オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ファーザー・フィギュア』

Father Figures, 112min

監督:ローレンス・シャー 出演:エド・ヘルムズ、オーウェン・ウィルソン

★★★

概要

父親探しの旅。

短評

ヒューマンドラマ要素が強めのコメディ映画。それが全面に出すぎるのは三十郎氏の好みではないし、そのヒューマンドラマも上手くまとめられているとは思えないのだが、奔放な時代を生きた母のせいで父親候補が続々と湧いてくる状況設定は楽しかった。いい話風にまとめているが、明らかに母親が告白のタイミングを間違えただけの無理やりなオチであり、これくらい雑なオチならばコメディに振り切った方がよかったのではないかと思う。

あらすじ

ずっと父は死んだと聞かされて育った肛門科医師のピーター(エド・ヘルムズ)。しかし、母ヘレン(グレン・クローズ)の結婚式の日、実はそうではなかったのだと告げられる。母を問い詰めると、元アメフト選手のテリー・ブラッドショーこそが父であると白状。母のウソによって自分の人生が奪われてきたと感じたピーターは、双子の弟カイル(オーウェン・ウィルソン)と共にテリーの住むマイアミへと飛ぶ。

感想

三十郎氏は知らなかったのだが、テリー・ブラッドショーは俳優ではなく本人であり、他にはモンタナとブレイディしかいないスーパーボウル4勝以上の名QBなのだとか(ブレイディは2021年現在7勝)。彼のことを知らなくとも「実はアメフトの名選手が父親だった!」という状況は理解できるのだが、それ自体が一つのネタになっていたわけか。いきなり「息子です」と言って現れた中年男たちなんて怪しいに決まっているのに、「おお、息子よ……」と受け入れてしまうテリーの軽いボケ具合で軽く笑わせてもらった後、「時期が合わないね」「その時期ならあいつじゃない?」と次の候補ローランド(J・K・シモンズ)が挙がり、ピーターたちの父親探しが再び始まる。

本作は表面的には「父親探し」の物語であるが、その切っ掛けはピーターが反抗期の息子イーサンとの関係が上手くいっていないという“中年の危機”にある。要するに、“父親像”を知らずに父親となって悩む中年男による「自分探し」の物語なのである。人生が上手く行っている弟カイルは父親探しに執着しておらず、ピーターばかりが拘泥している点からもそれは明らかだろう。

その決着が「父親の正体は分からずとも素敵な母親がいたからそれでいい」というものなのは大いに結構だと思うが、その結論を導き出しすのが旅そのものの中身ではなく、最後に母が“感動的な出生の秘密”を語って終わりというのは脚本の不備に他ならない。彼女は「言い出しづらくて……」と弁解していたが、テリーが父だと嘘をついたタイミングこそがその時だっただろうに。もっと多くの父親候補が次から次に現れるようなコメディを強調した展開を90分にまとめ、オチも「そっちかい!」と笑えるようなノリならば受け入れられただろうか。

顔の良さと女にモテること以外に何の取り柄もないのに、BBQソースのパッケージに採用され、ハワイで悠々自適の生活を送るカイル。学生結婚した妻に逃げられたピーターに対し、恋人ケイラ(ジェシカ・ゴメス)も美人である。そんな彼と毎日他人の肛門を見る自分の人生を比較してピーターは惨めだと嘆く。そんな彼にハッピーエンドをもたらすため、何の脈略もなく登場するアプリ開発で金持ちになったというエピローグは最低だった。他人の肛門を見ることは意味不明な詐欺的アプリなんかよりもよっぽど社会のために役立っているし、母に感謝するのなら、彼女が育ててくれたおかげとも言えるそれまでの人生を改めて否定すべきではない。

テリーがヘレンを「尻の締りと舌技が凄かった」と評し、彼の友人ロッドも「名前を聞いただけで硬くなってくる」と言い出す奔放エピソードが笑えた。