オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『狼よさらば』

Death Wish, 93min

監督:マイケル・ウィナー 出演:チャールズ・ブロンソンホープ・ラング

★★★

概要

妻を強盗に殺された男が自警市民化する話。

短評

デス・ウィッシュ』のリメイク元。本作を含む『ロサンゼル』『スーパー・マグナム』『バトルガンM‐16』『狼よさらば 地獄のリベンジャー』の全五作品が「狼よさらばシリーズ」なのだとか。同作も「イーライ・ロスの割には大人しいな」という印象だったが、本作のアクションはそれ以上に抑制が効いていた。どうやら本作の主眼は、「暴力」というよりも「自警」という行為にあるらしい。なかなか渋い映画だった。

あらすじ

強盗に妻を殺されてしまった建築士のポール(チャールズ・ブロンソン)。一緒にいた娘は一命を取り留めたものの、レイプされて心に深い傷を負ってしまう。進展を見せない捜査にポールが不満を募らせていたある夜、彼は一人の強盗を撃退する。また、出張先のツーソンで西部劇の撮影スタジオを訪れた際に拳銃を手に入れ、暴力忌避者であった彼の中に眠っていたものが目覚めていく。

感想

本作はポールと妻がハワイでバカンス中のシーンから幕を開けるのだが、チャールズ・ブロンソンの筋肉が凄い。現代の基準で見ても立派な肉体をしているということは、当時としては相当のものだったはずである。『デス・ウィッシュ』を観た際、明らかに強そうなブルース・ウィリスが戦いの素人という役どころは合わないのではないかと感じたのだが、これはオリジナル通りだったということになるのか。

強盗を撃退したことに気を良くし、毎晩、“誘い受け”するために街を徘徊するようになるポール。その「復讐」の対象が、妻子を襲った強盗本人ではなく街のチンピラたちに向かう辺りに八つ当たり感がないでもないのだが、本人は暴力の快感でどんどん調子に乗るし、マスコミは「アマチュア刑事」なんて愛称をつけ、市民は犯罪が減ったと喜ぶ。この暴力に飲み込まれる男の物語の果てに何があるのかと言えば、なんとポールは犯人と対峙しないのである。なんて奇妙な“復讐劇”だろうか。

この少々煮え切らない展開によって明確となるのが、アメリカ人の身体の芯まで染み付いている「自分の身は自分で守る」という考え方である。原作小説は自警主義の危険性を批判するものらしいのだが、映画では劇中にも分かりやすく象徴として登場する西部劇的な価値観を肯定している。治安の悪かったニューヨークで受け入れられてしまったこの考え方が、現代ではスーパーヒーロー映画へと受け継がれ、銃規制を唱えるリベラルまでもがそれを喜んでいる。単純明快なようでいてなんとも複雑な国だと思う。

警察には“犯行”がバレてしまうものの、逮捕しない方が犯罪が減って都合がよいという理由で見逃されるポール(この「都合がよい」という事実がポイントだろう)。ただし、放置するわけにもいかないので「ニューヨークからは出ていけ」と告げられる。シカゴへと飛んだ彼が最後に決めポーズと共に見せる表情は実に清々しく、「染まったな」という感じである。シリーズの残りの作品でも毎回同じ理由で別の都市に行ったり……は流石にないか。

娘は未だ精神病院に入院中だと言うのに、自警活動でウキウキなポール。義理の息子が訪ねてきた際、音楽を流し、楽しそうに「レバーの焼き加減はどうする?」と尋ねてドン引きされているシーンが笑えた。ちなみに、「いつまでも落ち込んでられるか」と逆ギレする。

強盗の一人がジェフ・ゴールドブラムに似ていると思ったら、本当にジェフ・ゴールドブラムだった。なんとデビュー作らしい。

本作の地下鉄のシーンが『ジョーカー』のオマージュ元らしい。