オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『わがままなヴァカンス 裸の女神』

Une fille facile(An Easy Girl), 92min

監督:レベッカ・ズロトヴスキ 出演:ミナ・ファリド、ザヒア・ドゥハール

★★★

概要

16才の田舎JKと22才の都会従姉妹。

短評

期待していた程は桃色でなかったフランス映画。女性監督(『プラネタリウム』の人)の作品と知って納得である。ベンゼマやリベリに未成年売春したことで有名な元高給コールガールのザヒアが出演している。劇中で「若いのに整形しすぎじゃない?」と揶揄されているように、彼女のバービー人形的な“作り物感”は三十郎氏の好みではないのだが(信じられないが世の中にはシリコンパイ至上主義者も存在するらしい)、あまりエロくないことで却ってボンヤリ眺めていられるという予想外の楽しみ方ができてしまった。

あらすじ

16才の夏を迎えたネイマ(ミナ・ファリド)。普段はパリに住んでいる22才の従姉妹ソフィア(ザヒア・ドゥハール)も帰省するのだが、彼女の様子はすっかり変わっていた。高級バッグを持ち歩き、クラブのVIP席に座る男たちに誘われるソフィアと過ごす夏はネイマにとってとても刺激的で、彼女も次第にその影響を受けるようになる。

感想

「人生で最も重要なのは職業選択だ。ただし、それは偶然で決まる」というパスカルの引用から始まる一作。ソフィアの、ネイマの、そして金持ち男たちの生き方も、基本的には運で決まるということなのか。話の大筋としては、「愛人系従姉妹の刺激的な生活に影響されちゃったけど、やっぱり私には合わなかったわ」という少しの苦味を残す青春映画的展開なのだが、特にソフィアの生き方を否定しているわけではなさそうなのが特徴的である。

物語の終盤、ネイマたちはソフィアの“恋人”アンドレから美術品を盗んだとして追い出されてしまうのだが、「盗んでないことを証明しよう!」と憤るネイマに対し、ソフィアはあまり意に介することなく去っていく。恐らくは彼女にとって初めての出来事ではなく、別れを含めて先刻承知の関係だったのだろう。彼女は金持ち男に一時的な快楽を提供し、その対価として贅沢な暮らしを得る。そこには一抹の虚しさが漂うものの、堅実路線の人生を歩むことに決めたネイマはその“思い出”を大切にしている。誰もが惹かれてしまうその危うい魅力に満ちた世界が、全て後悔で括られるわけではない。

ソフィアの影響下にあったネイマが一度は拒否した料理人の仕事を選んだように、ソフィアもまた自身の生まれ持った能力を活かした、あるいは自身の境遇で選びうる中から最も有利な仕事を選択しているに過ぎない。彼女の愛人稼業を倫理的に否定したくなる人も多いだろうが(ディナーの席でのウェイターたちの冷めた視線に象徴される)、本人が納得しているなら部外者が口出しするようなことではないのである。金持ち男たちに合わせて背伸びした教養を披露するソフィアに対しておばさんが茶々を入れる場面が少し痛快だったりするのだが、あれだって一種の嫉妬の発露と言えるだろう。

愛人系の仕事をしている女性がそのきらびやかな生活を他者に見せびらかす場合、単純に承認欲求を満たす以外に、女衒として標的を誘い込む目的があったりする。ソフィアがネイマに高級なプレゼントを送った目的は、果たして何だったのだろう。彼女は確かにネイマと行動を共にしていたが、未成年の従姉妹を業界に誘うような素振りは見せていなかった。純粋な善意なのか、後ろめたさから来る善意なのか。それとも別の何かなのか。

ソフィアが周囲に見せびらかすように脱ぎまくる割には桃色感が薄いものの、汗ばんだ彼女の肌にクローズアップしたショットはフェティッシュで素敵だった(きっとおっぱいのシリコン感が気にならないからである)。未成年売春で話題となったザヒアが自己言及的な役で出演しているというのも大したものだと思うのだが、その後、彼女は自身のランジェリーブランドを立ち上げたりして逞しく生きているらしく、「この後は会ってないけどロンドンで幸せに暮らしているらしい」という結末と重なる。彼女がソフィア・ローレン風のメイクをした時は確かに似ていると思った。

「イタリアの近さに驚いた」という言葉が印象的だった。ネイマが知らかなっただけですぐ近くに存在していたもの──正にソフィアや金持ち男たちの別世界的生活のことだろう。