オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』

Zack Snyder's Justice League, 242min

監督:ザック・スナイダー 出演:ベン・アフレックヘンリー・カヴィル

★★★★

概要

故スーパーマンさんを偲ぶ会。

短評

紆余曲折を経て遂に公開された“真ジャスティス・リーグ”。単独作品が少ないので紹介パートに時間を割いた割にはスーパーマンが美味しいところを全部持っていくという物語の根本的欠陥が解決されているわけではないものの、最初から“特別編”だと認識できていることで割り切って楽しめた。彩度を落としたダークな映像トーン、体感ではアクションシーンの半分を占めているのではないかと感じられるスローモーション。いかにもザック・スナイダーの映画である。

あらすじ

スーパーマンヘンリー・カヴィル)が失われた世界。新たな敵の襲来に備えてブルース・ウェインベン・アフレック)がアクアマン(ジェイソン・モモア)のスカウトに失敗し、ワンダーウーマンガル・ガドット)が反動主義者のテロを防ぎ、ロイス・レインエイミー・アダムス)は出社拒否してニート生活を送っていた。そんな中、アマゾンたちがセミッシラの神殿で保管していたマザーボックスを奪おうとステッペンウルフが出現。彼はアトランティスと人間の保管する残り二つのマザーボックスを手に入れて地球を侵略しようとするのだった。

感想

劇場公開なんてされていないのにIMAX仕様の縦長アスペクト比で配信してしまったことまで含めて自己満足の極みなのだが(テレビで観ると画面が小さくなって逆効果でしかない)、その好き放題な暴走ぶりが逆に“ファンのための映画”という感じがして嬉しかった。三十郎氏はこの路線のDCEUの方がMCUと差別化されていて好きなのである。そもそもスーパーヒーローものというジャンルそのものが、基本的な子供向けでしかないのだから、阿呆な話を最高に格好いい映像で誤魔化すスナイダー方式こそが正解なのだ。4時間強という長過ぎるはずの時間も特に苦とはならなかった。ただし、最初からこのバージョンなら間違いなく文句を言っていると思う。

上映時間が倍に膨らんだだけのことはあり、新キャラ(アクアマン、フラッシュ、サイボーグ)の紹介パートも長くなっている。その中でも特に強くフォーカスされ、最も活躍シーンが増えているのがサイボーグである。スナイダーカット公開前に演者レイ・フィッシャーとジョス・ウェスドンとの対立報道がやたらと流されたのは、他と比べて知名度の低い役者による単独作品制作に向けたプロレスだったか。

ジャスティス・リーグではあまり目立たなかった印象のサイボーグだが、本作では“強化版アイアンマン”といった趣で獅子奮迅の大活躍だった。スーパーマン復活もステッペンウルフ撃退も、彼がいなくては成立しない。ただし、人間時代のアメフトでのプレーはエゴイズムが過ぎるし、貧民救済も大局観に欠けると思う。彼の父が「全世界の核も発射できる」と言い出した時にはどんなマッドサイエンティストだと思ったが、父が仕込んだ機能ではなかった。それはそれでどうやって機能を調べたのかという疑問は残る。父が機能説明するシーンではボイスレコーダーソニーロゴが、ブルースがヒゲを剃るシーンではジレットの青とオレンジが強烈に主張している。

ジャスティス・リーグの面々に加え、ヴィランであるステッペンウルフ側の紹介も詳しくなっている。彼の背後にはダークサイドというボスがいて、エピローグと併せて考えるに、どうやらこいつが地球にやって来てロイスが死ぬと『BvS』に出てきた悪いスーパーマンが発動してしまうという流れらしい。三十郎氏はこのステッペンウルフの魅力の無さがジャスティス・リーグ失敗の大きな原因の一つだと考えている。本作ではデザインがトゲトゲしくリニューアルされ、行動の背景も描かれているのだが、その感想が変わることはなかった。思うに、ヴィランには“人間性”が必要なのではないか。言わずと知れたジョーカーは役者の演技が強く反映され、『インフィニティ・ウォー』のサノスも割とジョシュ・ブローリンである。ステッペンウルフのように加工音声と怪物的容貌の組み合わせだと、ゲームのボスキャラのような“倒されるために存在している感”が出てしまうのだ。

イキリ倒す中間管理職だったくせに復活したスーパーマンに無残にボコられるステッペンウルフ。この時、さっきまで苦戦していたはずのワンダーウーマンとアクアマンも参戦して死体蹴りするのだが、リンチされているみたいで気の毒だった。スーパーマンがダークスーツを新調したせいもあって“悪い方”に見えなくもない。また、当該の二人も虎の威を借る狐みたいで格好悪かった。所詮は噛ませ犬のくせに。「島に残ってたら仲間を死なせずに済んだのにね」と正論を言われて逆ギレするワンダーウーマンが恥ずかしかった。ビジュアルは圧勝の二人なのに。特に拉致された科学者捜索時に着地姿勢でハミ出したお尻が最高に素敵だった。

「スーパーマンが全部解決!」という問題点を改善するため、ステッペンウルフがボコられている影でフラッシュがやらかしてダークサイドの扉が開き、やらかしたフラッシュが時間を巻き戻して解決という(何が起きているのかよく分からない)自作自演的展開が用意されている。ここでダークサイドがチキって暢気に突っ立っているだけなのだが、続編の製作予定がないならば、いっそのことダークサイド陣営との全面対決にしてもよかったのではないか。それくらいしないとスーパーマンが強さを持て余してしまうし、アマゾンやアトランティス陣営の生き残りがサボっているだけになってしまうのだが、流石に追加撮影の予算が足りなかったか。ファンを弄んだ責任を取って何とか続編を実現させて欲しいものである。

ハッキング能力で大活躍のサイボーグ、充電するためにひたすら走るフラッシュ(自ら進んで加入するとこのように立場が弱くなる。他メンバーのように一度は渋るポーズを見せておくべき)、噛ませ犬ではあるがステッペンウルフに立ち向かうワンダーウーマンとアクアマン。誰か一人忘れている。そう、バットマンである。主役である。彼はチームの旗振り役としてや“雑魚刈り”で貢献するものの、人外たちとの戦いは少々荷が重い。寝起きでご機嫌斜めなスーパーマンを止めようと他の四人が立ち向かっている時も、バットマンだけは傍観を決め込んでいる。その上、いざ襲われそうになると他の四人に必死で守ってもらう姿が非常に情けなかった。なお、スーパーマンはロイスが現れるなり改心するのだが、ダイアナは女として敗北感を覚えただろうか。

エピローグにはジョーカーまで登場する大サービス。他にも複数のヒーローやヴィランが出てくるのだが、(寝起きの)ブルースの前に「私も力を貸そう」と現れるヴィランにしか見えないヒーローに「マーシャン・マンハンターだ」と言われても「誰?」としか反応できず、今ひとつ盛り上がれなかった。悪いスーパーマン世界線ではアクアマンが死んでいるらしく、メラ(アンバー・ハード)が参戦している。彼女の赤毛もスナイダー仕様で色味が抑えられているのだが、三十郎氏はこのバージョンの方が『アクアマン』の極彩色よりもリアル寄りで好みである。

MCUのインフィニティ・ストーンにせよ、DCEUのマザーボックスにせよ、ヒーロー映画は“謎の力を持つ立方体”がお好きである。本作の“かつて複数の種属が力を合わせて戦い、箱を一つずつ保管することにした”という設定が多分に『LOTR』のパロディ的なのだが、その保管方法が面白い。アマゾンとアトランティスがそれぞれ神殿的な場所に収めたのに対し、人間は森に埋めるという雑さを見せている。その後の顛末が雑に語られたところによると掘り出されてしまったようだが、意外にこれが最も見つかりにくかったりするのか。もっと深く埋めていれば……。アトランティスではクラーケンが守っていそうな描写があったのにどうなった。

ワンダーウーマン』を観た時にも感じたのだが、アマゾンは戦闘民族のくせに戦略に難があるとしか思えない。異次元からワープしてきた相手を物理的に閉じ込めても無意味だろう。島に引きこもって訓練ばかりで実戦から離れているのが原因ではないか。ダイアナの真実の縄よりもステッペンウルフの自白デバイスの方が便利そうだったし、兵器開発にも影響が出ている。ただし、“マザーボックス・リレー”は格好よくて好きである。

アクアマンが飲み干したウィスキーの瓶を投げ割るシーンがある。母なる海にゴミを捨てるなよ。サイボーグも父の墓の前に服を脱ぎ捨ててそのままにするなよ。

ロイスの引き出しに妊娠検査薬がある。果たして、地球人とクリプトン人の染色体の数は同じなのか。

DMMの500円クーポンを利用した。期限前に終わったり、予告なく付与されていたりするので、定期的にチェックするのを忘れないように気をつけたい。対象作品に早々に配信開始となっている『ノマドランド』があったので一択かと思われたが、本作を見つけて思わず飛びついた。同作はその内にプライムビデオ入りしそうな気がする。してくれ。