オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ブレイド』

Blade, 120min

監督:スティーヴン・ノリントン 出演:ウェズリー・スナイプススティーヴン・ドーフ

★★★

概要

半ヴァンパイアvs元人間ヴァンパイア。

短評

ウェズリー・スナイプス最大の当たり役(多分)。シリーズ一作目だけは前に観たことがあったのだが、デル・トロが監督を務めている二作目がプライムビデオに追加されたので一作目から。思っていた以上に『マトリックス』だった。“全身黒”というモードな出で立ちもさることながら、戦闘のBGMにアップテンポなEDMが用いられていたり、格闘も軽快なステップワークを活かしたスピード重視のカンフースタイルである。おまけに(カメラは回転しないが)“銃弾避け”まである。公開時期が一年もズレていないので直接の影響があったわけではないのかもしれないが、世紀末の“スタイリッシュ”はこんな感じだったのだ。

あらすじ

人間の他に吸血鬼が存在する世界。ヴァンパイアに咬まれた妊婦から産まれたブレイドウェズリー・スナイプス)は、不死の力を持ちながらも太陽光やニンニクといった弱点を持たぬハーフ・ヴァンパイアだった。彼は仲間のウィスラーと共にヴァンパイア狩りに精を出し、「Day Walker」と恐れられていた。しかし、元人間のヴァンパイアであるフロスト(スティーヴン・ドーフ)が古文書の解読により“マグダの再臨”させ、世界の支配権をヴァンパイアのものにしようと目論んでいた。

感想

ウェズリー・スナイプスのマッチョな肉体を活かしたアクションとホラー映画的な演出の組み合わせが面白い。冒頭、ナイトクラブで“血液スプリンクラー”が降り注ぐ中、ヴァンパイアたちが踊り狂うシーンは非常に美しく、ぐっと心を掴んでくる。マグダ再臨の儀式もオカルト的で素敵である。銀の銃弾で撃たれたり、燃やされたり、紫外線を浴びたり、血液凝固剤を撃たれたりと、ヴァンパイアたちの“殺られ方”にもバリエーションがあり、グロテスクな肉体破壊描写で楽しませてくれる。そこにアクションまで乗っかるのだから、ジャンルミックスのてんこ盛りである。これは退屈しない。

MCUでのリブートが予定されているそうなのだが、本作の大きな魅力となっているグロ要素はどうなってしまうのだろう。ディズニーだと何でも全年齢対応にしてしまいそうな気がするが……。また、「黒人のヒーロー」という設定それ自体に大きな意味が与えられるものと察せられるが、(当時どう評されていたのかは知らないが)98年には格好いい黒人ヒーロー映画が“普通に”存在していたというのに、わざわざをそれを持て囃すというのは、社会的に後退していないか。まるで『エレクトラ』と『ワンダーウーマン』の関係のようだが、後発組が先進性を誇る厚顔ぶりは何とかならないのか。よく言えば宣伝上手である。

ダークナイト・トリロジーなどで有名なゴイヤーが脚本を務めていることもあり、“自分探し”の要素が感じられるストーリーである。ブレイド自身もヴァンパイアでありながら“反ヴァンパイア”として活動している葛藤が上手く掘り下げられているとは思えなかったが、“悩むヒーロー”という後に一世を風靡することとなるヒーロー像にも(ゴイヤーのライフワークとして)影響を与えたことになるのか。「ヴァンパイアを殺すことで自分が人間だと思える」という台詞が良かった。

純血ヴァンパイアたちから見下されているフロストが吸血鬼側の主導権を握るというのは、純血に拘るが故に数に勝る“雑種”に押されるという構図が現実世界のようだった。純血に見下されるが故に“過激化”するというのも示唆的である。

ヴァンパイアには「美しい」というイメージがあるのだが、フロストも顔は美形であるものの、脱ぐと胸毛と腹毛がモジャモジャで汚かった。元人間だからなのか。

ヴァンパイアに咬まれてしまった検死医のカレン(ウンブッシュ・ライト)。彼女の変身を防ぐためにウィスラーが“ニンニク注射”を射つのだが、これは世のニンニク注射に対する誤解を招いていると思う。ちなみに、ニンニクや銀、杭はヴァンパイアに効果があるが、十字架はないそうである。ブレイド曰く、「映画はウソ」。

ブレイドが日系ヴァンパイアのナイトクラブに乗り込むシーン。制服姿の女がステージで「チンチンぶらぶらソーセージ」と歌っていて笑った。