オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『インパクト・クラッシュ』

The Ghazi Attack, 120分

監督:サンカルプ・レッディ 出演:ラーナー・ダッグバーティ、 ケイ・ケイ・メノン

★★★

概要

インドとパキスタンの潜水艦対決。

短評

インド製の潜水艦映画。映画の最後に「真相は海の中」と紹介されるように印パ両国で主張の割れている出来事ではあるらしいが、実話をモデルとしているようである。多少のプロパガンダ臭がありつつ、映像的にも普通レベルではあるのだが、密室での心理戦や魚雷の撃ち合いといった息詰まる攻防戦は楽しく、抑えるべき点を抑えた一作だったかと思う。ただし、物語の展開については大いに疑問が残るものであるため、そこは“ツッコみながら”ということになるかと思う。

あらすじ

インド、パキスタンの両国間における軍事衝突は公式には四度とされているが、知られざる海の中での戦いが存在した。時は1971年。パキスタンから東パキスタンへの補給路に海路が用いられると睨んだインド海軍司令部は、シン艦長率いる潜水艦S21に偵察を命令。敵影は確認されず任務終了かと思われたが、シン艦長が「こちらから倒しに行くまで」と暴走。アルジュン少佐は反対するものの、ラザク艦長率いるパキスタン最強の潜水艦“ガージィ”との戦いに突入する。

感想

パキスタンの圧政によってバングラデシュ独立運動を起こし、それを支援するインドとの関係が悪化。あくまで原因はパキスタン側にあり、パキスタン軍は民間の商船をも容赦なく撃沈する“悪役”という設定である。プロパガンダ臭は拭えないものの、これは未だに関係のよくない両国を描くに当たって仕方がないことだとも言えるし、ハリウッド映画のプロパガンダに乗せられ続けている三十郎氏がとやかく言えたことではあるまい。

また、東パキスタンではベンガル人に対する虐殺が行われていたという事実もあるらしく、それを踏まえれば“抑えた描写”だったとすら言えるかもしれない。ちなみに、そのパキスタンを米中が、東パキスタン(=バングラデシュ)を印ソが支援していたそうである。どうりでハリウッドで映画化されていないはずだ(『バングラデシュ 虐殺の9ヵ月』という1972年のインド映画があるらしい。制作時期的にこれもプロパガンダ臭が凄そうだが)。

そんな善悪二項対立の展開なのかと思いきや、シン艦長が「待機命令なんて従えるか!先制攻撃だ!」とまさかの展開に。艦体が保つのか不明な深度への潜水にも一切の躊躇ない。彼の暴走を止めようとするアルジュン少佐との別種の善悪二項対立へと物語は移行する……と思いきや!なのである。パキスタンを単純に悪者扱いするだけでなく、インド軍内部の好戦的艦長という問題も描くとは意外にバランスが取れている……と感心していたのだが(ラザクも「向こうには頭のイカれた奴がいる……」と困惑)、なんとアルジュンの方が“折れる”。

デーヴラージ副長から「艦長の息子は待機命令に従って命を落としたんだ……」というお涙頂戴の話を聞かされたアルジュンが、“心を入れ替えて”参戦を決意。最終的には敵軍の機雷によるダメージを受けた際に命を落とした艦長の敵討ちをすべく、彼が艦を指揮して敵艦を撃沈するのである。すっかり反戦映画に飼い慣らされてしまった三十郎氏にはこの“激アツ展開”が素直に受け入れられず、「そっちかよ」と大いに戸惑った。イカれ野郎のシンよりも名将感漂うラザクの方が格好いいくらいである(三連弾を外して怒るシーンは笑ったが)。なお、母国インドのために勝利を誓う乗組員たちが艦内で歌うシーンはあるものの、踊りはしなかった。

機雷に気付いた瞬間、いきなり小声になる艦長たちがビビっているようで可笑しかったのだが、人の話し声程度で爆発するものなのだろうか。ちなみに、乗組員たちが「ハンッ!」と叫びながら艦壁を叩き、その衝撃で機雷を爆破するシーンがある。あれだけ頑張って何とか爆発するくらいなのだから、話し声は関係ないような……。

魚雷の発射には艦長と少佐の両者の同意が必要なため、艦長が「じゃあ訓練ってことで」と制限を回避する。欠陥制度だろ、これ。

パキスタン軍に撃沈された民間船からアルジュンが女性(タープシー・パンヌ)と少女の二人を救助していた。船に女性を乗せるという行為は忌避されているように思うのだが、特にそうした描写は見られなかった。インド文化では関係ないのか。

インパクト・クラッシュ(字幕版)

インパクト・クラッシュ(字幕版)

  • ラーナー・ダッグバーティ
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