オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『アーカイヴ』

Archive, 109min

監督:ギャヴィン・ロザリー 出演:テオ・ジェームズ、ステイシー・マーティン

★★

概要

妻を亡くした夫がロボット妻を作る話。

短評

ステイシー・マーティンがロボットのコスプレをしているSF映画。オチには意外性があったのだが、「死んだ妻をAIとロボットで再現するぞ!」なんて設定も、その過程における“AIの暴走”みたない展開も、既に手垢がついてしまっている。どちらも「そりゃそうなるでしょ」という程度のものでしかなかった。また、角張ったロボットが九割以上人間な“完全体”へと進歩する速度の飛躍については説明がついたものの、後者の方のコスプレ感が抜けきらず、映像面にも安っぽさがあった。

あらすじ

山奥の研究所に籠もり、AIとロボットの開発に没頭する研究者ジージ(テオ・ジェームズ)。彼の目的は単なるAI開発ではなく、交通事故で亡くなった妻ジュール(ステイシー・マーティン)の意識を再構築することにあった。プロトタイプJ1、J2を経て、ジョージは遂に完全体J3を完成させるのだが……。

感想

ジョージは「J3ができても君たちは家族だから面倒見るよ」とJ1、J2に対して言うわけだが、言ってしまえば彼女たちは“捨て駒”である。どう言い繕ったところでJ3完成のための“過程”に過ぎないのだから、J3ができれば用済みとなってしまう。5才児程度の発達度合いとされるJ1は何も言わないが、思春期くらいのJ2は「新型を作るよりも私を改良してよ」ともっともなことを言う。こうしたAIの“自我の目覚め”については『2001年 宇宙の旅』や『ブレードランナー』で散々描かれてきたものであり、「未完成の妻」という設定が何か新たな印象を与えることはなかった。

ジョージは「アーカイヴ」と呼ばれる故人の人格保存システムを利用し、そのデータを基にジュールを再構築しようとする。ドラマ『アップロード』ではもう一歩進んだ世界が描かれていたし、割と関心の高いトピックなのだろう。実はジョージの方が……というのが本作のオチなのだが、これは皮肉が効いていて面白かった。彼は妻の意識をロボットの中に“閉じ込め”ようとしていたわけだが、実際に閉じ込められているのは彼の方である。また、アーカイヴは遺族が故人の死を受け入れるためのシステムらしく、一定期間が過ぎると“破棄”されるという設定が、彼が結果的に捨て駒としたJ2(そしてJ3)に重なる。もっとも、自分の死を知らない故人の意識と会話して遺族がどういう気持になるのかについては疑問が残る。

箱を組み合わせただけのような、“出来の良いダンボー”みたいなJ1。最も“ロボットらしい”見た目のJ2。そして、パッケージに載っている表面継ぎ接ぎのJ3。この後に登場するシン・J3も含めて、一人の研究者が開発したものとしては進化に飛躍がある点については(演技の問題なのか演出なのか、外見以外の動きも人間過ぎる。瞬き多すぎ問題)、「本当は開発していなかったから」という理由で説明がつく。しかし、人間に寄せているはずのJ3の外見が古臭いSF映画の特殊メイクみたいに安っぽく、コスプレか特殊性癖のどちらかの域を出てはいなかった。シン・J3の制作シーンは、ドラマ版『ウエストワールド』のOPクレジットから大いに影響を受けたことだろう。そこまで含めてJ3の外見を”継ぎ接ぎ”としたのであれば、なかなかの自虐である。

日本の山梨が舞台である。実際に山梨でロケはしていないのだろうが、ジョージが“下界”に降りた際、街に「天下一品」の看板があって笑った。監督か美術スタッフのお気に入りなのかもしれない。

ジョージが交通事故に遭う前、ジュールから「自動運転にすればいいのに。ロボット好きでしょ」と言われるも、彼は「俺が好きなのは自分が作ったロボットだけ」とこれを拒否。その結果として妻のロボットを作るという展開には整合性があるような気もするが、それなら彼の運転によって事故る必要があったと思う。しかし、実際には前方から車が“飛んでくる”という避けようのないものだった。以前ニュースで同じ光景を見たことを思い出し、もしかしてその映像が日本という舞台を選ばせる理由となったのではないかと邪推した。

アーカイヴ(字幕版)

アーカイヴ(字幕版)

  • 発売日: 2021/02/19
  • メディア: Prime Video