オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『コップランド』

Cop Land, 116min

監督:ジェームズ・マンゴールド 出演:シルヴェスター・スタローンハーヴェイ・カイテル

★★★

概要

警官王国の保安官。

短評

「スタローンが保安官役」という設定からは想像もつかない内容の一作。なんとアクションが(ほとんど)皆無である。デ・ニーロやハーヴェイ・カイテルといったスコセッシ映画の常連たちに彼が混ざっているのは違和感しかなかったし、“スタローンらしさ”を期待すると肩透かしを食うだろうが、これが意外にも悪くなかった。“肉体改造”の成果もあるのかもしれないが、スタローン特有の滑舌の悪さがやる気の感じられないポンコツ保安官役にばっちりはまっていた。『クリード』でもそうだったが、実は“無双しない”演技が上手いらしい。

あらすじ

パーティーから帰宅中の警察官マレーが銃を持った二人に車をぶつけられ、追跡中に当て逃げ犯を射殺する。しかし、相手が銃を持っていると思ったのはマレーの勘違いだった。マレーの叔父で同じく警察官のレイ(ハーヴェイ・カイテル)は証拠隠滅を図るも、現場を見ていた救助隊が反抗。彼らが揉めている間にマレーは橋から身を投げてしまう。事件を捜査する内務調査班局のモー(ロバート・デ・ニーロ)は、橋の向こう側──ニュージャージー州ギャリソン郡の保安官フレディ(シルヴェスター・スタローン)に協力を依頼するも、NYPDの警官が多く住む町の保安官であるフレディはレイとかねてより懇意にしていた。

感想

フレディが個人として覇気に欠けた男であることに加え、ニュージャージー州の町がお隣ニューヨークの警察官たちに実質的に支配されている。この一種の“逆転関係”については冒頭に簡単な説明があり、少々馴染みの薄い状況設定ではあるものの、話が分かりづらくなるということはなかった。

NYPDの連中は「格下」の存在としてフレディを舐めきっていて、フレディ自身もその境遇に甘んじている。彼は過去に想い人リズ(アナベラ・シオラ)の救助作業で片耳の聴覚を失っており、そのこともあってNYPDの試験に落ち続けている。おまけに、そのリズはNYPDのDV警官と結婚していたりするものだから、フレディはNYPDに対してコンプレックスだらけというわけである。

そうした事情もあって、フレディはレイたちが“地元”で好き放題にやるのを見逃し続けていたのだが、遂に戦う決心をするという物語。レイに言われるがままの無気力なフレディが、最後に正義を貫こうとするところで“無双モード”に入るのではないかと冷や冷やしたが、スタローンは最後まで抑えた演技を貫いていた。「実は射撃の名手」という“らしい”設定もありはするものの、まさかあのスタローンが凡人の観客が感情移入しやすい“善人だがボンクラ”という役を見事に演じ切るとは。彼が“そうなってしまった”理由と正義に目覚める理由も過不足なく描かれており、いつも同じ演技のアクション映画よりも印象に残る一作となった。

ほとんどのシーンで服を着ているのでそこまで目立ってはいないものの、スタローンは増量して本作に挑んだそうである(そのアピールのためなのか寝起きのシーンで腹が出ている)。この肉体改造がそこまで役に立っていると思えなかったということは、それだけスタローンが見た目ではなく演技でキャラクターを表現できていたということだろう。

スタローン以外に意外性のある役だったのは、“ザ・悪人顔”のレイ・リオッタがどちらかと言えば善人側だったことか。ハーヴェイ・カイテルはイメージ通りで、デ・ニーロは存在感の割にあまり重要でない役だった。

プライムビデオの配信版は104分なのだが、WOWOWオンデマンドは116分だった。調べてみると、後者はディレクターズカットらしい。

コップランド (字幕版)

コップランド (字幕版)

  • 発売日: 2016/12/01
  • メディア: Prime Video