オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『囚われた国家』

Captive State, 109min

監督:ルパート・ワイアット 出演:ジョン・グッドマン、アシュトン・サンダース

★★★

概要

エイリアンに侵略されて降伏した地球の話。

短評

エイリアンという“前提”を置くことによって現実の風景を(できる限り低予算で)SFらしく見せる──所謂『第9地区』方式を実践したSF映画。しかし、同作と比べるとエイリアンの存在感が薄いこともあってSF要素がメタファーになっておらず、「これって普通のレジスタンスものと何が違うの?」というガッカリ感は否めなかった。展開はスリリングで普通に楽しめるものの、現実世界の出来事をSF的な設定に投影して観客に“気付かせる”ための意外性が不足していた。

あらすじ

地球がエイリアンの侵攻を受ける。圧倒的な技術力を前に主要都市は次々と陥落し、人類は種の存続のために降伏を選択する。「統治者」として地球に君臨することとなったエイリアンは地球上の資源を乱獲し、それに協力する者とそうでない者との間では貧富の差が広がった。エイリアンの支配に抵抗するレジスタンスは起死回生を期して爆破テロを仕掛けるも、あえなく失敗。この失敗によりレジスタンスは無力化したものと目されていたが、刑事マリガンだけは爆死した実行犯ラファエルの弟ガブリエルの動向を気に掛けていた。

感想

それが「異星人」だろうと「異国人」だろうと、「侵略者」のすることには大差ない。武力に劣る相手に対して圧政を敷き、奪える物を好き放題に奪い取る。そのコストを下げるために現地人を“採用”し、“裏切り者”が栄えることとなる。人類の歴史上、あらゆる時代のあらゆる場所で見られる光景と何ら変わりない。そして、我々はその“侵略”の延長線上の世界に生きている。言ってしまえば、本作は「ただそれだけ」の話である。

第9地区』では難民エビ星人にアパルトヘイトを重ねていた。これが大きな成功を収めた要因は、エビ星人の奇抜さにあると言えるだろう。現実世界から遠く離れた存在に現実世界を投影することで、「あれってこういうことなんだ」という“気づき”を観客を与えることができる。対する本作にはその“ギャップ”がなく、「これってそのまま侵略者とレジスタンスの話だよね」で終わってしまう。あまりに直球すぎるのである。これではあえてSFというジャンルを選択した意義が感じられず、極論を言えば「エイリアン必要なの?」というレベルである。そこには想像の余地や奥行きがない。

「パッケージのワクワク感を返せよ」という残念さはあったものの(特に“岩石的”なUFOのビジュアルが好きなのだが、活躍は少ない)、だからと言ってつまらないわけではない。(他の戦争映画におけるレジスタンス活動と同じく)ヒリヒリとした緊張感に満ちており、“普通に”楽しめる。最後の展開にも(映画全体の構造にはない)意外性があってよかった。「SF映画」という枠で考えると物足りなさは否定できないが、「レジスタンス映画」としてなら上出来だと思う。

荒廃した街はシカゴをほとんどそのまま使用したそうである。ドローンによる監視も、もはや「SF」とは言い辛くなってきたところがあるため、“SFらしい”描写は、皮下に埋め込まれた発信機、透明化爆弾、そしてエイリアンといったところだろうか。この内、発信機を除去するシーンは『マトリックス』そのままだった。“ハリネズミ化”するエイリアンにはそこそこインパクトがあったが、「現実世界の問題を描いています」ということを強調するためなのか出番は少なく(予算の都合もあるだろう)中途半端な印象を受けた。人類をいとも簡単に降伏させる程の技術力を持つエイリアンであれば、その一端をもう少し見せて、レジスタンスのミッションの難易度を強調すべきだったと思う。

囚われた国家(字幕版)

囚われた国家(字幕版)

  • 発売日: 2020/08/19
  • メディア: Prime Video