オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『欲しがる女』

Irréprochable(Faultless), 99min

監督:セバスチャン・マルニエ 出演:マリナ・フォイス、ジョセフィーヌ・ジャピ

★★★★

概要

恐怖のストーカーおばさん。

短評

フランス製のエロサス……にはカテゴライズできない一作。昨日の『わがままなヴァカンス』以上にエロ方面では期待はずれ以外の何物でもなかったものの、その落胆を大きく上回る面白さだった。とにかく主人公のイカれっぷりである。最初は勘違いの痛々しいおばさんという程度なのだが、彼女が暴走を始めると「なんだこのおばさん……」と大いに戸惑い、最終的には怖ろしいはずなのに逆に笑えてくる。三十郎氏はこの種の意味不明さが好きである。

あらすじ

住んでいた部屋から追い出され、母の介護という名目で故郷に戻ってきたコンスタンス(マリナ・フォイス)。アラフォーである。しかし、当てにしていた前の職場からは復職を断られ、元同僚かつ元恋人のフィリップに泣きつくも就職の望み薄。困った彼女が元職場の前で待機していると、自分と同じ日に面接を受けていた若く美しいオドレイ(ジョセフィーヌ・ジャピ)が採用されていたことを知る。思わずオドレイを自宅まで尾行したコンスタンスだったが、それが恐怖のストーキング生活の始まりであった。

感想

就職を断られた職場の前に居座る時点で異常だし、オドレイを尾行した時点で超異常なのだが、意外にも“まとも”な形でオドレイを追い払おうとするコンスタンス。まずは客として彼女に接近し、偶然を装ってスポーツジムで再会して親しい関係に。ロシアに恋人がいると分かれば「恋を大事にしなさい」と遠回しに仕事を辞めさせようとし、それでもダメなら「こんな田舎で人生終わらせちゃダメよ」とこれまた遠回しな方法を試す。勝手にスケジュールを弄ったり、バイクのオイルタンクに異物混入する強硬路線も試みるが、いかにもヤバそうな割には“親身路線”である。

しかし、次第にコンスタンスの変人ぶりが浮き彫りとなっていく。彼女が「上司にセクハラされて……」とパリを離れた理由を説明した時点でウソがバレバレだったのだが、それだけではなく、出てくる、出てくる。気狂いエピソードの数々である、弁護士にすぐバレるウソをつくシーンも笑ったが、面会相手が母親ではないと判明した時の恐怖と笑いの絶妙なミックスと言ったら!

そんな変人コンスタンスにオドレイが無防備に心を開いてしまうものだから、三十郎氏は彼女のために恐怖すべきなのかコンスタンスの“分かりやすさ”を笑うべきなのか分からない。感情面では完全にソシオパスなのに行動はただの阿呆というのが、怖くて滑稽なのである。どう形容したものか分からぬ感情を味あわせてくれる素晴らしきモンスターぶりだった。主演マリナ・フォイスの怪演に拍手。最高に関わり合いになりたくない。

劇中にも激しいトレーニングのシーンがあり、新卒で若いオドレイを上回る身体能力を披露するコンスタンス。その成果もあって確かに身体は引き締まっているものの、顔には年相応のシワが刻まれ、髪の毛にもツヤがない。このストイックなまでのトレーニングは、「まだいける」という中年にありがちな勘違いをさせるものであり、同時にその勘違いをしたいがために彼女はトレーニングに励んでいるようにも見える。三十郎氏も風呂上がりに情けない思いをするのが嫌で体型には気を使っているが、大人しく中年体型を受け容れるべきであるような気さえしてきた。この若さへの執着は、時計という時の流れを象徴するものを破壊したり、部屋がカビ臭いと指摘されても外気と日光を遮るという自意識の閉鎖性でも表現されている。

映画が始まって最初に画面に映ったのが中年女性だったため、桃色方面へ期待するのはやめにしたが、一応コンスタンスの激しい濡れ場がある。身体は引き締まっているが、野獣的喘ぎ声がいかにも中年であり、あまり嬉しいものではなかった。ちなみに、乳首がやたらと逞しかった。三十郎氏はコンスタンスよりも「ミニスカ美人新卒不動産営業」というそそる設定のオドレイのおっぱいが見たくて仕方なかったのだが(めっちゃ可愛い。あれは契約取れる。誰だっておばさんより採用したがる)、彼女はセクシーなスポーツウェアで楽しませてくれるくらいだった。彼女とよろしくやったフィリップが羨ましい。トイレの後に手を洗わないくらい構わない!

コンスタンスは偽名でオドレイに接近している。二人が飲みに行った時に「これからフィリップが来る」という大ピンチを迎えるのだが、その先の展開が見られなかったのは残念だった。どう対応するのか見ものだったのに。普通に逃げたのか。

欲しがる女(字幕版)

欲しがる女(字幕版)

  • マリーナ・フォアス
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