモノ系ホラー映画である。もっとも、ホラーとして怖いところは全くないと言ってもよく、「愉快」の境地に達したエログロの悪趣味さを楽しむべき一作かと思う。これは創意工夫に満ちた特殊ジャンルの芸術なのだろう。お化け屋敷が舞台のリアルお化け屋敷映画ではなかったが、“見世物小屋”的な意味でのお化け屋敷映画っぽさがある。

あらすじ

田舎道を走っている途中にガス欠を起こしてしまったビル、ジェリー、デニース(エリン・ダニエルズ)、メアリー(ジェニファー・ジョスティン)の四人組。フライドチキンとガソリンが名物だという“キャプテン・スポールディングの館”を発見し、給油ついでに“殺人ライド”というショーを(ジェリー一人が)楽しむ。四人はそこで知ったドクター・サタンが吊るされたという木のある場所に向かうのだが、大雨の中パンクして立ち往生。とりあえずヒッチハイカー(シェリ・ムーン・ゾンビ)の家でパンクが直るまで待機させてもらうものの……。

感想

ストーリーは非常にオーソドックスである。若者たちが田舎のヤバい家でヤバい奴らに出会って怖ろしい体験をする。本編開始前に強盗を殺害するインパクト抜群なピエロのスポールディング(シド・ヘイグ)が主人公に危害を与えないという強烈な肩透かしはあるが、展開自体は“往年のホラー映画”をなぞったものと言えるだろう。

しかし、本作は決して“普通のホラー映画”ではない。『ウィルフェンシュタイン博士の怪物ショー』という「ホラー映画」という呼称が定着する前の「怪奇映画」的スタイルで幕を開けたかと思えば、意味があるのかないのか分からないエクスプロイテーション映画的映像が随時挿入され、有り体に言えば意味不明な感じになっている。そこにケラケラと笑いながら愉快に繰り広げられるファイアフライ一家の凶行が乗っかって、“笑うしかないホラー映画”という謎の物体が完成するのである。恐らくは各種オマージュの塊なのだろうが、それが分からない三十郎氏のような観客にとっては、「これ作ってる時めっちゃ楽しかっただろうな」というホラー映画らしからぬ制作現場の喜びが伝わってくる出来だった。

通常の意味での“主人公”はデニースになるのではないかと思うが、殺人鬼サイドにばかりフォーカスされているため、彼女の存在感は非常に希薄である。彼女が助かるかどうかを気に掛ける観客の割合は1%に満たないのではないだろうか。最後も敵がよく分からない感じで自滅して助かったかと思えば、割と雑に「やっぱり助かりませんでした」されていた。

デニースの代わりに強烈な魅力を放っているのが、ベイビー・ファイアフライ。演者は監督ロブ・ゾンビの妻である。完全にキチガイで怖いはずなのだが、正直に言って可愛い。そんな彼女がとっても楽しそうにしているものだから、こちらも被害者に感情移入できずに楽しくなってくるのである。彼女が“尻出しジーンズ”を履いているシーンがあり、是非とも流行させてほしいと思ったのだが、あれはよほどのプリケツでないと成立しないか。肌が汚くてもいけないし。