オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ダンテズ・ピーク』

Dante's Peak, 108min

監督:ロジャー・ドナルドソン 出演:ピアース・ブロスナンリンダ・ハミルトン

★★★

概要

火山が噴火する話。

短評

1980年に発生したセント・ヘレンズ山の噴火を基にしたという災害映画(そこから時間が経ってはいるが、同じ1997年に『ボルケーノ』が公開されているのは何か理由があるのか)。当時の最新鋭CGを用いて描かれた噴火の様子は今観ても非常に迫力があり、最近の『ジオストーム』のように荒唐無稽な設定を持ち出さずとも、“リアル寄り”でパニック映画を成立させられるのだと思った。舞台が人口7400人のド田舎であるため、住民を避難させてしまえばそれでほぼ終わりというパニック上の弱さはあったが、様々に形を変えて襲いかかる火山が最後まで飽きさせない。

あらすじ

火山学者のハリー(ピアース・ブロスナン)が噴火の際の事故で婚約者を亡くしてから四年、上司ポールから「ダンテズ・ピークで異常が観測された」と告げられ、早速調査に出向く。ハリーは噴火の危険性を指摘するものの、経済的損害を恐れるポールらが住民の即時避難を回避し、確かな証拠が出るまでは調査継続という方針が採られる。結局、ハリーたちは町を去ることとなり、その前夜、彼が町長レイチェル(リンダ・ハミルトン)を自宅まで送り届けると、水道水の濁りが確認される。町には既に噴火待ったなしの状況が迫っていた。

感想

ポールも「これはヤバいね」と認め、急遽住民を集めての説明会が開かれる。すると、説明するまでもなく火山が噴火し、住民は避難を余儀なくされる。しかし、どこの世界にも避難を拒否する阿呆がいるもので、これが本作ではレイチェルの“元”義母ルース(夫とは離婚済)。危険性を指摘されても説得に応じない阿呆は自己責任で死んでいただいても構わないのではないかと三十郎氏は思うわけだが、レイチェルの二人の子供たちが「お婆ちゃんの家に逃げよう」という痛恨の判断ミスを犯してしまったものだから、逃げ遅れた三人と助けに来た二人、そして一匹の犬ラフィーが噴火の脅威に対峙することとなる。

噴火が起こってからの話はハリー一行がただただ逃げ惑うだけなので、物語としての弱さは否定できないものの、いざ噴火してしまった時に“逃げる”以外にできることなど何もないわけで、いかに予測し、避難するのかが重要なのだろう。“する”だけではなく“させる”のが難しいと描かれている辺りは、噴火そのものよりもリアルと言えるか。

噴火の遠景から降り注ぐ火山灰、壁を貫き行く手を阻む溶岩流に至るまで、非常に高いクオリティで描かれている。全てを飲み込まんとする火砕流(このシーンが一番好き)などにはミニチュア特撮が用いられているのではないかと思うが、CGも特撮も、90年代後半にはこのレベルの表現が可能だったのかと新鮮な思いを持って観られた。近頃、三十郎氏の観ている「パニック映画」というジャンルの作品は、技術進歩の恩恵を最大限に受けた上で“あのクオリティ”なのだと思っていたのだが、いつから進歩が止まっているのか分からないレベルらしい。火砕流の他に、フリードキン版『恐怖の報酬』の如く濁流が橋を流す場面もすごい迫力だった。

大戦犯ルース。平時には「私の山が悪さをするわけ……」と老人らしい反知性主義的台詞を口にし、レイチェルが来た時には「どうせ私を責めるつもりでしょ。早く子供を連れて帰れ」と言い出すのには笑わせてもらったが、彼女が最後に格好いいところを見せる。火山の噴火によって川が強酸性化する理屈はよく分からないのだが(もちろん誇張や映画的演出はあるらしいが、地質調査研究所が科学考証に協力していて全くの荒唐無稽な話ではないらしい)、ボートでの移動中にスクリューが溶けて立ち往生したところ、彼女が川に飛び込んでボートを押すのである。非常にアツい展開なのだが、もう少し苦しんでくれた方が説得力が生まれた気がしないでもない。

降り注ぐ火山灰を雪と勘違いしたのか喜び勇んで走り出して行方不明となっていた犬と合流し、最後は「ありがとう、NASA!」で助かって大団円である。アメリカの救助隊は駆けつけるのも作業も極めて迅速である。