オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ハミングバード』

Hummingbird(Redemption), 100min

監督:スティーヴン・ナイト 出演:ジェイソン・ステイサム、アガタ・ブゼク

★★

概要

ホームレスとシスター。

短評

ステイサムの主演作の中ではとりわけ地味な一作。三十郎氏が「最も退屈」と評した『ワイルドカード』よりも地味で、アクションシーンも極めて少ない。「どうした?演技派への転向でも目指していたのか?」とでも言いたくなってしまうないようなのだが、当然、これは三十郎氏がステイサムに求めるものとは異なる。映画の冒頭こそ“格好悪い薄らハゲ”としての登場で目を引くものの、すぐに“格好いいハゲ”へと元通り。いつもの無双が見られないだけのいつものステイサムでは、ただ物足りないだけである。

あらすじ

アフガンで民間人5人を殺害したジョゼフ・スミス軍曹(ジェイソン・ステイサム)。軍法会議を逃れ、ホームレスへと身を落とした彼は、ジョーイ・ジョーンズと名を変えて暮らしていた。ある夜、暴漢に襲われたジョーイは、偶然に逃げ込んだ家が数ヶ月留守であることを知り、そこで新生活を始めることにする。彼は中華系マフィアの汚れ仕事を引き受けて頭角を現していくのだが、ホームレス時代に支援してくれたシスターのクリスティナ(アガタ・ブゼク)から、共に暴漢から逃げたはずの少女イザベル(ヴィクトリア・ビューイック)が死体となって発見されたことを知らされる。

感想

映画冒頭のステイサムの“薄らハゲ”姿は衝撃的である。ホームレスで散髪をする余裕すらないだけなので、『リボルバー』で髪を伸ばしていた時とも違う、本当にみすぼらしい頭になっている。おまけに洗っていない髪がベチョっと頭皮にくっついていて、なんだか汚らしい。やはり時代はハゲである。今どき髪を生やしているなんて清潔感に欠け、品性を疑われても仕方がない。

そんな自身のイメージに反するビジュアルが嫌だったのか、留守宅に侵入してシャワーを浴びると、まずはバリカンで髪を刈るステイサム。これで見た目は“いつものステイサム”である。そんな彼が、バイト先の中華料理屋(「人生を取り戻すんだ」から働くまでの行動が早くて偉い)で厄介な客を撃退したことから中華マフィアにスカウトされ、完全に“いつものステイサム”に戻っったかと思いきや、暴れるシーンは意外に少ない。

本作は“心に傷を負った二人”の物語である。スミスはアフガンでの経験が、クリスティナは過去の性的虐待が、人生に深い影を落としている。スミスの場合、酒を止め、(裏世界の住人ではあるが)真っ当に生きようと努力するほどに、逆に暴力の世界から逃れられなくなるというジレンマを抱えている。クリスティナが修道女なのも、神に身を捧げる意志というよりも過去から逃れるためである。それ故に、劇中でのスミスの暴力は決して痛快ではなく悲しく、共通点を持つ二人の人生が一瞬だけ重なるドラマの要素が強く打ち出されている。

とは言え、ステイサムが出ていれば観客は誰だってアクションに期待する。悲しみを湛えているはずの彼の暴力はやっぱり楽しいし、「お前はナイフか。こっちはスプーンだぜ」なんてサービスシーンまであるものだから、設定とキャラがズレている感は否めないのだった。ステイサムなら、いつでもどこでも簡単に人生をやり直すことができるだろう。軍法会議だって捕まえに来た奴らをボコボコにして逃げられるだろう。

ヒロインなのかと思いきや、娼婦として働かされた末に客に殺されて川に捨てられるイザベル。彼女を殺した男にスミスが復讐するのだが、何も彼が出ていかずとも、常習犯なら娼館に関与するマフィアに始末されるだろうに。なお、殺し方が非常に迷惑な上に、わざわざ衆人環視の下で殺るという逃亡犯とは思えぬ頭の悪さだった。

スミスの妻ドーンが夫に再開した時の「家賃が払えないから大家にフェラしてる」という文句の言い方が妙に可笑しかった。