オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ラスト・ボーイスカウト』

The Last Boy Scout, 105min

監督:トニー・スコット 出演:ブルース・ウィリス、デイモン・ウェイアンズ

★★★

概要

シークレットサービスと元アメフト選手。

短評

まだ髪が生えていた頃のブルース・ウィリス主演作。かつての地上波で放送されていそうな、90年代の作品らしく安心して楽しんでいられるタイプの一作だった。そこそこ迫力のあるアクションに、そこそこ上手くまとまったストーリー。こう書いてしまうとこぢんまりとまとまった映画のように聞こえるかもしれないが、明らかに大掛かりなカースタントが撮影技術の関係なのか意外とあっさりしていたり、オーバーキルが笑えるレベルだったりして、謎のバランス感(の欠如)が魅力でもある。

あらすじ

シークレットサービスで現私立探偵のジョー(ブルース・ウィリス)。彼の妻サラ(チェルシー・フィールド)を寝取った親友マイクからの依頼でコリー(ハル・ベリー)というストリッパーを訪ねてみるも、彼女が何者かに殺害されてしまう。ジョーはコリーの恋人であり元アメフト選手でもあるジミーと共に事件を追うのだが、その裏には政界をも巻き込むアメフトに関わる巨大な陰謀が潜んでいた。

感想

映画冒頭、ハーフタイムに脅迫電話を受けてタッチダウンを強要されたランニングバックが、相手ディフェンス陣を銃撃しながら猛進して見事(?)にタッチダウンを決めるというアメフト史に残るであろうスーパープレイを披露する。果たして、このプレイはタッチダウン認定されるのだろうか。どうせ本人も自殺するつもりで、恐らくは得点認定されないプレイのために被弾した選手が気の毒でならないが、なかなかインパクトのあるオープニングである。しかし、この印象的な演出はあくまで“伏線”としての扱いであり、本編に大して影響がないという潔さである。

全体としては「そういうことね」と納得できるようなストーリー構成なのだが、ところどころに上述のタッチダウンのような“謎バランス演出”が見られる。劇場デビュー年(出演は三作目)だったハル・ベリー演じるコリーが殺されるシーンだって、たかがストリッパーを一人殺すだけなのにマフィア間の抗争のような路上での銃撃戦が繰り広げられる。極めつけは、終盤に黒幕の右腕マイロが殺される場面だろう。ジョーとの格闘中に警官舞台が駆けつけて蜂の巣にしたかと思えば、彼が落下した先にはヘリコプターが。プロペラで“ブシャッ”である。個人的にはマイロよりもヘリコプターの方が心配だった。黒幕が爆死するシーンも、彼の飼い犬が可哀想だった。

そうしたやり過ぎな演出が楽しい一方で、気合が入っている割には映像的にはあっさりしているシーンも。たとえば、ジョー一行とマイロ一行がカーチェイスを繰り広げる場面。“崖下り”のシーンは、思わず見を見張るような、「いや、死ぬだろ」と笑ってしまうような危険なカースタントなのだが、現代のアクション映画のように複数のアングルから撮影して「凄いだろ!」と強調するようなことはなく、意外と軽く流されている。個人的には本作で一番の見所とも思えるシーンだけに、なんだか不思議な感覚だった。

それらを差し置いて三十郎氏が本作のベストシーンに挙げたいのは、ジミーが観客の気持ちを代弁してくれる場面。陰謀を解明し、爆発事件を未然に防ぐためにスタジアムへと向かうジョーにジミーが次のように告げる──「クソ議員の命を救い、間男の敵討ちをしてる」。落ちぶれキャラでありながらも一応はヒーローであるジョーなのだが、本作の中でやっていることはジミーの言う通りなのである。この思わず観客がツッコみたくなってしまうような皮肉な構図に制作側が自覚的であるというのが笑えた。

「かつての地上波で放送されていそうな安心して楽しんでいられる一作」と書いたが、もし地上波放送だと、プールでアレさせられている女をジミーが助ける性的なシーンがカットされたりするのだろうか。あれはジョーとの“共通点”という意味でバディの根幹を成すシーンだったりするのだが、他にも子供の頃に地上波で観た映画が、テレビ局の独自編集によって印象を歪められている可能性について考えてしまった。