オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『アダムス・ファミリー』

The Addams Family, 86min

監督:コンラッド・ヴァーノン、グレッグ・ティアナン 出演:オスカー・アイザックシャーリーズ・セロン

★★★

概要

変な一家。

短評

2019年に制作されたアニメ版。三十郎氏にとっては実写版のイメージが強い一作なので、その印象を壊さない意味でアニメでのリメイクは正解だったかと思う(もっとも原作コミックのビジュアルに忠実なのはアニメのようだが)。また、独特の世界観を表現する非現実的な描写についても好相性だった。ただし、最近流行りの多文化共生や個性の尊重ネタを使用したことで、ストーリーについては子供向けの酷く凡庸なものに終わっている。彼らには市井の凡人どもと馴れ合うような真似はせず、孤高の存在であってほしかった。

あらすじ

晴れて婚姻の日を迎えるも、不気味な一族を忌み嫌う村人たちに故郷を追われてしまったゴメズ(オスカー・アイザック)とモーティシア(シャーリーズ・セロン)の二人。彼らが新天地を求めて移動中に出会った犯罪者用精神病院跡地に居を構えてから13年、ウェンズデー(クロエ・グレース・モレッツ)とパグズリーの二人の子供たちにも恵まれ、長男パグズリーは一族の伝統である“マズルカ”の時を迎えようとしていた。しかし、長らく外界から隔離されてきた彼らの存在が麓の町を支配するマーゴ(アリソン・ジャネイ)の知るところとなってしまう。

感想

原作通りの不気味さが強調されたビジュアルのはずなのだが、全体のポップな雰囲気のせいもあってか、実写版の方が不気味に感じられた。アニメだとアダムス一家以外の人々も十分に“異形”なので(特にマーゴの髪型が凄い)、“そういう世界”として認識できてしまうところがある。ウェンズデーが可愛いのは原作通りなのだと分かったのは収穫だったのだが、実写版でモーティシアを演じたアンジェリカ・ヒューストンの完成度の高さに改めて驚かされる結果となった。

ビジュアルについては思い出補正もあって実写版に軍配が上がるものの、アニメらしい大胆な表現は楽しい。モーティシアの脚が“ネジ止め式”だったり、彼女のスカートから大量のクモが湧き出てきたりして、彼らの人間離れしているところが魅力的に描かれている。一家の表現で特に好きだったのは、家を“掃除”するシーンだろうか。

その一方で、彼らの異常性を「個性」の枠にハメてしまうようなストーリーについては、あまりに凡庸で残念に思う。「互い違いを認め合い、個性を尊重しましょう」というのが現代社会の共通理解なのは分かるが、それをそのままストーリーにしてしまうと安っぽいのである。その“枠外”にありながらも魅力的に思えてしまうアダムス一家の姿を描くことで言外にメッセージを発することができるというのに、“調和”のために個性を薄めてしまっては意味がない。

声優陣がとても豪華である。あらすじ欄に記したキャストの他に、ウェンズデーの同級生パーカーを『エイス・グレード』の陰キャ少女役で三十郎氏の心を掴んだエルシー・フィッシャーが演じている。もっとも、どのキャストも分かっていて意識しなければ分からない程度には上手くハマっていた(シャーリーズ・セロンは言われてみればシャーリーズ・セロン)。