オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ホワイトアウト』

Whiteout, 100min

監督:ドミニク・セナ 出演:ケイト・ベッキンセールガブリエル・マクト

★★★

概要

南極殺人事件。

短評

南極が舞台のミステリー映画。織田裕二は出てこない。『ソードフィッシュ』のドミニク・セナ監督作ということで、映像的にもストーリー的にも“ゴチャゴチャ”しているのではないかと予想していたのだが、意外にシンプルなミステリーだった。少々あっさりし過ぎている気がしないでもないし、犯人の動機が弱くて笑ってしまったが、話自体はそこそこ上手くまとまっていたと思う。驚きはなかったがスッキリした。吹雪の中の対決シーンも見応えがあった。

あらすじ

1957年。南極圏を飛行中のロシア機内にて銃撃戦が発生し、パイロットが被弾して墜落してしまう。時は流れて現代。南極アムゼン・スコット基地に赴任している連邦保安官のキャリー(ケイト・ベッキンセール)は、普段は誰も行かない場所で発見されたという死体が他殺体であったことから捜査を開始する。ボストーク基地のムーニーという男から「全てが分かるから一人で来い」と呼びつけられて行ってみると、彼は既に殺害されており、キャリーも何者かの襲撃を受けてしまう。

感想

キャリーが捜査を進める内に墜落した飛行機に辿り着き、墜落の原因となった揉め事と殺人事件が関係しているらしいという“スタートライン”に立つ。ここでキャリーたちは生き埋めになりかけるのだが、飛行機の射出座席を利用して脱出。確か6メートルほど埋もれていると言っていたはずだが、果たして、座席を射出するパワーが凄いのか。それとも南極の氷が意外に脆いのか。

その後は割とトントン拍子だった。本件には犯人が二人いるのだが、一人は証人を消そうとして自ら姿を現してくれる。阿呆である。一度逮捕するも脱走した彼との格闘シーンが本作の大きな見所なのだが、荒れ狂う吹雪の中では誰が誰なのかよく分からなかった。ちなみに、このシーン(及び映画全体の吹雪)の撮影はどうしたのだろう。古い映画ならば「過酷な環境で……」と思ったりするのだが、最近の作品はCGで何でもできてしまうので素直に感心してよいものか分からない。

監禁されていたはずの第一の犯人の脱走が余りに不自然なこともあり、登場シーンから怪しさ全開だった国連捜査官ロバートが協力者なのかと思ったが、これは外れだった。“雰囲気だけ”のミスリードに騙された形である。なお、彼は「南極初の殺人事件だから慎重に殺らなきゃ国際問題になる」と言って捜査に協力している。現実世界では、2018年に“本のネタバレ”が原因で初の殺人“未遂”事件が発生したそうである。南極探査の歴史は長いし、もっと色々とありそうなものだが、“ちゃんとした人”が送り込まれているのか。

吹雪の中での格闘中に死亡した犯人も確かに犯人なのだが、ミステリー的にはもう一人の方が“真犯人”。彼が「こんなクソみたいな場所で何年も働かされて……」と動機を語った時には「じゃあ辞めればいいのに」としか思えなかったのだが、キャリーが彼に気付く切っ掛けの部分に“南極要素”があり、「上手く落としたな」と納得はできた。なお、真犯人は吹雪の中に出ていって実質的に自害するものの、その時に素手で金属製の手すりを掴んでもくっつかないのは、キャリーの時の描写と矛盾していないか。

こうして振り返ってみると雑な話だった気しかしないのだが、キャリーが無駄にトラウマを抱えている以外には捜査官として非常に優秀であり、観客が「なるほどね」と思えるような勘の冴えを見せてくれるため、少なくとも鑑賞中に退屈することはなかった。映画冒頭で彼女が厚着を一枚ずつ脱いでいくサービスショットに引き込まれたからというのは認める。