オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『テッド・バンディ』

Extremely Wicked, Shockingly Evil and Vile, 109min

監督:ジョー・バーリンジャー 出演:ザック・エフロン、リリー・コリンズ

★★★

概要

恋人の正体はシリアルキラー

短評

少なくとも30人以上の女性を殺害したとされるシリアルキラーの伝記映画。劇中に登場する婚約者の回顧録を原作としているそうである。多くの女性を毒牙にかけた男と暮らしていながら何一つ危害を加えられることのなかった女性視点の物語であるため、バンディの実像の“掴めなさ”が不気味で面白いのだが、それと引き換えに焦点がブレていると感じられるところもあった。また、判決を事実として突きつけられる以外に事実がよく分からないままのため、やはり伝記映画としての物足りなさは否めない。バンディの最後の告白をどう捉えるべきなのだろう。

あらすじ

バーで出会って惹かれ合った法学生のテッド・バンディ(ザック・エフロン)とシングルマザーのリズ(リリー・コリンズ)。しかし、それから数年後、バンディが誘拐と暴行の容疑で逮捕されてしまう。リズは無実を訴えるバンディを信じようとするものの、有罪判決を受けて服役。その後、複数の余罪が浮かび上がり、全米初となる裁判のテレビ中継が行われるが、バンディは頑なに無実を主張し続ける。次第にリズの心もバンディから離れていくが、彼女は人知れぬ思いを抱えていた。

感想

バンディは自信たっぷりに無実を主張する。罪を認めれば死刑は回避できると取引を持ち掛けられてもその主張が揺らぐことは一切なく、弁護士を解任して自ら主任弁護士を務める。また、序盤の内は「状況証拠しかないから裁判も有利に進んでいる」という描写もあるため、たとえ彼がシリアルキラーとして有罪判決を受けたことを知っていても、「本当にやったのか?」という疑問を抱かなくもない。まるで自分が本当に無実であると確信しているかのように、“魅力的な男”を演じきってしまうソシオパスぶりの表現は合格である。

ただし、仮に「本当にやったのか?」という疑問を観客に抱かせようとも、それが“リズの視点”であることを忘れてはいけない。愛した男が殺人鬼だと信じたくない彼女の心情や、その魅力によって女性をコントロールしてしまうバンディの特性を割り引いて考えるべきなのだろう。彼女や次の恋人となるキャロル(カヤ・スコデラリオ。面会セックスの権利はどうやって得たのだろう)、あるいは裁判所に詰めかけるファンの女たちを除けばバンディの見え透いた嘘に騙される者などおらず、ジョン・マルコヴィッチ演じる判事は苦虫を噛み潰したような顔と声色でウンザリさせられている。

この二点を踏まえると、表と裏で全く異なる顔を持ちながら、バンディの二面性に気付くことなく“洗脳”されてしまったリズの混乱を追体験する映画なのだと思ったわけだが、彼女の告白によって様子が変わる。彼女は心のどこかでバンディを信じているからこそ思い悩んでいるものとばかり思っていたのだが、実は彼女の通報が逮捕に繋がったという事情があった。彼女が悩んでいたのは“愛”ではなく“自責の念”からなのである。

「もしかすると私の通報が原因の冤罪かもしれない」。この自責の念に悩まされ続けてきたリズは、死刑を控えるバンディの面会に行って罪の告白を求める。自分のせいではないとの確信を得て解放されたいのである。そして、バンディは彼女の思いに応える形で秘密の告白をする。サメ好き少女モリーちゃんの成長を見る限り、彼らは少なくとも数年間は付き合っていたわけで、その間にバンディはリズを殺していない。この事実と合わせて考えれば、バンディは本当にリズを愛していたことになるのか。しかし、これはソシオパスらしくはなく、これもリズの気を引くための演技だとすると、ますます真実が分からない。

少々モヤモヤの残る内容だったが、アマゾンとNetflixがバンディについてのドキュメンタリーを制作しているため、気が向いたら観てみるか。

三十郎氏の好きなアンジェラ・サラフィアン嬢が出演していることを知っていたので期待していたのだが、彼女はリズの友人という全くのちょい役だった。でも美人である。

テッド・バンディ(字幕版)

テッド・バンディ(字幕版)

  • 発売日: 2020/04/22
  • メディア: Prime Video