オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『グリンゴ/最強の悪運男』

Gringo, 110min

監督: ナッシュ・エドガートン 出演:デヴィッド・オイェロウォジョエル・エドガートン

★★★

概要

会社を首になりそうな男が狂言誘拐で一儲けしようとする話。

短評

メキシコが舞台のドタバタ犯罪コメディ。「グリンゴ(Gringo)」というのは中南米での白人への蔑称だと思っていたのだが、元々は「よそ者」という意味らしい(したがって黒人主人公もグリンゴである)。魅力的なキャストを揃えた割にはそれぞれのキャラクターを活かしきれなかった印象ではあるものの、立場と思惑の入り乱れたドタバタ感が楽しかった。話が予想外の方向へと転がっていく感覚は薄いものの、それぞれの立場がある程度明確な分だけ、出てきた時に「次はこうなるぞ」とニヤつけたり、それが裏切られる楽しみがある。

あらすじ

知人の会計士から「君の会社が買収されるらしいよ」と聞かされて不安になったハロルド(デヴィッド・オイェロウォ。発音できない)。社長で友人のリチャード(ジョエル・エドガートン。監督ナッシュは兄)は「心配するな。ゴリラが云々」と話をはぐらかすが、ハロルドは彼と共同経営者エレーン(シャーリーズ・セロン)の会話を盗み聞きし、自分が解雇される予定であることを知ってしまう。さらに、妻から不倫の事実と別れを告げられて破れかぶれとなったハロルドは、狂言誘拐を企てて身代金を騙し取ろうとするのだが、カルテル、運び屋、DEA、元傭兵が入り乱れた混乱へと巻き込まれてしまう。

感想

最初は「狂言誘拐のつもりがカルテルに本当に誘拐されてしまい……」という展開を予測したのだが、カルテルの存在感は意外に薄かった。カルテルがハロルドを狙う一方で(なぜリチャードじゃないのかという過程は雑。コメディらしいと言えばらしいが)、そのカルテルに先んじてハロルドと接触するのは、リチャードの兄ミッチ(シャールト・コプリー)。“改心”した元傭兵である。彼はハロルドを“救出”するものの、本人は助けられてしまうと本来の目的を達成できないというジレンマがあり、逃げ出したり、逆オファーを掛けたりと、話が二転三転する。

この辺りのドタバタ具合は面白いものの、多くのアクターが登場する割にはハロルド、リチャード、ミッチの三者だけでほとんどの話が回ってしまっているというのが本作の難点だろうか。ミッチがハロルドを救出するのは、カルテルに報奨金を貰おうと裏切った“狂言誘拐の協力者”彼が拉致“しそう”になった場面である。たとえば、彼らが一度ハロルドをカルテルに引き渡し、そこにミッチが乗り込むような展開であれば、より大きな混乱を引き起こせたのではないかという気がして、物足りなさを覚えるところはあった(後でそうなるが既に物語が佳境に入っているために埋もれてしまっている)。そうとは知らずに売人の恋人とメキシコ旅行に来てハロルドと出会うサニー(アマンダ・セイフライド)も、キャストの知名度の割には展開に寄与していなかった。

“本編”たる狂言誘拐とはほとんど絡んでいないのに、(プロデューサーという立場もあって)抜群の存在感を放っているエレーン役シャーリーズ・セロン。ビジネスの場にある意味では相応しく、ある意味では相応しくなく、谷間を見せびらかしまくっている。「この私が他の女なんか負けてなるものか」とリチャードとハロルドの妻ボニーの情事の現場に乗り込んだかと思えば、「買収で経営者のどちらかは不要になるよね」と取引先に言われれば「今夜二人で飲みに行きましょ」と速攻でモーションを掛ける。強かな痴女である(二人で飲みに行った時の会話が凄い)。近年はフェミニズムの隆盛によってヒーロー的な女性を演じることの多い気がするシャーリーズ・セロンだが、三十郎氏はこういう類の“強い女(=悪女)”の方が彼女には似合っていると思う。バーホーベンの映画とかに出ないかな。

兄の妻を寝取り、友人の妻を寝取り、オフィスでエレーンと“会議”する性豪リチャード。アメリカの会社の社長というのは、何かと社内で“したがる”イメージが強いのだが(ある種の“成功の証”なのだろう。性交だけに)、これはAVを見て日本の性事情を知った気になるようなものか。

配給がAmazon Studiosのようである。もったいぶらずにプライムビデオで無料配信しろよ。

グリンゴ/最強の悪運男(字幕版)

グリンゴ/最強の悪運男(字幕版)

  • 発売日: 2020/07/03
  • メディア: Prime Video